第39話 3球

球場を熱気が支配している。

ツーアウト満塁。俺はキャッチャーの手を凝視する。

素早く頷いた。自分の周りの空気はそれに反するように静かにゆっくりと流れる。

頬を流れる汗も観客の声も、球場の熱気も、俺の事を見つめている。しかし俺はそんな視線をまるで自分のものではないように扱っていた。


振りかぶって。投げた。


ストライク、出だしは好調。


深く息を吸う。

安堵してはいけない。


振りかぶって。投げた。


バットにボールがあたった。大きく左へ、ファール。

手に汗を握る。


俺は今日までの練習を、思い出した。


大きく振りかぶる。投げた。

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