三肌脱ぎ……


 本物の二人は穴の中にいた。

 以前ダダンが掘り返し、レヴィが落ちそうになった場所だ。

 爆轟が止み、キィィィィィンという耳鳴りが引いていく。


 穴の一つから恐る恐る頭を出すレヴィ。

 黒蛇は尾の先っぽだけを残して岩盤の向こうに潰え、身動ぎ一つしない。

 少女はぱちぱちと目を瞬いた。


「……か、勝てたの?」

「みたいだな」

「……みんなを守れたの?」

「ご希望通り」

「……や」

「や?」

「――――やったぁ!」

「おぶっ?!」


 抱き付いてくるレヴィ。少年は勢い余って押し倒された。

 馬乗りになった少女が「やったやった!」と体を揺する。


「すごいわ、ダダン! こんな作戦思いつくなんて!」

「だろう? 何せ俺は、世界一あったまいい男だからな!」

「あたしも! あたしも頑張ったわ! 世界一ちょうだい、何か!」

「世界一泥臭いお姫様」

「――――あんたがやったのよ!?」


 レヴィは泥まみれだった。コウモリの巣に入る直前、衣服を全て剥ぎ取られ、代わりに泥を塗られたのだ。

 大蛇の鼻を騙すために。

 当然、少年も同じ格好。

 彼はここに先回りして、爆弾人形を準備していた。レヴィの役割は、彼のための時間稼ぎだったのだ。


 作戦は成功し、黒蛇は討たれた。

 残る問題は一つだけ。

 レヴィは急に我に返り、はしたない姿に赤面した。


「……ねぇ、ちょっと。この格好。……あたしたち、どうやって帰れば良いの?」

「方法は二つある。……泥まみれで帰るか、綺麗に洗ってすっぽんぽんで帰るか」

「――――どっちも嫌よっ!!」

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