その95 ミナジリ会議
「第一回! ミナジリ会議~! いぇい!」
「いぇい!」
「いぇい」
調子よく返してくれたのはリィたんだけ。
ジェイルは義務であるかのように淡々と言った。
クロード家のリビングにある円形のテーブルを囲うのは、俺、リィたん、ジェイル、ナタリー、クロード、エメラの六人である。
ナタリーはジトッとした目を俺に向け、クロードとエメラは何が何だかわからない様子だ。
「えぇっと。つまり、ミナジリ村に関する会議という事でしょうか?」
「そうです」
俺はクロードの質問を肯定し、説明を続けた。
「ミナジリ村の現段階の進捗をジェイルさんに聞きつつ、今後の予定を決めていきたいなと思いまして」
「そういう事でしたか」
「最近あちらに顔を出せていませんからねぇ」
クロードが納得し、エメラは頬に手を当てながら言った。
「ミック、また変な事考えてるんじゃないの~?」
やはりナタリーはジト目を向けてくる。
どうも、ナタリーは俺の
まったく、最近はレティシアに会いたい会いたいとうるさいんだから。
まぁそれだけナタリーも人間の世界に溶け込んできているという事か。
「だいじょーぶだいじょーぶ! じゃあジェイルさん。ミナジリ村について色々教えてください」
「わかった。現在人口は八十人だ。悪だっただけに体力だけは突出した奴らが多い。ミックの魔法のおかげで家屋は充実している」
「一応一人一軒って感じで建ててるけど、問題は家具ですよね」
「あぁ。こればかりは各町の技術者を頼る他ない。勿論、こちらにも器用なヤツが何人かいるからそこでまかなってもいるが、大多数はミックが運んできた家具を使っている。開墾しながら土地を広げているが、これもまた限界はある。
「何でしょう?」
「娯楽が欲しいと」
まぁ、これは生きている上で重要な事だよな。
かといって、酒はともかくミナジリ村に賭場や娼館を用意する訳にもいかない。
風紀が乱れては育ち盛りのナタリーの毒である。俺は一向に構わないけど。
とはいえ、今後大人だけじゃなく子供が歩く事を考えるなら、やはりそれは難しいのだ。
「わかりました。ちょうどその話もしようと思ってました」
「というと?」
「今後、ミナジリ村の人間にも、出来高制で給料をお支払いします」
「金か? でもミナジリ村にはまだ金は必要ないだろう?」
リィたんはお金という文化を覚えたので、最近「金」という言葉を使いたがる。とても微笑ましい水龍である。
「えぇ、なので、休日はシェンドやマッキリーへの転移を許可します。当然、手配されてる人間は、本人の同意の下、俺が顔をいじります」
「なるほどな」
まぁ、手配されてない人間もいるだろうけど、手配されてるヤツはそれだけの事をやっちゃったんだし、仕方ないだろう。希望があればミナジリ村に戻った際戻してやれば、そこまで気にする事でもない。問題は俺の労力だけだ。
これについても考えがない訳じゃない。
「自分の給料の中で遊ぶ。とても良いと思います」
クロードも同意を示してくれた。
「ジェイルさん、シュッツとランドに給与計算は任せるので、闇空間の魔法に預けた資金は入れておいてください」
「わかった」
「あと、戻ったらシュッツには明日連絡をいれるとお伝えください」
「今じゃダメなのか?」
「就業時間外ですから」
「ふふふふ、わかった」
「勿論、緊急時だったら別ですけどね。なので、その時にシュッツの給与計算の相談をします」
中々頭がこんがらがりそうだな。
「ミック、お金大丈夫なの?」
「今のところは」
「だって八十人だよ。一ヶ月金貨三千枚くらいなくなっちゃうよ?」
「五千枚くらいじゃない?」
「…………一体いくら払うつもりなの?」
「五十は欲しくない?」
「……それで足りるの?」
「つまり、一ヶ月白金貨五十枚だろ? 今後
と説明しても、ナタリーはイマイチ納得してくれていない。
……まったく、心配性なんだからこの可愛い少女は。仕方ないな。
「ジェイルさん、今白金貨どれくらいあります?」
ピクリとするエメラとナタリー。
なんかもう……血って感じがするよね。
「シュッツとランドが震えながら数えてくれたぞ」
ジェイルはそう言いながら懐から一枚の紙を取り出す。
「現在白金貨が千七百九十枚だ。金貨はもっとあるがな」
つまり、ざっと見積もって十八億円は有るわけだ。
金貨を合わせたら二十億はいくだろうな。
「な? 大丈夫だろう、ナタリー?」
…………うん、目が白金貨みたいになってる。
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