今のところ、僕の答えはこんな感じ。

コウサカチヅル

散りゆく花は、醜いか。

 ガタタン、ガタタン、電車が揺れる。田舎の風景が、窓の外をゆっくり流れていく。


 季節は、春。通り過ぎる山々には、ところどころ、桜が咲いていた。

 僕は、『病院』へ向かう途中。普段はずっと家にこもっているけれど、外出は嫌いじゃない。


 母さんが『花は醜くなって散っていくから嫌いだ』と言っていたな、今日はそのことについて考えてみよう。


 花は、咲いて、朽ちて、散っていく。それは果たして、本当に醜いと言えるのだろうか。それを醜いと言ってしまうのは、人間のおごりではないだろうか。花は種を残すために、その命を次へ繋いでいくために、全てを与えて終わっていくだけなのに。


 それは自己犠牲でもなんでもなく、ただ当たり前の、この世界のことわりというサイクルの中で行われる、自然な現象。それに悲しさを見出してしまうのは、それ自体もとても悲しいけれど、でも、人間に与えられた特権なのかもしれない。


 きっと人間は、ただ、そこにある事象にすら、『悲しい』とか『醜い』とか『つらい』とか感じとってしまう生きものなんだ。でも、だからこそ、『美しい』『うれしい』『いとしい』という気持ちだって、心の中に芽生えるんだ。

 だから人間は、『幸せ』にもなれるんだ。


 そんなことを考えながら、僕は『病院』へ向かう。


 『散りゆく花は、醜いか』。

 うまく言葉にできないけれど、今のところ、僕の答えはこんな感じ。

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