◆その855 覚悟の準備3
「うるせぇ! 俺様は
剣先を向ける
「ナ、ナタリー殿……こ、これは一体……!?」
マインは焦りを浮かべ、ナタリーに聞くも……。
「んもうっ、ミックったら!」
その怒りは演技ではなかった。
そう、これはデュークとリィたんが仕組んだ事。
それと共に、一帯を覆っていた魔法が解ける。
「う、嘘だろおい!?」
ハンの驚きは前方へ向けられた。
ガンドフ側にいたライゼンごと聖騎士団第一部隊が消え去ったのだ。
「こ、こっちもです!」
クレアが見たのは
やはりクリスごと消えていく。
「ま、まさかとは思うけど……」
言いながらナタリーが腕輪を確認する。
それは、ミケラルドがナタリーにあげたテレポートポイント。
「や、やっぱり転移出来なくなってるーっ!?」
頭を抱えながら叫んだナタリーの嘆きを拾ったアリスが呟く。
「そ、存在X……っ!」
そう、今現在、法王国からガンドフに向かうこの街道には、マインと
「これはもしや……」
「どう考えてもミケラルドさんからの挑戦状でしょ」
ラッツとキッカの答え合わせは皆理解するところだった。
しかし、相手は超武装した
戦力は勇者エメリー、聖女アリス、剣聖レミリア、ラッツ、ハン、キッカ、メアリィ、クレア、そしてナタリーである。
「あ、あの……ミケラルド殿はいつもこのような事をっ? え?!」
焦る表情を浮かべるマインの四方に魔力壁が現れる。
魔力壁に閉じ込められたマインが困惑の表情を浮かべる。
「どうやら、マインさんの力を借りてはいけないようですね……」
レミリアはそれを見て全てを理解した。
デューク、リィたんの
それが今回ミケラルドが成長過程にあるオリハルコンズに課したもの。
アリスは顔を覆う。
(効率至上主義のミケラルドさんがこんな行軍を許すはずがありません。ライゼン様もクリス様も聖騎士団も……最初から【歪曲の変化】で誤魔化されていた)
――最近ガンドフ近辺でキナ臭い話があがっている。
(……あれは、あれはリィたんさんから私たちに向けたヒントだった)
――龍族二人のお言葉とあれば、その可能性は高いんじゃないですか。
(あの人もそれを認めていたのに……迂闊でした!
――道中何が起こるかわからない。
「法王陛下もグルだったって事だね」
気が付くと、アリスの隣にはナタリーがいた。
二人してミケラルドに騙された。そんな怨恨の共有が出来たところで、二人はようやく諦め、溜め息を漏らす。
「「はぁ……」」
そんなナタリーとアリスを見て、オリハルコンズも覚悟が決まる。いち早くエメリーが号令をかける。
「戦闘準備!」
オベイルが大剣を肩に乗せ呟くように言う。
「状況把握としては及第点だが、やはりおせぇ……っ!」
駆け出したオベイルの正面に立ったのは剣聖レミリア。
「ミナジリに行ってどれだけ成長したか見せてもらう、ぞ!」
大上段からの一撃。レミリアはこれを受け、その衝撃に合わせ脱力した。
エメリーが一瞬目を奪われるような華麗な受け流しに、オベイルも口を尖らせる。
「やるじゃねぇか」
下げた剣をそのまま上段へ移し、片手に持ち替えつつ突きを放つ。オベイルは上半身をそらしてこれをかわし、流れるように大剣を払った。振り返りざまの強烈な一撃。レミリアにこれを受ける術はなかった。
だが、そこへ追いついたのがラッツとハンだった。
キッカは既にラッツに対し光魔法【パワーアップ】を発動。
ラッツが攻撃力の高い切っ先を、ハンが大剣の真ん中を受ける。
「「ふんっ! がっ!?」」
二人は吹き飛ばされながらもオベイルの攻撃を受け切り、レミリアに退避という選択肢を与えた。
「やぁあああっ!」
吹き飛ばされた二人の下をくぐり、下段から這うように斬りかかるエメリー。
オベイルの剣はラッツとハンによって止められており、エメリーはそこを狙って動いた。
「こっちがフルプレートだって事を忘れるんじゃねぇぞ」
エメリーの剣とオベイルの蹴りがガキンと交わる。
「お!?」
その一撃はオベイルに驚きを生んだ。
(体重が乗り切らなかった事もあるが、まさか拮抗するとはな。エメリーも成長してるじゃねぇか……だが!)
次に放ったのはオベイルの拳。
放つと同時に強烈な炎が噴き出る。
「おらぁ!」
「わわわわわっ!?」
予想外の攻撃に逃げ惑うエメリー。そして、それを見て笑うオベイル。
「はははは、小手に付与された【フレイムフィスト】ってんだ。中々便利だろ? ん?」
「「ツインシャイン!」」
エメリーの窮地を助けたのがナタリーとメアリィ。
強力な光による目つぶし攻撃、そしてその光に紛れて飛んでくるクレアの風の矢。この矢に対してアリスが【スピードアップ】を施す。
「よっと」
オベイルは大剣を振り上げ軽々とそれを弾く。
しかし――戦線に復帰したラッツとハン、更にはレミリアが攻撃に加わった。当然、そこには勇者エメリーの姿もあったのだった。
オリハルコンズの猛攻を受け、オベイルが笑う。
「面白ぇじゃねぇか……!」
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