寿退社の七海

@ito_shun

プロポーズされた

 誰だって中学とか高校とかそこら編で、将来どんなふうに生きていこうかなあって一回は考えると思うんだよね。


 いい大学、いい会社を目指して頑張ろうとする人もいれば、資格や技術を手に入れようとする人もいる。


 私もいろいろ考えてみたんだけど、やっぱり思うんだよね。


 イケメンと結婚したい。


 もうちょっと具体的に言うと、イケメンかつ御曹司がいい。実家が結構なお金持ちで、かつボンボンじゃなくて、本人も優秀な感じ。


 こう、お金をかけてもらったからこそ身についた力がいっぱいあるんだろうけど、きっとこの人は親の助けがなくても自力で成功したんだろうなあって思わせるようなやつ。


 その上で自分の優秀さを鼻にかけることなく、どんな人とも対等に接してくれるような人がいい。


 あ、訂正。自分だけは特別扱いしてくれる人がいい。


 その日から私はものすごく勉強した。たぶんそういうすごい人は、とてもいい大学を出たり、いい会社に勤めたりしている。


 イケメンを捕まえたいという理由で私は背伸びに背伸びを重ねたいい大学に滑り込み、理想通りのイケメン、翔太を見つける。


 迷いなく同じサークルに入部し、数百倍の倍率を勝ち抜き、大学生活の全てはカレに捧げたと言っても過言ではない。


 努力の甲斐あって、社会人三年目、ついに私はプロポーズを勝ち取ることに成功したのだ。


「絶対に幸せにする。俺と結婚してくれ」


 長かった。いや、長かったよね。


 苦節何年だろう。五年は超えているはずだ。


 問題はあまりに長すぎて、逆にこのままプロポーズを受けていいのか分からなくなってきたことだ。


 そういうわけで一度プロポーズの回答を保留させてもらって、一度誰かに相談しようと思っている。

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