第二十一話 魔眼の吸血鬼
ヨーゲンを発ってから数日。
俺たちは王都を過ぎ、東へ東へと歩を進め、やっとのことでアイリス湖へたどり着いた。
道中、モンスターに襲われたり、モンスターに襲われたり、モンスターに襲われたりしたが、アールヴの魔法や天下無双で乗り切り、なんとか無事に到着した。本当、早く通常時でも強くなれるようなスキルが欲しい。
おかげさまでレベルも繰り返し上がり、SPも100を超えるほど溜まった。
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ラグナス・ツヴァイト
Lv:18
筋力:EEEEE
体力:EE+
知力:E+
魔力:E+
速力:EEEE
運勢:FFFFF+
SP:114
スキル:【レベルリセット】【天下無双】
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「どうしましょう。もう一度スキル習得してみますか?」
アールヴが自身のスキルクリスタルを差し出しながら言うが、俺はそれを片手で制した。
「やめとく。必ず虹色のスキルが出るとも限らないし」
それに、他のスキルが出ても1日で消えるのなら、今習得する意味はない。
虹色のスキルを習得すのに数千ポイント必要なのであれば、倹約しておく必要があるしな。
さてさて、それより問題は……。
「この湖、どうやってあの島まで渡るかだよな」
「ですね」
大きなアイリス湖の真ん中にポツンと島があり、大きな屋敷のようなものがあるのは分かる。橋はかかっていないため、そこに行くにはどうしても水の上を渡っていかなくてはならない。が、俺達は今船を持っていない。
「どうしましょう。最悪泳ぐという手がありますけど」
「俺、かなづちなんだよな」
「そうだったんですね。意外です」
アールヴには大変申し訳ないけれど、それだけは勘弁願いたい。
「では、天下無双でジャンプすると言うのは?」
「うーん。できなくはないけれど、得体の知れない相手に会うのに天下無双が使えないのは辛い」
「あー、なるほどです」
今の俺には強敵に対抗する手段が天下無双しかないので、それも避けたい。
その後も案を捻りだそうと二人で考えたけれど、結局妙案は思いつかなかった。
手詰まりだなと、そう感じ始めた時、遠くの屋敷がキラッと光った。
アールヴも気づいたようで、こちらを見て?マークを浮かべている。
すると、程なくして屋敷からコウモリが大量に飛んできた。
「気づかれたか?」
俺は新しく新調した剣を構え、アールヴも細身の剣を抜く。
しかし飛んできたコウモリは俺たちに襲い掛かることは無く、お互いが身を寄せ合い、こちらから島までの橋となった。
「歓迎されているのでしょうか」
「だといいがな」
おびき寄せられた挙句、袋叩きでお陀仏なんてことにならないことを祈りたい。
俺たちは橋を渡りきると、大きな屋敷のドアをノックする。
すると、ギギギと古めかしい音を立ててドアが開いた。
しかし、そこには誰も居らず、中が全く見えない闇が広がっていた。
「ロクス。一つ良いですか」
冷や汗を流しながら、アールヴが俺に尋ねる。
「何だ。怖いからやめとこう以外なら聞いてやるぞ」
「……、何でもありません」
「よし、じゃあ行くか」
俺は尻込みするアールヴの手を取り、無理矢理に引っ張りながら闇の中へ歩いて行った。
入って分かるが、辺りが暗すぎて何も見えない。
とりあえず訳も分からぬまま真っすぐ真っすぐ進んでいく。
「ロクス、本当にこっちで良いんですか?」
「知らん。俺に聞くな」
俺だって初めて来たんだから分かる訳がないだろうに。困ったらまっすぐ進むしかあるまい。
数分歩いた後、遠くに白い光が見えた。
どうやらあれがこの闇の出口のようだ。
俺たちは足早にその光へ向けて、歩を進め、光へ飛び込む。
気付けば王城の謁見の間のようなところに俺たちは立っていた。
「ここは……?」
アールヴがキョロキョロと周りを見回す。
「ようこそ、我が屋敷へ。歓迎するぞ」
不意に声がしたかと思うと、どこからか大量のコウモリが現れ、豪奢な椅子に集まり始める。
そしてそれは人の姿を形成し、やがて一人の……幼女となった。
「ククク。この禍々しい姿に声もでんようじゃな。そう儂の名は……」
「いや、ちょっとタイム」
「なんじゃい! せっかくいいところじゃのに」
こちらに手のひらを差し出し、ポーズを決めたところで俺がストップをかけた。
幼女は不服と言ったようにプクッと頬を膨らませる。
「えっと、間違えました」
俺は再びアールヴの手を取り、踵を返す。
アールヴはえっ、えっと狼狽えているが急な出来事に対応できないだけだろう。後で、説明をしよう。
「待て待て! お主ら儂に用があるんじゃなかったのか!?」
後ろで幼女が甲高い声で叫ぶ。
仕方がないので、ため息交じりの声で幼女に説明をする。
「あのな。俺たちが用があるのは、齢400歳の婆さんなの。魔眼の吸血鬼って言う化物なの。君、5歳くらいだろ? 君と遊んでる暇は無いの。分かった?」
「ぐぬぬぬぬ……」
俺の言葉を聞いて、幼女は顔を真っ赤にしながら地団駄を踏んだ。
「人のことを婆さんじゃの化物じゃの5歳じゃのと失礼な。儂がその魔眼の吸血鬼じゃ!」
はあ? この幼女が?
「まったく。お主らは虹色のスキルのことを聞きに来たんじゃろ。ラグナス、そしてニナ!」
「何で、俺たちの名前を……?」
「知っておるじゃろう? 儂がありとあらゆる事象を見通す魔眼の持ち主だと言うことを」
幼女は若干イライラしながら俺に言葉を投げる。
確かにギルドマスターはそう言っていた。だから俺たちの目的や名前もお見通しだってことか。
「あんたが、魔眼の吸血鬼だったのか……」
「最初からそう言っておるじゃろうが! コホン、では改めて」
そう言って、幼女は俺たちに手のひらを向け、ポーズを決めた。
「儂の名は、スカーレット・ブラッドレイ。誰が言ったか、畏怖を込めて人は儂をこう呼ぶ。『魔眼の吸血鬼』とな」
幼女はそう言い切ると、満足だったのかドヤ顔で笑った。
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