第3章 ガンプと呼ばれた怪物
第10話 3-1
今、ジュリが居るのは、廃病院。廃病院なんかに居る理由は、肝試ししに来たからであった。
\ドッワハハハ/
じっとりと蒸れた空気が、体を包む。不快な湿気が体を伝う。
どこからか大人数で笑う声が近づいてくる。”あいつ”が……”ガンプ”がこっちに来る……
ジュリは小型チェンソーのエンジンを吹かすと、襲来に備えて身構えたのであった。
どうしてこんなことになったんだっけ?と、ジュリは今日のことを思い返していた。
***********
事の起こりは2、3日前に同じ大学に通う友人の奈緒から合コンに誘われたことであった。その日は、依頼もなく暇だったのでなんともなしに了承してしまったのだった。
三日後、合コンにはジュリを含む女子3人、男子3人の計6人が参加した。
当日、居酒屋のお座敷に通された6人はそれぞれ男女に分かれて、対面に座った。
「みんなー、何を頼むー?」
「じゃあ私はカシスオレンジで」
ジュリがその声に応える。
全員に注文したお酒が行き渡ると、幹事が乾杯の音頭を取る。
各々がグラスを片手に、その音頭に合わせる。
「カンパーイ!」
乾杯から程なくして、自己紹介タイムが始まる。まずは男性陣から立ち上がり、順番に自己紹介をし始めた。
「僕の名前は横溝 雅司って言います! よろしく!」
ジュリの目の前に座っていた男が少し噛みながらも自己紹介タイムを終えた。座った後、雅司はジュリの顔をジロジロと見つめていた。ジュリはその視線に気がつき、その碧眼を向けると、気まずくなったのか雅司は下を向いてしまった。
雅司が自己紹介を終えた後、次々と男性陣が自己紹介を行う。
先輩の
「今日は集まってくれてありがとう! 俺のことはタケちゃんって呼んでね!」
友人で幹事の
次は女性陣の自己紹介の番だ。同じく幹事の
「奏矢 ジュリって言います。今日はよろしくね」
「ジュリちゃん、もしかしてハーフ?」]
剛が声を上げる。
「そうだけど?」
「ああ~、可愛いねぇ」
剛は思いっきり、ジュリに粘っこい目線を向ける。
席替えした後、ジュリの隣に陣取った剛は「ジュリちゃん、今彼氏居るの?」だとか「この後、2人でどっかに行こうよっ!」などと絡まれるが、ジュリは不快そうな表情を隠しもせずにお酒をあおり続けていた。
その後は別段、何があるわけではなく、わいわいと楽しい時間を過ごした。
三時間ほど経った頃、篤が立ち上がる。
「そろそろ時間が来てしまいました!とりあえず、いったんお開きしたいと思います」
その言葉を聞いたメンバーはぞろぞろと居酒屋から退出し始める。
居酒屋を出てすぐに、次どうする―?などとみんなで話し合っていると、剛がここぞとばかりに大きな声で提案する。
「なぁ、肝試しに行かないか?」
ジュリは内心うんざりしていたが、この提案に篤と奈緒と紫苑がのってしまう。所詮、酔っ払いである。
ジュリは友人の顔を立てて、肝試しに参加することになってしまったのであった。
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