第7話「決断」
「なら、次はダンジョンの形状と条件だ。石畳の上の僕をここに引き込んだということは、あの石畳の上はダンジョンとして機能しているということだよな?」
僕が問えば、コアははいと肯定を返してくる。
「そうやってダンジョンとして判定される場所というのは、飛び地の様に指定することはできるか? 例えば、さっきの石畳をいくらか進んだ先、別の通りの交差点の部分のみを同じように迷宮の一部にする、と言ったようなことは」
この問いにコアが何故と返してきたなら、僕はこう答えるつもりだった。
「これが可能なら、そこへダンジョンの罠を設置して逃げながら追手に反撃することも可能かもしれないだろ」
と。実際、それは僕が思いついた運用方法の一つでもあって、嘘ではない。
「可能です、ただし」
「ただし?」
「私の存在するダンジョンと直接つながっていない場合、維持に必要とされる力が増え、一定以上離れると設置も操作も不能となります」
「そうか。まぁ、無制限ってことはないよな。その一定以上になる距離は?」
重要な点であるので確認すると、前世の単位を使うならダンジョンとつながった部分の末端から半径30mが飛び地でもダンジョンとして設定できる限界らしい。
「この限界は私が力を蓄えて成長することで伸ばすことも可能です」
「なるほどな。なら、迷宮を糸のように細長く伸ばして飛び地と繋げた場合はどうなる?」
糸ほどの細さでは人が入るとか以前に構造物ですらないが、触れた状態で死傷した者が居た場合に力を得るなら、別に迷宮にしておく必要はないし、これが可能なら有線で操作する機材の要領で力の消費を抑えて飛び地を扱うことが出来る。
「不明です。いままでそのような活用をされた事例が私にはありませんでした」
「意外だな」
これぐらいならだれか思いついていても良さそうだと思った僕としては、コアの答えは予想外だったが。
「不明なら試せばいいか」
コアに残された力の半分はコアから人々を守ろうとした先人の血肉のようなモノ。無駄遣いはしたくないが、試さないことには始まらず。
「コア、お前に名前は?」
「ありません。過去には付けた所有者もいましたが、主人が変わるとつけられていた名もデータから消失いたしますので」
「どうせ消えるならとつけなかった管理者も多かったってことか……なら僕もお前は名付けず、コアと呼ぶ。コア――」
砕こうとした相手へ名をつける資格なんてないしなとは口にせず、僕は代わりに伝えた、ダンジョン運営者となることを。
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