第14話 光 二

 「お待たせ~かずくん!

 待った?」

「いや、僕もさっき着いたところだよ。」

 7月の終わり。僕たちは美玲の提案で、隣町の花火大会に来ていた。

 集合時刻は、午後5時。一応僕は遅れないように早めに着き、美玲は5時ちょうどにやって来た。

 「そっか~良かった~!」

そう言う美玲は今日は…浴衣姿だ。

 その浴衣は、白地にピンクの花の模様が描かれたもので…美玲によく似合っている。

 そして…そんな浴衣を着た美玲は…きれいだ。僕はそう思った。

 「あ~もしかしてかずくん、私に見とれてる?」

 友達が多い人というのは、他の人が何を考えているのかも分かるものなのだろうか?

 「い、いや別にそういうわけじゃ…。」

「あっ図星~?そうなんだ~!」

「えっ、いや…。」

僕はものすごく恥ずかしくなって、そんなリアクションをとっていると、

 「でも、かずくんは私の彼氏なんだから、恥ずかしがることないじゃん!」

 そう言われ、僕はその事実を思い出す。

 そう、僕と美玲は、付き合っているんだ。

 「そう…だね。」

「ま、私も浴衣でおしゃれした甲斐があるってことかな!?」

美玲はそう言って、笑顔を見せる。

 やっぱり彼女は「光属性」だ。彼女、美玲には人をとりこにする力がある。友達が多いのも、うなずけると僕は思う。

 「それにしても今日、暑いね~!」

そう、その日は7月の終わり。気温はこの時間でも30℃を超えている。

 「ホントだね。」

そう言う僕の背中からは、汗が流れる。

 「私、夏は花火大会とかあって好きなんだけど、もう少し涼しくならないかな~!

 せめて、私たちのいる所だけでも…ねっ!」

「僕もそう思うよ。」

「やっぱり~!

 そうだなあ例えば、花火大会の会場だけ、大きな冷蔵庫で囲うとか!」

「えっ…!」

彼女は冗談を言っているのだろう…僕はそう思ったが、いかんせん僕は異性と付き合ったことがないどころか、友達すらまともにいないのだ。どう言葉を返していいのか分からない。

 すると、

 「うーんこれ、いいアイデアだと思うんだけどな~!

 かずくん的にはイマイチ?」

「ま、まあ…。」

「何か微妙なリアクションだね。

 まあ、半分は冗談だから気にしないで。

 …でも、野外にも冷房はできたら欲しいよね!」

「それはそうだね。」

「何かかずくん、冷静~!」

そう言って美玲は、屈託なく笑う。どうやら彼女は喜怒哀楽がはっきり出るタイプらしい…まあ、「怒」と「哀」はまだ見たことがないが。

 「じゃあ行こっか、かずくん!」

その言葉で、僕たちは歩き出した。

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