その550 思い切った決断
「皆さんは、いつも自分を褒めてあげてますか? 私はバッチリです。戦争が終わった直後に事後処理云々色々ありつつも、この聖騎士学校の教壇に立っているのは本当に凄いと思っています。なので、皆さんには私が疲れている事を踏まえて授業に臨んで頂きたいですね」
苦笑する生徒たち。
そう、今日はミケラルド・オード・ミナジリの授業である。
開口一番手抜き感満載だが、一所懸命に生きると決めてから、最強を目指すと決めてから、俺は手を抜いた事なんてない。と、思いたい。
本当ならば、今日はライゼン学校長の授業だった。
しかし、明日の闇ギルドの集会を前にやっておきたい事があった俺は、ライゼン学校長と取引をした。
ライゼン学校長が「毛先爪先痛い病」により急遽お休み。臨時の特別講師として俺が教壇に立つ。ライゼン学校長は時間を
目的とは、闇ギルドの意表をつくため、とある人物にコンタクトをとる事である。
「本日の授業は座学ですが、かなり重要です。先の戦争に参加した方々の所見、意見、感想やアドバイスなどを話してもらいたいと思います。この中で戦争に参加したのは、エメリーさん、アリスさん、ゲラルドさん、ラッツさん、キッカさん、ハンさん、そしてリィたんさんですね。総括の私を含め八人ですか。色んな立場からの知見を得られると思うので、是非耳を傾けてみてください。まずはエメリーさんから」
「は、はい!」
そう言って、俺は教壇の中央をエメリーに譲り、横へとずれた。
そこからは皆の生の言葉が聞けた。
エメリーが感じたのは自身の無力感。相手が魔族四天王とはいえ、魔王を倒すべき勇者が魔族四天王に
アリスは、聖女の立場だけではなく、
ゲラルドは、言葉足らずではあるが祖国のために戦った事を強調していた。そして、父親ゲオルグを何としても止めようという意思を見せ、妖魔族のレイスやアークレイスとの戦い
リィたんは、今回の不死王リッチの作戦、戦力の導入方法などを話した。何故
リィたんが自分の席に戻ると、俺はまた教壇の中央に戻った。
「はい。各々方、まだ語り切れない思いはあるでしょう。ですが、たった七人の感じ方、捉え方でこれだけの差異があるというのは皆さん理解出来たかと思います。何が重要という訳ではありませんが、残酷な現実を
言うと、皆の顔は強張ってしまった。
「とても良い顔です。ここにいらっしゃる方は……戦争なんてない方がいいと思っているようで何よりです。そう、私だってやりたくないんですよ。出来る事なら一生ね。でも、友人を、隣人を、祖国を、家族を守るためにはどうしてもやらなくちゃならない。私は勿論の事、皆さんはそういう立場にあるんです。魔界からの侵略者――だけで片付けてはいけません。今後もし戦争が起こった場合――どうか戦争に勝利以上の意味を見出してください。何故戦争が起きてしまったのか、戦争が起きない世の中にするにはどうすべきか、もっと被害を減らせなかったのか。武力や権力を持つ者として、戦う以上に出来る事を考えてください。皆さんの背には、武力や権力を持たない人がいるんですから……っと、話し過ぎてしまいましたね。次回は
「「はいっ!!」」
ふむ、良い緊張感ってこういう事を言うのかもしれないな。
「あぁ、そうだ【ファーラ】さん」
「……はい?」
「この後、特別講師室までいらしてください。ファーラさんの
「っ!!」
そう、今回の目的は魔族っ子ファーラちゃんへの――ダイレクトアタック!
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