その904 世界の承認
さて、ここまでは当代聖女と次世代聖女が同じ時代に誕生してしまった理由を考察した訳だが……先程から沈黙を貫いているナタリーはというと……?
何故か俺の腕をツンツンしていた。
ふふふ、構って欲しいのだろうか。
ナタリーは本当に可愛いなぁ――。
「――っ!? あっつ!?」
「おぉ~……本当に【聖加護】だぁー……」
前言撤回。
ナタリーは聖女の小悪魔化に走っていた。
「仮にも元首に人体実験ってどうなの……?」
「いざっていう時にミックを守るため……?」
どうして疑問形なのだろうか。
しかし、ここ最近ナタリーが急成長した理由もようやく解明出来た。
なにせ、
それこそパーティに必要不可欠な程に。
「えっと……そういう訳だから……アリスちゃん、ちょっと……いいかな?」
「あ、は、はい!」
そう言うと、ナタリーとアリスはその場を後にした。
場に残される俺、リィたん、エメリー。
が――、
「ふむ、それではエメリー。少し付き合ってくれるか?」
「え、私ですか?」
「うむ、
「あ、私もそう思ってたところです! 是非、お願いしますっ!」
「ではな、ミック」
「それじゃあ失礼しますっ!」
なるほど、エメリーは既に龍族を超える存在。
とはいえ、エメリーの訓練相手が務まるのは俺か龍族しかいない。ならば、この組み合わせは必然と。
「さて……俺はというと……」
「あ、ミケラルド様ー!」
手を振りやって来たのは、現在、魔王復活に備えて在庫の充実化を図っているミケラルド商店の看板店長の一人――カミナである。
俺の下まで小走りでやって来たカミナは、何かを思い出したようにピタリと止まり、小首を傾げた。
「何か、既視感があるような……」
「ん? あぁ、以前、ここで人工ダイヤモンドを造った時じゃない?」
「あ~道理で……ん? という事は今回の
「ん~、それがそうなるかは俺の頑張り次第……かな?」
「おぉ、燃えてますねっ」
「まぁ一応、世界の辞書に
「世界の辞書? 言質……?」
頭の上に
「注文しておいた品は?」
「えぇ、五番の【闇空間】に全て。それとこれを」
「これは?」
「ロレッソさんからです」
俺はカミナから受け取った切れ端がメモ用紙だとすぐには気付けなかった。
書いてある文字も走り書き。
ロレッソが過密なスケージュールの中、わざわざこれを用意したのには理由がある。
俺に、俺だけの時間を作るためだ。
本来、魔王復活直前の国王や元首は、その対応に追われ眠る暇などない。あろうはずがないのだ。
「メモには……何と?」
だが――、
メモには俺の自由時間と睡眠時間だけが記載された円グラフが描かれていたのだ。何とも有能な宰相を持ってしまったものだ。
有難い。本当に。
ロレッソが作ってくれたこの時間を、俺は絶対に無駄に出来ない。
メモを見たカミナは、くすりと笑い。
深々と頭を下げた。
「それでは私はこれで」
「あぁ、いつもありがとう」
「はいっ!」
そう言って、カミナはカミナの戦場に向かった。
おそらく……これより先、全世界がそれぞれの戦場へと突入するだろう。
どこにも逃げ場はない。
ならば、抗う他ないのだ。
与えられた時間は残り五十時間程。
それは全ての者に与えられた平等で残酷な時間。
「さーて……っ! やりますかっ!」
俺は自身の両頬に
カミナに注文した品は二つ。
分身ミケラルドと分身ミケラルドの【合算バグ】で造ったオリハルコンの【インゴット】。
同様にミスリルのインゴットも用意した。
オリハルコンズは霊龍に質問をした。
――現在、世界最硬度の武具はオリハルコンから造られたものである。
霊龍の答えは〇。
これはオリハルコンズがしたのではなく、俺の
つまり、この質問は俺がさせたのだ。
それ
霊龍の言葉とは、つまるところの世界の承認である。
現段階で最硬の武器、防具はオリハルコン産である――これを霊龍に認めさせる必要があった。
何故なら、それ以上の武具を造る必要があるのだから。
最高の鉱石は間違いなくオリハルコンだろう。
だが、そのオリハルコンの武具だろうと、魔王に通じるとは思えない。
ならば……それを超える武具を造るにはどうすればいいか。
――オリハルコンの武具は現在世界最強。
――だが、それを霊龍の承認によって、未来の最強を変える事が出来れば……!
「ふ、ふふふ……見てろよ霊龍……魔王……! 造る……創るぞ……! オリハルコンを超える最高最強の素材――【ミナジリウム】!!」
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