第9話 闇 九

 そんな辛い高校生活を通り抜け、僕は今、大学生活を送っている。

 その学部は文学部。この学部を選んだのには、実は理由がある。

 僕は中学・高校時代から、文学や小説が好きであった。

 なぜなら、文学や小説の中に出てくる主人公は、(僕が読んだものは)みんな自分自身の置かれた逆境を跳ね返し、たくましく生きているからだ。

 『僕も、この小説の主人公のように、強く生きていかないといけないなあ…。』

僕は文学なり小説なりを読んで、何度そう感じただろうか。

 その甲斐あって、僕は高校時代、国語の成績だけは良かった。(ただ英語はダメで、数学に関しては惨憺たる成績であったが。)

 それで、僕は地元の大学の、文学部に入学した、というわけである。

 しかし…、相変わらず僕には、1人も友達はいない。

 周りの大学生たちは、やれサークル活動だ、やれ合コンだなどと騒ぎ、充実した学生生活を送っているのだろう。でも僕は、その様子を端で見ているだけだ。

 実際、僕はサークルには入っていない。そして、大学に入学してから、自分から誰かに声をかけたこともない。

 そして、僕は講義のために大学に行き、それが終わったら家に帰る、という繰り返しの日々を送っている。

 幸い、大学は高校とは違い、どこかのコミュニティに入らなければ人間関係が濃くなるようなことはない。つまり、高校時代のようにいじめられなくても済むわけだ。そのおかげで、僕は平穏な日々を送っている。

 ただ、やはり陰口は叩かれるようで、

 「あの人、ずっと1人で講義聞いてるけど…。」

「なんかあの人…、暗いよね。」

「高校時代、いじめられてたんじゃない?」

などと言われる有様だ。

 しかし、そんなの高校時代に受けた仕打ちに比べたら、かわいいものだ。

 それに、大学では余計なことを考えずに、大好きな文学に集中できる。

 だから僕はそれで幸せだったし、そんな日々が大学卒業まで続く、そう思っていた。

 そう、ある女の子と出会うまでは。

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