短編小説 少女の花
@happy1321
少女の花
そこは商店街の外れの小さな病院。
今日は暑かったけど何故かうれしい日だった。
いや、喜んじゃいけないのかな。
そんな事を考えながら病室の窓から外を眺める少女の物語
今日、同い年くらいの子が入院してきた。
入院中に若い子と知り合う機会がなかった珠梨には新鮮な出来事である。
さっそく珠梨は彼の元へ向かう。
「こんにちわ!」
彼は少し照れながらも
「こんにちは」
と、返してきた。
「私、珠梨って言うの!この病院、お年寄りばかり入院してるからさ、若い子としゃべる機会が全然無いのよ!もし良かったらお話相手になってほしいな‼」
と、なんとも突然積極的に関わっていく彼女に戸惑いながらも、
「僕は優!よろしくね!」と、いかにも緊張した様子で笑っている彼がいた。
二人は他愛もない話やお互いの病気のこと。いろんな話をしていくうちにどんどん惹かれあっていった。
「ねぇ、優はもうすぐ退院しちゃうの?」
「退院はいつになるか分からないんだ。」
「そっか、私と一緒だね。」
彼女の身体には沢山の点滴や機械が繋がっている。
秋になり、少し涼しくなると、彼は珠梨の車イスを押して病院の中庭を散歩したり、調子が良いと二人でちょっとイタズラして怒られたりと彼らなりの楽しい日々を送っていた。
ある日のこと。
優は真剣な顔で珠梨の前に立った。
緊張して今にも崩れ落ちそうな優をみて、珠梨は
「どうしたの?」と不思議そうだ。
「珠梨、看護師さんの話を聞いちゃった。本当なの?」
その質問と同時に、彼女の頬に涙が流れた。
「本当だよ。あと1カ月くらいだって。」
笑顔で話す彼女の目には涙が溢れていた。
実は、心臓の病気で何度も何度も手術を重ねたがそれの効果はあまりよくないらしい。
「珠梨…」
「なに?」
一瞬時間が止まったように感じた。
「俺と結婚して?」
「え、」
彼女は固まった。
「だって、私…」
その声を遮るように、
「はい!決定!だから、絶対死ぬんじゃねーよ!約束だからな!!!」
いつのまにか彼女は乾いた涙が再び頬を流れていた。
「しかたないなぁ!その代わり、幸せにしなさいよ?」
「任せとけ!」
二人は泣きながら秋の空を見上げていた。
その約束はきっと、今でも覚えているのだろう。あの空の向こうで。
短編小説 少女の花 @happy1321
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