その455 初任務
「ここは……」
法王国の貴族領の地下。
サブロウの話では、その貴族はこの場所すら知らないとの事だ。長く深い地下道。時には上り、時には下り、いくつか罠もあった。
サブロウというナビがなければ、攻略出来ない程の綿密に作られた人工ダンジョン――といったところか。
「……こっちじゃ」
「俺の方向感覚が間違ってなければ、こっちって」
貴族領は法王国の外れにあった。
地下に潜り方向感覚が狂いそうになるが、実際に向かっていたのは――、
「うむ、法王国の首都の真下じゃな」
まったく、よくこんな道を人知れず作ったものだな。
魔法のない世界では不可能なんじゃないか?
地下五、六階程の深さだろうか。それだけ深くしなければ、法王国にバレるだろうしな。法王クルスに話したら嘆かれそうだ。
というか、サブロウは魔法を使わないみたいだが、こんなに暗くてよく迷わず来られるものだ。
それに息苦しさも感じないという事は、どこかに換気出来るようなマジックスクロールがあるのだろう。
「ここじゃ」
観音開きタイプの大きな扉。
その両サイドには筋肉坊主タイプの大きな人。
見た感じ、誰かの
サブロウが言うには、ここには全ての【
「「名前を」」
筋肉坊主たちは口を揃えて言った。
「デューク・スイカ・ウォーカー」
「サブロウ」
受け入れ、呑み込むように聞き入れた二人は、静かに扉を開いた。
「「ようこそ、闇の使徒よ」」
どこかのテーマパークのキャストみたいだな、この二人。
芝居掛かった二人を通り抜け、俺は広い部屋へと足を踏み入れた。目の前に見えるのは闇の円卓。均一に置かれた十二の黒い椅子。
光魔法【ライト】を使いたくなるような
「誰もいませんね」
俺がそう言うと、隣のサブロウが部屋の奥を見た。
「む?」
扉から見て円卓の一番奥の席だった。
そこには、ギルド通信の水晶が置かれていたのだ。
「エレノア、相変わらずじゃのう」
「そう簡単には会わせて貰えないという事でしょうかね」
俺が肩を
サブロウが水晶に近づき、触れる。
すると、水晶が発光し起動に至る。
『……思ったよりも早かったようですね』
水晶から聞こえてる男とも女ともとれない異質な声。
周到な性格をしている。姿を見せないどころか、声すらイジっているのか。
「連れて来たぞ、エレノア」
『ご苦労でしたサブロウ殿。詳細については後ほど報告を。ポイント三十四で別の任務を受けてください』
「わかった」
サブロウはここまで、か。
サブロウは俺に向かって頷いた後、部屋を出て行った。
『まずは自己紹介から。私はエレノア。闇の中枢【
「デューク・スイカ・ウォーカーです、エレノア殿」
『デューク・スイカ・ウォーカー。拳鬼を倒せる程の者がハンドレッドにいたとは驚きました』
「調べればわかると思うので申し上げますが、私は誰にも勝っていません」
その後、エレノアの言葉に一瞬の間が出来た。
『……どういう事でしょうか』
「皆、私を認めてくれたという事ですよ」
『選出されたハンドレッドが全て身を引いたと?
「今回の選出、
『否定するつもりはありません。どうぞ続けてください』
「そんな中、優秀な人材を殺しては更なる困窮は明白。ならばこちらの威を示し、相手に引かせる事で人材の有効活用、並びに
『なるほど、とても優秀な方のようですね。報告に偽り無しと言ったところでしょうか』
実際には偽りだらけである。
俺が操った
と言っても、最初からそうだった訳ではない。
「それよりも、壁裏に隠れている方々を紹介して頂きたいのですが?」
『……素晴らしい。これまで彼らに気付いた者はほとんどいませんでした』
エレノアの言葉の後、壁裏にいた四つの気配が移動した。扉の前に跪いた四人は全員女だった。
『
「それはもしかして、ハンドレッドと
知っていてもとぼけなくちゃな、この情報は
『その通りです。この四人はあなたの手足となって動いてくれるでしょう』
「早速、最初の任務といったところでしょうか」
『剣鬼オベイルは知っていますね』
すんごくよく知ってる。
「殺し、ですか?」
『剣鬼は今この法王国にいます』
「炎龍を捕まえたとかで騒がれていますね」
『話が早くて助かります。その炎龍を殺してください』
初手から最高難度の任務なのでは?
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