その435 ライゼン
これはどこかの大貴族の屋敷――だった場所だろうか。
広大な敷地からして、かつてここにいた貴族がどれだけ
まったく、今日はこれからギャレット商会の事を調べようと思ってたのに、思ったよりも早くライゼン学校長が尻尾を出すもんだから、急遽予定を変更せざるを得なくなった。まぁ、餌をまいたのは俺だけどな。
他の監視者が聖騎士学校の授業全てを監視する中、ライゼン学校長だけは俺の授業だけを監視していた。狙いがミナジリ共和国にあるのであれば、ジェイルにも目が向くはずだが、ライゼン学校長は俺だけを視ていた。
その熱視線を向けてくるのが美少女なら嬉しいのだが、相手はゴリッゴリの爺さんだ。本当に困ったものだ。
しかし、あの小屋……一体何がある?
「【探知】に反応無し。地下に潜ったな? なら【魔力探知】か」
直後、俺は眉を
……何だこの反応の数は? 百……いや二百はいるんじゃないか?
となると正攻法で侵入するのは難しいか。
「ん?」
俺は遠方に、小屋付近一帯が視界に入る高台を見つけた。
そこに【魔力探知】による反応がいくつか確認出来たのだ。
「ふむ……まぁいつも通りだな」
まず、小屋周辺をうろつき、遠方の監視者たちを挑発する。
当然奴らはこれを警戒する。
やって来た男は、下っ端感溢れるむさくるしい男だった。
だが、気になる。下っ端にしては保有している魔力が中々に高い。
「おい貴様、ここで何をやっている?」
当然、俺は【チェンジ】で顔をおっさんに変えている。
テーマはそう、ルークが老けたらどうなるか。である。
「内見です。こちらの土地の保有者の許可を得て見に来たんですよ」
「そんな話は聞いてないな?」
「はぁ? 話は通してるので上の方に聞いてください」
「聞いてないって言ってるんだ」
「そもそも貴方どなたです?」
「くっ!」
名前を言えない時点で怪しい。まぁ、人の事言えないけどな。
俺は男を無視しながら小屋に近付く。
「へぇ、こんなところに小屋が――」
「――そこに近付くんじゃねぇ!!」
と、勢いよく襲ってきたので、
「ウワー」
監視ポイントから死角になる方へ逃げ、その死角までやってきた監視者その1を……こう、キュっと。
そして俺はその男の血をペロっとし、【チェンジ】を発動。
これで監視者その1に化けた俺は、監視ポイントへと移動。
皆を油断させ、一人ずつペロペロしていくと、とある情報を入手した。
「ヒミツキチ! え、本当っ?」
「……はい」
監視者のリーダーから得た情報によると、ここはライゼン学校長による秘密基地なのだと言う。
あの年で秘密基地とは好感の持てる爺さんだ。
まぁ、内容は
「つまりお前たちは聖騎士になれなかった者の中で優秀だったと」
「はい。聖騎士学校は卒業時点で聖騎士、及び騎士の称号を得ます。しかし、その座を不服として聖騎士学校から去る者も少なくありません」
「まぁ毎年出るだろうな」
「えぇ、貴族とはいえ、そういったはみ出し者たちは家の恥さらし。そこに現れたのが、ライゼン校長です」
なるほどな。つまりここはライゼン学校長の私兵たちがいる基地という事か。
確かに監視者にしては実力者揃いだ。
全員ランクA
……
「お前の身分でライゼン学校長の下へ行けるか?」
「可能です」
「ならお前たちは引き続き仕事をしていろ。俺は小屋へ入る」
監視者リーダーの顔へと【チェンジ】した俺は、小屋の中へと入った。
石造りの小屋の内部は、簡素に造られており、床はなく地面が続いていた。
まぁ、地下を造るならこれが正解か。
掘り起こされた地面から
そこから降り、地下へと足を踏み入れると、そこには坑道のような道に出た。
通路を木材で補強し、人一人がギリギリ通れる程度の道。
しばらく進むと、広い空間に出た。
そこでは多くの者が食事をとっていた。
凄いな、ここだけで五十人はいる。
相手の身内に化けているとはいえ、目立たないように気配をおさえ、更に奥へと向かう。
横穴という名の部屋があり、そこには食糧庫だったり、備品室だったり木材に書き込まれていた。そんな中、足を止めざるを得ない部屋を見つけた。
「……資料室」
そこだけは扉まで造られており、鍵までついていた。
見張りこそいないものの、ここは常時解放という訳にはいかないのだろう。
周囲を確認し、壁抜けにより中へ入る。
多くの羊皮紙が見える中、ひと
「……
短冊状の木を連ねた記録媒体である。
まだまだ羊皮紙は高いから珍しくもないのだが、人間の胴回り程の木簡となると気にならざるを得ない。
中を少し覗いてみると、
「っ、これは……」
そこには多くの名前が書かれていた。
この組織メンバーの名前だろうか。それとも――?
全てを広げてみても結局は知らない名前ばかり。念のため記録し、【闇空間】に保存した。
そして紙の情報を見てみる事に。
そこで俺はライゼン学校長が何を調べているのかを知った。
「……何だこれ、シギュンの事ばかりじゃないか」
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