◆その585 第一回定例広報会見1
広報会見室の中央奥に立つ美しき
その隣には補佐としてクインが立ち、慣れない場に少なからず動揺を見せている。
(これは一体どういう場なのだ? シギュン様も落ち着いてこそいるものの、どこか様子がおかしい……)
クインの前に陣取る集団。
手には筆や羊皮紙を持ち、鋭い視線でシギュンを見ている。
いつでも追い詰める気でいるかのような強い視線。それは敵意とすら言えた。
それもそのはずで、今日この場に集まったのはライゼン学校長がミケラルドに頼まれ、用意した人材だからである。
過去、シギュンの選別を
選別者たちからの執拗な妨害、攻撃行為。精神を病み、あらぬ嫌疑をかけられ、中には自ら命を絶った者、実力があった故に潰された者、秘密裏に殺された者もいた。
その指示を出していたのは他ならぬシギュン。
かつての仲間、友人、恋人の無念を知る者たちのシギュンへの怒りは深く、重い。
ライゼン学校長の名の下、復讐を誓い、皆でシギュンの不正を暴こうとした。しかし、出て来る証拠はシギュンを
そんな中、ライゼン学校長が紹介した新たな任務先――ミケラルド探偵事務所。
◇◆◇ 四日前 ◆◇◆
鬼気迫る表情で面接を受ける者たちを前に、所長のミケラルドが言った。
「あ、いいですね、その表情。それ最後までキープしといてください」
「調査? そんなものいいんですよ。調査は既に終わってるんですから。やって欲しいのはシギュンへの質問攻めです。探偵事務所とは名ばかりなんです。あなたたちは【ジャーナリスト】! 真実を暴き、糾弾する戦士! 『ペンは剣より強し』を
「「おぉ!!」」
「ほらそこ!
現場を仕切るミケラルドの熱、凄まじく。
それに付き従うジャーナリストの熱、凄まじく。
「ふふふ」
「「おぉおお!!」」
微笑んだエメラの笑顔、微笑ましく。
そんなエメラに興奮するミケラルドとジャーナリスト。
ヒートアップする広報会見の予行練習は連日深夜まで続いた。
◇◆◇ そして現在 ◆◇◆
「第一回定例広報会見。そして、最後の定例広報会見へようこそ……シギュン殿」
本番当日……ミケラルドは闇の一室でニヤリと笑った。
広報会見場でたかれる
「え、ええい! この眩しい光は何だ!? やめるんだ、お前たち!」
クインがジャーナリストたちの【フラッシュ】を煙たそうに言う。
一人のジャーナリストが手を挙げクインに言う。
「ですが、これは先日世界の国々が認可したもので、中継先から公共放送先へ明瞭な画質を提供する補助魔法です。何か問題があるようでしたら後程書面での提出をお願いします」
「何をっ!?」
怒りに壇上から歩を進めようとしたクイン。
しかし、それを止めたのはシギュンだった。
「シギュン様……?」
「クインさん、余計な事は控えてください。これは法王陛下が民を
「は……はっ! 失礼致しました!」
シギュンに敬礼をしたクイン。
しかし、シギュンは顔でこそ平静を保っていたが、内心には小さな波を見せていた。
「お手元の資料をご覧ください。一ページ目には先日、法王国に巣食う闇ギルドのアジトが発見された件が書かれています。現在は法王国が誇る騎士団とその団長であるアルゴス殿が蟻の子一匹通さない厳重な体制で調査を続けています」
手を挙げるジャーナリスト。
「そこの方、どうぞ」
「闇ギルドのアジトだという明確な理由と根拠は何でしょうか?」
「それについては二ページ目をご覧ください。闇の幹部だった
「――……いかがされました、シギュン殿?」
資料を読み上げながら、シギュンの思考が止まる。
(事前にもらった資料と……違うっ? そもそもあのアジトに証拠なんて残すはずが――!?)
「あぁ失礼。三ページ目以降に発見した
ジャーナリストの言葉はシギュンの思考を動かした。動かざるを得なかった。
三ページ目をめくるシギュンが、三人の
(これは……私の
止まる事のない疑心。
しかし、シギュンを待つ者などいない。
クインはシギュン自身が控えさせ、眼前にはシギュンに復讐を誓う者たち。
ジャーナリストたちは口を揃え、シギュンに圧力を掛けるように言う。
「「さぁシギュン殿、続きを」」
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