第5話

 こうして侵略者の圧政は終わった。人々に落とされたその星は何者で、いつ、どこで生まれ、どうやってその強さを得て、何のためにこの国へ入り、何を求めて王の座を狙ったのか、誰かに知られることもなくなってしまった。

 もともとこの国を治めていた『グー』の王が戻り、人々の生活も元に戻った。

 ただ、侵略者への反逆前後で違ったのは、人々は外したじゃんけんの相性を身に着けなくなったことだ。玉座に戻った王が自らの相性を外すと、反逆に参加していない者や子供も次々と自らのじゃんけんの相性を外してそのままにした。大部分の国民がじゃんけんの相性を外して生活するようになった。

 そして、じゃんけんの国は外国と変わりない、特別な相性に左右されない普通の国となった。小さい国土に畑が広がり、各地域に点在する町並みはいたって古風である、普通の国に。


 とある日、農作業を終えた男が自宅へ帰り、妻とこんな話をしていた。

「そういえば、あなたのお隣の人の畑、今年はお芋がすごい豊作だって。聞いた?」

「そりゃ隣だから見てるし、収穫も手伝ったさ。ウチは虫に食われて大打撃だったが、隣は上手いこと逃れたんだよな」

「そう。……ねえ、ちょっと分けてもらえないのかしら」

「そうだな。明日、ちょっくら話してみるか」

 表面には出さないが、男は隣の畑の主をうらやましく思っていた。

 ふと、男は思い出した。

 ……隣の畑の奴は、確か『グー』だったな。そして自分は『パー』……。

 男は、数秒の躊躇いの後、何かを手に持つ仕草をした。

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