その31 最強コンビの始まり
「これとこれをお願いします」
「私はこれとこれだ」
立て続けにネムの前に出された依頼票。
どれも討伐依頼であり、俺とリィたんには簡単な内容。
ようやく、というかやはり俺たちの意図に気付いたネムは、深い溜め息を吐いて言った。
「はぁ、確かにギルドの仕組みの穴を突いたやり方ですが、おすすめ出来ませんよ。危険なんですから」
「大丈夫ですよ、少なくともランクAまではこれで行けると思ってます」
「ランクAって、正気ですかっ?」
カウンターから身を乗り出すネム。
なるほど、とても良き胸をしている。
「えぇ、ボードの確認をしたら、何度か倒したモンスターがいましたから」
「ま……またまたぁ、そういう冗談は好きじゃないですよ?」
長く話してると、ネムの話し方もくだけてきた。が、やはり信じてないな。
まぁ、確かに、ランクFの冒険者が何を言っても、妄言ととられるだろう。
ならば見せてやるしかないだろう。
「ゴブリン討伐五匹、亜種コボルト討伐四匹、ホーンラビット討伐三匹、ビッグラット討伐三匹、終わりました!」
「えっ、もう!? お、お疲れ様です。これでお二人のランクはEとなりました」
昨日のマミー討伐がデカいだろうな。
勿論、これでやめるつもりは毛頭ない。
「ゴブリン討伐十匹、ホブゴブリン討伐一匹、ヴェノムビッグラット討伐二匹、キラービー討伐三匹、終わりました!」
「え、え? お、お疲れ様ですっ?」
昨日までは質重視だったが、信頼と実績と言われれば、数をこなした方が正解だろうよ。
「ゴブリン討伐十匹、ホブゴブリン討伐一匹、リトルサラマンダー討伐一匹、パラライズワーム討伐二匹、完了しました!」
「あ……はい」
ゴブリン系討伐はやはり多いみたいだ。
どこにでも生息しているというのは、本当なんだな。
「ゴブリン討伐十匹、ホブゴブリン討伐一匹、キャタピラー討伐一匹、トレントウォーク討伐一匹、完了です!」
「凄い……あ、え! お、お疲れ様ですっ! これでミケラルド様とリィたん様はランクDとなりました」
「よっし!」
俺はリィたんとハイタッチをかわし、ネムはただ俺をぼーっと見ていた。
「凄いでしょ、俺たち」
「え、えぇ、驚きました。これ程迅速にこれだけの依頼をこなす冒険者を、私は知りません。……まだ夕方前なのに。いえ、先程のは失言でした。申し訳ありません」
「あはは、いいですよ。ちょっと調子にのっちゃっただけです」
「ふふふ……はい」
そう言ったネムの顔は、とても柔らかく綻んでいた。
これはきっと、心から笑ってくれたのだろう。
因みに、今日の収穫は非常に良かった。
ランクFの依頼――ゴブリン討伐五匹、亜種コボルト討伐四匹、ホーンラビット討伐三匹、ビッグラット討伐三匹で、金貨一枚、銀貨五枚。どのモンスターも銀貨一枚の計算だ。
ランクEの依頼――ゴブリン討伐十匹、ホブゴブリン討伐一匹、ヴェノムビッグラット討伐二匹、キラービー討伐三匹で、金貨三枚、銀貨九枚。
ランクEの依頼――ゴブリン討伐十匹、ホブゴブリン討伐一匹、リトルサラマンダー討伐一匹、パラライズワーム討伐二匹で金貨四枚。
ランクEの依頼――ゴブリン討伐十匹、ホブゴブリン討伐一匹、キャタピラー討伐一匹、トレントウォーク討伐一匹で、金貨四枚。
どうやらランクEの依頼は、金貨一枚相当のモンスター討伐になっているようだ。キラービーは一匹銀貨三枚扱いなので、最初の依頼は端数になっているが、それ以外は銀貨五枚の二匹……という具合で、金貨一枚になるようにしている。
そう考えると、ランクEが日銭を稼げるラインだろう。
そしてモンスターから得た固有能力。
ゴブリンから【威嚇】。
亜種コボルトから【健脚】。
ホーンラビットから【石頭】。
ビッグラットから【恐怖耐性】。
ホブゴブリンから【危険察知】。
ヴェノムビッグラットから【毒耐性】。
キラービーから【刺突耐性】。
リトルサラマンダーから【炎耐性】。
パラライズワームから【麻痺耐性】。
キャタピラーから【地形無視移動】。
トレントウォークから【木々同化】。
昆虫からも能力を得られるとは思わなかった。体液を舐めたら覚えられたので、同じ要領でトレントウォークは樹液から能力を得られた。
大抵は能力の理解が出来たのだが、キャタピラーの【地形無視移動】については、実際使ってみないとわからなかった。
水の上を移動出来るという訳ではなく、あくまで大地の上をバランスよく移動出来る能力という感じだった。
トレントウォークから得た【木々同化】については、リィたんから聞けた。どうやら気配遮断系の能力で、森の中で有効なのだとか。調査や尾行の時に便利そうだな。
因みに、以前得たリィたんの特殊能力の【水龍眼】、そして固有能力の【龍の血】。
この二つは、流石リィたんの能力だけあってとんでも効果があった。
水龍眼は、下位の水系モンスターを絶対に威嚇し、萎縮させる能力。
龍の血は、万能薬とも言える効果がある能力だ。つまり、この固有能力を発動して、病弱な人に飲ませると、たちまち回復するそうだ。因みに、怪我に効く訳ではない。
と、今回の討伐含め、やはり人外な能力ばかり身に付けていくな、俺。
「今日はもうよろしいのですか?」
「あぁ、このランクD依頼の四件を受けておこうかな。明日の朝報告出来るように」
「明日もいらっしゃるのでしたら、隣町のマッキリーまで足を延ばして、ダンジョンに潜ってもいいかもしれません。マッキリーの冒険者ギルドにはダンジョン専用の依頼もございますので」
「はい。ご丁寧にありがとうございます。ではまた明日、ネムさん」
「はいっ」
ネム可愛い。この世には可愛い人間しかいないのではないだろうか?
なんて事を思いながら俺は商業区へ向かった。
そう、夕方前に依頼消化を終えたのには理由があるのだ。
何を買うのかって?
勿論、市場の調査もあるが、一番は武具の調達だ。
だって俺たち、何の武器も持ってないんだぞ?
使わないにしても、少しは持ち歩かないと、目立ってしまう。そしてそれは、遠からずクロード一家の危険にも繋がってしまうだろう。
まさか異世界に来て、防具はともかく、
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