詩篇
山桜桃凜
余白
夜に布団に包まって枕に抱きついて小さくなっているときの部屋の残りの空間のことを考えている、冷蔵庫の中で飲まれないまま呆然としているサイダーは地震が来たら揺れて爆けるのだろうか、開け放した窓から透明な風が入ってきて通り過ぎて、二度ときみと一緒にはいたくない、だってそしたらきみがいただけの空間に風が吹き込んでいってしまって息ができなくなる、それくらい誰かを嫌いになれたなら、強い気持ちは全部ばかばかしくて窓を開けて部屋が涼しくなっただけで喜んでいるのがばかみたいで、夏なのに布団に隠れているのは怖くて仕方がないからだよ、だんだん体が熱をもって汗が流れて、最後には耐えられなくなって外に飛び出すのは水の中に飛び込むみたいな夜だ、昼を泳ぐことができなくても夜になったら空を飛ぶことができるように、ぼくがコーヒーの中に溺れているうちにサイダーはきみの中で溺れているんだろう、夜が走っていって電車は置いていかれて、踏切の音だけがいつまでも残っているような、みんなが幸せになればいいって言っていたひとはぼくのことはどうでもよかったらしいよ、きみの居場所を作りたくないからこの部屋を全部ぼくだけで満たしてしまいたいんだ、夢の中に潜り込んで部屋を壊してやろうと思ったのに、踏切の音も車の音もいなくなってカーテンだって揺れなくなったのに心臓の音だけが残っていて眠れなくなってしまった。
詩篇 山桜桃凜 @linth
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