第2話 闇 二

  「おい、闇男、お前パン買って来いよ!」

「…。」

「おいおい止めとけって!闇男の不幸がうつるぞ!」

「まあ、それもそうだな!」

 これは、僕が高校時代に実際にあった出来事である。

 その日、(といっても同じようなことはほぼ毎日あったが)僕はいわゆる「パシリ」に遭いそうになった。

 しかし、それも(幸か不幸か)僕の「闇属性」の間違った評判のせいで、とりあえずはなくなった。

 その、「闇属性」というのは…。

 周りの人間、僕と仲良くなった人間を、不幸にしていく属性だ。

 僕自身がこの属性に気づいたのは、僕が小学生の時だっただろうか。

 僕はその時、まだ自分の「闇属性」に気づいていない時は、普通に友達もいて、みんなと明るく接していた。

 「おい、和男、鬼ごっこしようぜ!」

「いいよ!」

僕は、外でも友達とよく遊ぶ、活発な子どもだった。

 しかし…、

 「痛っ!」

その日、僕と鬼ごっこをして遊んだ友達は、みんなどこかにケガをしてしまった。

 「…大丈夫?」

「お、おう…。」

その時は、その件はたまたまで、2度とそんな「不幸」なことにはならないだろう、そう思っていた。

 しかし、僕の小学生時代にはそれからも、そんな「不幸」な出来事が続いた。

 それは、例えば他の友達とドッジボールをしている時に、たまたま誰かが投げたボールが顔面を直撃したり、また仲良くなった先生が、急に熱を出して学校を休んだり、またたまたま発表する宿題を忘れて、次の人に当たったら、その次の人も忘れていて、2人でこっぴどく叱られたり…。

 挙げ句の果てには、僕が少し「かわいいな。」と思い、仲良くなった女の子と帰り道一緒に歩いていた時に、その女の子が車にひかれそうになってしまったり…。(これは幸いだが結局その時はドライバーがギリギリの所でブレーキを踏み、女の子はひかれずにすんだ。ただ、その後その女の子とは険悪なムードになり、以降は一緒に帰ったことはない。)

 そんなことが何回も続いたため、僕は(どうしてそう判断されたのかは分からないが、)親に医者に連れて行かれた。

 そして僕はそこで、奇妙な診断を聞くこととなる。

 「お父様、お母様。和男君も、よく聞いてね。

 和男君は、『闇属性』を持っています。」

「闇、属性、ですか…?」

 医者の先生がそう、僕の両親と僕がいる前で告げる。その瞬間僕は、

 『闇属性って、何かゲームのキャラみたいでかっこいいな。』

と、馬鹿なことを考えてしまった。

 しかし、医者の先生は真面目な表情で続ける。

 「これは、何十万人、いや何百万人に1人というような症状です。私自身も、実際にこの症例を目にしたのは初めてです。

 それで、具体的な症状ですが…。」

 そこで、僕はその驚くべき症状を聞くこととなる。 

「和男さんは、例えば親しくなった友達など、周りの人を不幸にする、という属性を持っています。」

「えっ…?」

医者の先生の言葉に、僕たち家族は絶句する。そして先生は続ける。

 「ちなみにこの症状は、ご家族の方には当てはまりません。なのでお父様やお母様が和男君の影響で不幸になることはありません。ご安心ください。ただ…、和男君の友達にはこの属性が適用され、放っておくと和男君の友達にどんどん不幸が訪れるようになります。」

 そこまで僕は聞き、実際に思い当たる節はあるな…と小さいながらに思う。

 「また、この症状は和男君と親しくしている人にしか適用されません。なので、こんな言い方をするのは何ですが、和男君と仲良くならなければ、その人には和男君が原因で不幸が訪れる、ということはないということになります。」

 「先生、それはつまり…、」

その先の父の言葉は、僕たち家族みんなの疑問を代表するものであった。

 「和男は、友達を作ってはいけない、ということですか?」

「…そこまで私は申し上げてはおりません。ただ…、和男君の友達には、注意をして欲しい、ということにはなります。」

「そんな…。」

まだ実感のわかない僕とは対照的に、その時の父、母はひどく落胆している、まだ幼かった僕には、そんな風に感じられた。

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