その704 神話の世界
真っ白な空間。
ドッペルゲンガーがといえど、五色の龍が出てきたのであれば、おそらく、ここが最下層……或いはその直前と考えられる。
が、それだけにここの戦力は非常に強大。
「「ガァアアアアアアアアアアッ!!」」
初手、五色の竜が揃えたのは高圧縮されたビームのようなブレス。
これはちょっと……危ないな。
受ける事は可能だが、それに伴って消費する魔力を考えれば避けた方が正解だ。
何度かかわしてみると、皆の強さがよくわかった。
おそらく、このドッペルゲンガーは個体値が最大。つまり、
パーシバルの魔力を有したイヅナ……そんな印象を受ける。かつて、とりあえずイヅナ十人分を目指すと言っていたが、これだけ実力で来られると、十人分以上だな。
「うぉ、偏差射撃とは生意気な!」
直撃しそうなブレスを弾き返し、それを雷龍に当てる。
実力が均一だと、かなりやりにくいな。
水龍の大津波に地龍の岩石が混ざるだけで厄介だし、炎龍の炎球に雷龍の電撃が交ざれば雷炎球となり、威力が増す。更に木龍が風魔法でそれらを押し出せば……見事に
「……ははは、本物の五人が揃ったら勝てないだろうな」
こいつら連携を防ぐ事が課題だな。
キーマンが木龍。しかし木龍は一番後ろに控えている。
ならば、先に倒さなくてはいけないのは……炎龍と水龍。
まったく、最強を目指すとは決めたし、今でもそれを諦めるつもりは毛頭ない。だが、これは一体何なのか。まるで神話の世界ではないか?
霊龍の意図……それがわかれば苦労はしないが、このダンジョンで五色の龍を配置する意味。勇者パーティにそれを経験させたいかのように感じる。
遠くない未来、リィたんたちとエメリーが戦う? 考えにくい事だが、あり得ない話でもない。とすれば、これはその予行練習とでも言うべきか。
それに付き合わされる調査団の身にもなって欲しいものだ。
「さて、調査はこんなところか。ぶっ倒していくから覚悟しろ!」
「ガァアア!」
「
直後、水龍の顔が弾け飛ぶ。
なんか、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「
胴体に風穴があき、その場に伏す炎龍。
幼児虐待と言われたらどうしよう。でも、ドッペルゲンガーだしなぁ。
「【金剛斬】!」
水魔法の巨大な刃が地龍と木龍の首を飛ばす。
「ほんと、すんません!
最後に雷龍を地面にめり込む程叩きつけた。
なんかもう、ぐちゃぐちゃである。
しかし、これは人類には大変そうだなー。
そう考えながら奥に出現した転移装置を見る。
「おっと、二階層毎かと思ったけど、ここでも救済措置か……」
現れた転移装置は二つ。
これで、四階層、五階層と連続で現れたという事は……やはり次が最終階層。五色の龍でへばるようなら帰れという霊龍的圧迫面接。
霊龍の前世は昭和的体育教師だったに違いない。
そう思いながら、俺は六階層へ降りた。
◇◆◇ 六階層 ◆◇◆
「んー、やっぱり最終階層っぽいなー」
五階層と同じく白い空間。
まるで戦うためだけの部屋のようだ。
さっきまでは五色の龍。しかし、今回いるのはやはりボス――あれも龍か?
シルクのような翼で羽ばたき、それと共に虹色の光が発光している部屋よりも白く輝く優雅で雄大な龍。
俺はポカンと口を開け、そして
「もしかして……あれが
宙を泳ぐように飛ぶ銀眼の龍は、俺を捉えると共に他の龍族とは違う甲高い鳴き声をあげた。
「キィイアアアア!!」
これだけ俺にちょっかいかけてくる癖に、俺とコミュニケーションをとろうとしない。やはり、霊龍を模したドッペルゲンガーか。
さて、身体能力は……?
「っ!?」
そんな事を考える暇もなかった。
霊龍は一瞬で間を詰めると共に、反転しながら俺に尾撃をくらわせたのだ。
全身に響く鈍痛、反応しきれなかった速度。
これは
「
何とか堪え切った俺は、その尻尾を掴み放り投げる。
中空でピタリと止まったドッペルゲンガーの目つきは鋭く、殺気に満ちていた。
まさか
魔人より弱いが質量がある分、別の手強さがあるな。
「キィ!」
爪撃からの、尾撃、俺を弾き飛ばしてからブレス。
「ガァアアアアアア!」
俺も負けじとブレス。
互いのブレスが相殺され、弾き返されたのはドッペルゲンガー側。追い込まれた時の動きを見ておきたいとろこだ。
追撃を仕掛けようとすると、ドッペルゲンガーは闇魔法【ゾーン】を使い俺の背後に現れた。
なるほど、弾き飛ばされた勢いのままゾーンで空間移動、俺の背後から突進。上手いな。
大きな口を開け、噛みつこうとするドッペルゲンガーに対し、俺もゾーンを発動。後ろをとった俺に気付いたドッペルゲンガーが、再び尾撃。
覚えて間もない【空間跳躍】を使用し、正面に移動。翻弄させるも身体をねじりながら爪で襲ってくる。
戦闘能力も高い。魔法中心ではなく、魔力を中心とした戦い方。
なんとも厄介な相手である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます