ゴールデンバイブレーションロックンロールチョコレート
How_to_✕✕✕
プロローグ 彼女とサルとバナナと。
今日は二月十日。
バレンタインデーまでは後四日ある。
なんてことを思いながら俺は携帯を閉じポケットにしまう。
俺は最近、主流のスマートフォンではない。
ガラケーと呼ばれる二つ折の携帯だ。
今、高校生になってスマートフォンを持っていない奴は珍しいらしいのだが俺は気にしない。
「何、ボケッとしてるの。速く捕まえてよ」
隣に座る、彼女は不満をあらわにした。
「はいはい。やればいいんだろ」
俺はやる気なく答えた。
彼女は口を膨らませ明らかにご機嫌斜めといった様子だ。
隣に座る彼女は魔女だ。
いきなりなんだと思うが俺は事実を述べているにしか過ぎない。
もう一度、言うのであれば彼女は魔法使いで魔女だ。
水色の魔女。
そして彼女の目的。
俺は視線を彼女から離し、立ち並ぶ住宅の屋根を見る。
闇夜に紛れ、小さな影がもそもそと動いている。
そしてその影の手には光り輝く物体。
影が持つ物体こそが彼女の目的であり、手段。
一瞬、影は何か気配を感じたのか機敏に辺りを見渡す。
次の瞬間、影は輝く物体を大事に抱えながらジャンプした。
たまたまか、影は月の淡い光を浴び、昔、名を馳せた怪盗のようにジャンプしてる姿が脳に焼付けられる。
俺と彼女が追いかけている影の正体は猿だ。
ちなみにただの猿ではない。
奴はスケベで、すばしっこい。
追いかけている今でもどこから盗んできたのかわからないパンツを頭に被っているし、野生の本能なのか、すぐに俺たちが近づいたことを察知する。
くわえて奴は後ろで俺の様子を伺っている水色の魔女の使い魔だ。
本当に動物が嫌いになる一歩手前だ。
しかし、追いかけているからと言ってその猿が目的ではない。
本来の目的は逃走している奴が手にするバナナだ。
ちなみにこのバナナも普通のバナナではない。
だからといって勘違いしてもらっちゃ困るのはスーパーで三百円近くするブランド物のバナナではない。
奴が手にするバナナは魔法のバナナなのだ。
普通、表面は黄色く、黒い点が少しポツポツとあるものだが、そうじゃない。
このバナナの表面は金色に輝く。
ゴールデンパインならぬゴールデンバナナなのだ。
しかし、なぜ現実で考えられぬものが今、目の前にあるのか?
それはたった一人の少女の失敗と恋心が引き起こしたもの。
後ろで猿を捕まえろと俺に叫んでいる水色の魔女が原因だ。
そして何故、俺がここで関わっているのか?
まるで漫画の主人公のように理由の無い理不尽さで巻き込まれた。
俺は正直、後悔している。
思いながらiポッドにつなげたイヤホンを耳に装着する。
再生のボタンを押し、そしていつもの曲が流れ始めてきた。
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