その546 ナガレデータ
「では、【ノエル】の
「……そうだよ」
チャンスだ。【
ノエル、そしてナガレの
まずは二人の
それにしても――、
「不服そうだな」
「けっ、そりゃそうだろうよ」
自我こそとらないが、ナガレへの命令はナガレにとって苦痛以外の何物でもないだろう。俺への忠誠、自衛以外の殺害禁止……これらの命令を不服と思わない
ナガレは木に寄りかかり、不満気な目を俺に向ける。
「で、他に何を知りたいってんだ」
そう、俺の質問はまだ終わっていない。
聞きたい事は山積みだが、何から聞けばいいか……。
【
残る七人は【シギュン】、【クイン】、【カンザス】、【メディック】、【ホネスティ】、【エレノア】……そして【魔人】か。
さて、まず聞かなくちゃいけない事は……、
「
「カンザスが闇空間に入れた後の事なんて知らないね」
だよな、分裂体からの反応がない以上、まだ闇空間の中にいる。
「エレノアの正体は?」
「さあね」
この質問も、
「魔人の正体は?」
「さあね」
この質問も、
「地龍の子供はどこにいる?」
「エレノアが知ってるだろうよ」
この質問もダメ……か。
闇ギルド、何とも厄介な組織だな。
「メディックは
「ホネスティ? 確か今は商人ギルドに潜んでたはずだね」
「リルハのところに?」
「あんな危ないところにいられるかい。各地を渡り歩いて闇ギルドに金を落としてるんだよ」
「せこいが堅実だな」
俺のところに情報が来てない以上、上手くやってるのだろう。
「ハンドレッド以下の序列から金が上がってこないからね。単なる失敗続きかと思ってたら、アンタが噛んでたとは……こりゃ闇ギルドも終わりかねぇ」
「随分と他人事だな」
「アタシャ楽しいからあそこにいるだけだよ。楽しみがないなら消えるだけ。そういう事さ」
「再就職先が見つかってよかったじゃないか」
「けっ、虫唾が走るよ」
「自力で【血の呪縛】を覆せたら解放してやるよ」
「…………っ」
何も言えないか。
まぁ、あるはずもない事だが、もしそんな事が起こった場合、俺はナガレを躊躇する事なく殺すだろう。奴もそれがわかっているから無言の抵抗しか出来ないのだ。
その後、俺はナガレにいくつかの質問をしたが、奴が知っている情報はサブロウと然程変わらなかった。一番近い身内にこれだけの情報規制……エレノアの手腕は見事と言わざるを得ない。
「……最後の質問だ」
「はっ、耳が腐るところだったよ」
耳を小指でほじりながら悪態を吐くナガレ。
「闇ギルドは何の目的で動いている?」
そう、これを聞かずにはいられないのだ。
「【
「また随分と抽象的な表現だな」
「アタシャそんな事に興味ないからね、詳しくは聞かなかったよ」
「自分が所属している組織の目的を聞かない?」
「わかってないね、【
「各々の……利害」
そういえば、サブロウたちが闇ギルドに所属した理由を聞いた事がなかった。
ナガレは楽しいから、とか根っからの悪人発言だったが、それぞれに目的があるのだろうか。
パーシバルは……そういえば俺への復讐のために力を付けに入ったんだっけ。
残りはサブロウとノエルか。後程聞いてみるか。
だがしかし、気になる事がある。
俺だけが特殊なのか。エレノアは急務として人員不足からの穴埋めとして俺を
エレノアに気に入られている、と。
確かに、忠誠や命令だけで動かせる手駒程嬉しいものはない。
それだけに、最初俺への接近を避けたのだ。俺の目的や性格を知るために。
本当に抜け目のない女だ。もしエレノアが真人間だったら、手の平の上で転がされたい気分である。
「わかった、これからどうする?」
「別に、法王国に戻るだけだよ」
口をへの字にしながらナガレが言う。
「そうか、それじゃあなナガレ婆ちゃん」
「っ! アンタ……ろくな死に方しないよ」
と、ナガレが皮肉たっぷりで言うも、
「既にクソみたいな死に方した後だよ」
俺にはとっておきで、とっても残念な返しが出来るのだ。
「はぁ?」
ポカンと首を傾げるナガレを背に、俺はミナジリ邸へと戻るのだった。
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