第12話 部活紹介:月華人形

 部活の承認には数日かかるはずだった。その間に、と私は準備という名目で南畝さんを引っ張り回してみることにした。

「うちの学校、一人から部活ができるって話をしたよね」

「ええ」

「実際、一人部活で活躍している子が何人もいるんだ。全国大会優勝レベルの結果を出してる子が」

「部活の強豪校ということ?」

「イエス。でも、ノー。学校紹介でも聞いたことないと思う」

「そういえば」

「有力な子を集めてるんじゃなくて、望む部に指導者をつけて外に出す――全国規模の大会に送り出すとそれだけで勝手に育ってく子が出てくる。そんな感じ。申請の時に大会の話をしたでしょ。あれ、学校が推奨してるんだ」

「それは天才集めみたいなことをしてなくてもできることですか」

「中高一貫教育で六年あるからね。意思があってトップの水準を知って支えがあれば全国レベルに届いちゃう子もそれなりに出てくるってことっぽい。一人でできるものは特に」

「それはいくらなんでも」

「信じ難い?」

「ちょっと」

「だと思ったので考えてきました。今日、見本をひとつ見てもらいたいんだけど付き合ってもらえないかな?」

「それは構いませんけれど」

 生徒会の業務予定を覗き、ちょうど良いタイミングであることを確認して南畝さんを案内する。


 向かったのは校内で一番古い建物だ。かつては宣教師館と呼ばれ、今では生徒向けのサロンや生徒会執行部室が収まる『六花りっか館』という水色に塗られた擬洋館。向かったのは常設のギャラリーで文化部を中心に生徒たちの成果物を展示していた。

「どう?」

 南畝さんを連れて行ったのはあるショウケースの前だった。部屋で披露したレプリカ・ドール、あるいは南畝さんの文楽人形と近い大きさの人形が収まっていた。石粉粘土で作られた球体関節人形だ。

「…………」

 南畝さんは固まってしまった。

「これ作った人、うちの現役の生徒なんだよ」

「いるの? 学校に?」

「いる。すんごい変わり者だけど」

 南畝さんの食いつき方にアプローチが間違っていなかったことを知る。

「変わり者?」

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