第104話 新たな弟子
「こんにちは」
リリオネルの家のドアを叩いた。
「どうぞ」
昨日の爺やがドアを開けてくれた。
こぢんまりとしたリビングのテーブルに着く。
「兄ちゃん、こんにちは」
「こんにちは。昨日は怒られなかったか」
「もの凄く怒られた」
「じいさん、今日はなんで呼んだんだ」
「今日、私が呼んだのは、坊ちゃんの後見人になって欲しいからです」
「なるのは構わないが。俺は他国の人間だ」
「存じております。昨日少しばかり調べました。Sランク冒険者で貴族になっている事も」
「具体的には何をして欲しい」
「坊ちゃんは命を狙われています。それから守って欲しいのです」
「誰から狙われているんだ」
「それが、敵と味方の区別がつかないのです。坊ちゃんは闇ギルドの総元締めの血を引くお方なのです」
「闇ギルドには良い印象がないな」
「昔の闇ギルドは今とは違っていたのです。そもそもの発足はやむなく犯罪を犯した者同士が集まって出来た組織なのです。あなたも知っているでしょう貴族の横暴を」
「貴族に反発する互助組織みたいな物だったと」
「そうです。それが禁忌の研究に乗り出す者が出て来て後は分かるでしょう」
「違法な事を屁とも思わなくなったって事か」
「そのとおりです」
たぶん最初はいけ好かない貴族に逆らったなどの犯罪者が集まったのだろうな。
レジスタンスにならずに利益を追求する者に成り下がったってところか。
「今も昔かたぎな闇ギルドの人間はいるのか」
「ええ、数は少ないですが」
「闇ギルド総元締めに権限は今もあるのか。なさそうなんだが」
「闇ギルドのギルドマスターが一堂に会する会議があるのです。その議長を総元締めがやる事になってます」
「なるほど。邪魔に思う者や、操りたいと思う者が居る訳だな」
「そうです」
「俺の母国、ガリアン王国に連れて行って欲しいのだな」
「お願いできますか」
「いいだろう。後見人にはなろう。身分的にはリリオネルは俺の弟子にする。それでいいか」
「結構です。鍛えてやって下さい」
「俺、兄ちゃんの弟子になるのか」
「師匠と呼べ。じいさんはどうするんだ」
「私はもうあちこち旅をするには歳を取りすぎました」
「えっ、爺やも一緒じゃないの。やだ。やだ。やだ」
「坊ちゃん、人生に別れはつきものです。もう良い歳なんですから、だだを捏ねるのはみっともないですぞ。一人前の男になって爺を訪ねてきて下され」
「うん、早く一人前になるよ」
リリオネルをモリーとユフィアの所に連れて行った。
「モリー、ユフィア、新しい弟子のリリオだ。さあ姉弟子に挨拶しろ」
「俺、リリオ。よろしくお願いします」
リリオネル五世改めリリオが力を込めて挨拶した。
「私はモリー。元気があるのね。感心、感心」
「ユフィアよ。よろしくね」
「今やっている仕事を見せてやれ」
「うん、今からやるよ。回路魔法! これで完成。簡易魔道具に触ってみて」
「うわ、
「どうだ。これを今から覚えてもらう。それとゴーレムだ」
俺はアイテム鞄から魔力結晶ゴーレムとミスリルの剣を取り出し操り始めた。
ゴーレムが剣を振ると風切り音が狭い部屋に響く。
リリオは目を輝かせてゴーレムを見ていた。
「俺もこれができるようになるの」
「ああ、すぐにできる様になるさ。そうだ、ケネスの道場にも通わせてやろう」
「ずるい。モリーも通いたい」
「そうだな、一緒に通え。ユフィアはいいのか」
「私は遠慮します」
「じゃあ、ユフィアには何か習い事を一つやらせてやろう」
「刺繍がいいです」
「リリオ、次はゴーレム騎士団の人達と会わせてやろう」
「うん」
ゴーレム騎士団の面々はマリリの護衛を除いて宿の裏庭で訓練をしていた。
「うわっ、格好いい」
「好きなだけ見てると良いさ」
ゴーレム同士の剣を使った訓練をリリオは穴が空くほど見つめていた。
そこへ、マリリがやって来た。
「フィル、可愛い子供を連れているのね」
「新しい弟子のリリオだ」
「マリリよ。師匠のしごきに耐えられないとか。困った事があれば言ってね」
「リリオです。その時はお願いします」
「俺は弟子をしごいたりしないぞ」
「どうかしら。エルフ国に行った時に簡易魔道具を沢山作らせたでしょ」
「あれはマリリさんが無茶な注文するから」
「そんな、私が酷いって言うの」
「そんな事ないけど」
「マリリさんに恋人はいますか」
おい、リリオなんてこと聞くんだ。
「いないわね。リリオが立候補してくれるの」
「します。俺、します」
「そうね、あと十年たったらね」
「リリオ、それぐらいにしとけ」
「何、フィルも立候補するの」
なんて答えよう。
「領地がもらえ……」
「何、聞こえなかったわよ」
「そろそろ帰り支度しないと」
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