最終章 勇者編

第101話 聖アルフェロラ国へ出動

「ええっと、俺の知らない間に聖アルフェロラ国へ軍が出動して惨敗したのか」

「そうみたいですよ。ちょうどエルフ国に行っていた間です」


 ランデ男爵がそう言ってからため息をついた。


 救援の要請が掛かるかなと思っていたら、やっぱり掛かった。

 擬似物質で作った輸送機を使いアドラム経由で聖アルフェロラ国へと飛んだ。

 乗客はマリリ、セシリーン、ランデ男爵、モリーとユフィアの五人。

 それと、ゴーレム騎士団の面々。


 セシリーンがいるのは今回行く聖アルフェロラ国が教会で運営している国だからだ。

 ランデ男爵はいつものお目付け役だ。


 眼下に聖アルフェロラ国の聖都が見えてきた。

 街全体に碁盤の目のように水路を走っている。

 水路の水は街の脇にある大河がら引いたようだ。


 着陸出来るところが無かったので大河に輸送機を着水させた。

 大河には小船が何艘なんそうも出ていて荷物を運んでいる。

 輸送機の着水の波で小船が揺れた。

 ごめん、水をかぶっていたら、弁償するから。

 心の中で謝った。


 輸送機を静かに岸に寄せる。

 十二時間ぶりの地面だ。

 休憩を挟んで合計十六時間。

 昼間出発して今は朝だ。

 操縦しているとトイレに行けないのがきつい。

 まあそこは擬似物質で座席をトイレに早変わりだ。

 鎧を着て一日戦闘なんて俺なら耐えられない。


 モリーとユフィアは疲れ果てて寝ている。

 ゴーレム騎士団の人間に二人を任せた。

 宿まで運んでくれるらしい。


 長い空の旅はきつい。

 自動操縦がほしいな。

 ライタの知識では旅客機には必ずついているみたいだ。



「あんたら、凄い物をお持ちだな。魔道具かい」


 輸送機を消して、ゴーレム騎士団の馬ゴーレムを出すと、空の小船の船頭が話し掛けて来た。


「そうだよ。魔道具だよ。それより、波を立てて、申し訳ない」

「そりゃ構わないさ。でっかい魔獣が立てる波に比べれば、やさしい物だよ」

「そんなに魔獣が立てる波ってのは大きいのか」

「ああ、4メートラいく事もある」


「おい、船頭。大聖堂まで銀貨三枚でどうだ」


 セシリーンがそう言った。


「聖騎士様に乗って頂けるのなら、お代はいりません」

「まあ、とっておけ」


 そう言ってセシリーンは銀貨を船頭に握らせた。


「そこまでされたら。遠慮なく。さあ、乗って」


 小船に揺られる事30分。

 大聖堂に到着した。

 立派なものだな。


『こりゃ相当、信者を泣かせたな』

「それを言ったら不味いと思う」

『城もそうだが、立派な物をみると泣かされた人が目に浮かぶ』

「好きで寄付したんじゃないの」

『建前はな』

「そうだね。自由なんて物は幻想だよね。我慢したくなけりゃ、強くならないと」

『突っぱねる事が出来ない人が多いって事さ』


「なに、ごちゃごちやと言っている。私は聖騎士の本部に顔を出してくる」

「私もしばらく別行動になりそうです。派遣軍の失敗の後片付けをしませんと」

「私は支店の下見に行くね」


 セシリーンとランデ男爵とマリリは姿を消した。

 中に入ると部屋に案内されて、物腰の柔らかそうな人物が依頼の説明を始めた。


「大河から魔獣が押し寄せてくるのです」

「それは水棲って事」

「ええ。魚の魔獣です」

「陸で待ち構えていれば、簡単に撃退できそうだけど」

「それが、水の中からスキルやら魔法やらを撃ってきまして。手がつけられない有様なのです」

「前に派遣された軍はどうやったんだ」

「網や銛。それに毒を水路に流しましたが効果なしでした」

「分かったなんとか考えてみるよ」


 どうするかな。

 電撃で一網打尽。

 いやいや、河は相当な深さだから効果は薄いかも。

 魔力ゴーレムは水中だろうが地中だろうがお構いなしだから、問題ないけど一匹ずつ仕留めるのは相当な手間だ。

 次の襲撃は満月の夜だから、三日後だ。


 襲撃の対策は別個考えるとしてまずは一当てだな。


 小船を捕まえ大河に再び戻る。

 河は薄く濁っていて全然下の方は見えない。

 だけど、俺には魔力視がある。

 水中の大きい魔力を探す。

 いたな、死魔法発動だ。


 死の魔力を纏ったゴーレムが水中深く沈んでいく。

 魔力同士が接触して、魔力が消えた。

 別の魔力ゴーレムが水魔法で魔獣を引き上げる。

 上がって来たのは3メートラはある魚の魔獣だった。

 身体には赤い斑点がある。

 食えるのかなこれ。


「船頭さん、これって食える」

「おお、美味いぞ。50センツぐらいの稚魚は食った事があるが、こんなに大きなのは初めてだ」


 岸に船を着けトレントゴーレムが引き上げに掛かる。

 引き上げるのにつれ観客が集まって来た。


「解体してくれたら肉はみんなやるよ。魔石だけ俺に残しておいてくれればいいから」


 俺がそういうと人が魚に群がりあっと言う間に解体された。


「船頭さん。襲撃の時はこいつクラスの奴が出るんだろ」

「そうさ、嫌になるほどの数が出て来る」


 さっき聞いた話では何万と出るのだったな。

 抜本的解決がいるな。

 水路を一時的に封鎖はどうだろう。


「水路と大河の間に壁を作って防いだらどうかな」

「それは前にやった手ですぜ。何千と魔法やスキルを撃たれたら、どんな分厚い壁でもだめだと思いやす」


 やっぱり、水中用広域殲滅魔法かな。

 そうだ、まだ都市は陥落してないよな。

 どうやって防いだんだ。


「前回の襲撃はどうやって防いだ」

「水路は浅いから攻撃が当たるんでさぁ。でも、やられても次々にやってくるから被害が甚大ですぜ。救援の兵士も方なしだったみたいで」

 水路で迎え撃つのは被害を考えると難しいな。

 俺一人では全ての通路はカバーできない。

 聖騎士を総動員しても難しいのだろうな。


 しばらく考えないと。

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