第16話 キング・オブ・スポーツ2
「有色先生、近代五種を勉強してきました。」
私は職員室に行き、担任の有色先生に再アタックする。
「そうか。偉いぞ。」
「それほどでも。」
わざとおどけて見せる私。
「ということで、先生。近代五種部を作ることをお許しください。」
「それは無理。」
「ええー!? なんでですか!? 私を騙したのですか!?」
「これを見よ。」
「はい?」
先生は学校規則を私に見せる。
「部活動を新しく作るには、部員が5人いります!? 何ですとー!?」
「顧問には私がなるとしても、部活として活動するためには、近代五種をしたい人間を、あと4人も集めなければいけない。」
「そ、そんな!? 私はスポーツをしたいだけなのに、なんてハードルが高いの!?」
「そういうことだ。今度は部員が集まったら、やってこい。」
「はい。」
私は職員室から退出した。
「部活化まで、あと4人か。」
今度は、どうやって部員を集めるかを考えることになった。
「近代五種をやりませんか?」
私は校門や廊下などで、近代五種をやりたい人を集めようと声掛けをした。
「ゼロ。」
しかし部員は集まらなかった。認知度の無い近代五種など、知っている者、やりたがる者などいなかった。さすがマイナー・キング・オブ・スポーツ。
「負けるのか! これでこそ、やりがいがあるというものよ!」
私の東京オリンピックへの道は険しい。だけど、まだ手段がある限り諦めない。
「やっりました! 4人集まった! これで部活にして下さい!」
私は職員室の有色先生を尋ねた。
「こいつらはどれも帰宅部員だな。」
「はい。帰宅部の人達に名前だけ借りました。」
「名義貸しか。やるな。」
「それほどでも。」
部員が集まらないので、私は秘策として、どこの部活にも所属していない生徒に署名してもらい、部活化に必要な人数を、私も含め5人集めたのだ。
「いいだろう。部活として認めよう。」
「やったー! 近代五種部の誕生ね!」
こうして私の近代五種部は創設された。私の2020東京オリンピックへの道が開かれた。
「幽霊部員に、幽霊顧問、おまえはどうして、そこまで部活化にこだわるんだ?」
「予算。」
「おまえ、部費目当てで部活化にこだわったというのか!?」
「はい。だって、フェンシングや馬術など、五種目もトレーニングしようと思ったら、どれだけお金がかかるのかもわかりませんからね。親には負担をかけることはできませんから。ワッハッハー!」
私の夢は2020東京オリンピックに出場して、金メダルを取るということ。結果よければ全てよし。手段は選んではいられない。近代五種の部活化を諦めずに、部活にすることに成功した。
つづく。
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