それでも私は眠ります
「はい、では──おやすみなさい」
私は地面まで移動し、技能の一つである収納にしまっていた毛布を取り出します。
地面に敷き、私はそれに包まりました。気分は毛虫です。
『…………えっ……?』
ウンディーネは目を見開いて私を見てきました。
……何をそんなに驚いているのでしょう?
「どうかしましたか?」
『……え、だって……私は行くって、言っていたから…………もう何処かに行っちゃうんだと……』
「ええ、私は行くと言いましたね。ですが、それは夢の世界へ、という意味です」
私は横になり、目を閉じます。
眠気が来るまで、これまで起こったことを回想しましょう。
異世界に転生し、早速面倒ごとに巻き込まれたと思ったら、予想外の収穫に恵まれました。
これも神様から貰った技能のおかげです。
私は他にも色々な技能を授かっています。
いつかは使うことになりそうですが、今はあまり必要のないものばかりです。
ですが、今すぐに使えて、なおかつ便利そうな技能は何個かあります。
その中で一番便利そうな技能は──マジックボックスです。
これは毛布を出し入れしていたように、物を収納できる技能のようです
これはゲームでいうアイテムボックスと説明すればわかりやすいでしょうか?
歩いている時に少しだけ検証した結果、生きているもの以外ならば何でも入れることが出来ました。
水などの液体も、何か入れ物があれば持ち運びも可能みたいですね。
ちなみに神様が用意してくれたのか、何ヶ月分かの食料と水分が、マジックボックスの中に入っていました。
……ありがたい。これで数日はずっと動かずに生活できます。
これだけで結構な量なのですが、まだまだ入りそうです。
この技能のポイントは5までしか振っていないのにこれとは、カンストまで振ったらどれだけ入るのでしょうか?
他には回復魔法や言語理解があります。
どちらもカンストまで振ってあるので、その技能に関して出来ないことはないです。
まず、回復魔法。
これは名前の通り、傷を負った時に使えます。
ついでに私は魔力強化もカンストしてあるので、魔法を使う際の消費魔力は極少量に抑えられます。
つまり、私は回復魔法をバンバン使えるのです。
傷も癒せて、状態異常も治せる。
これだけで生きていく上では十分ですね。
それに、回復魔法で上位のものとなると、『浄化』という魔法が使えました。
これは体の不純物を掻き消す魔法らしく、これのおかげでお風呂も必要ないです。
──つまり、お風呂に入っていた時間を、睡眠時間に割り当てることが出来るのです!
なんという画期的な魔法。最高です。
そして、あまり実感がないけど、意外と持っていると助かる言語理解。
それのおかげで、全ての声が日本語に聞こえます。
おそらく、ウンディーネと問題なく会話出来たのは、この技能のおかげでしょう。
……ただ、難点が一つ。
これ、動物の鳴き声も日本語に翻訳されて聞こえてしまうようです。
そのおかげで先程から耳がうるさいです。
オフにすることって出来ないのでしょうか?
これでは気ままに寝ることだって叶いません。
「…………ムムム、動物の声だけ聞こえないようになーれ!」
すると、ずっと聞こえていた動物達の雑音が聞こえなくなりました。
「おお、念じればなんとかなるものですね」
これで少しは静かになりました。
言語理解は必要な時だけオンにすることにしましょう。
「……では、今度こそおやすみなさい……………………」
◆◇◆
ふと、体を揺さぶられる感覚がして、私は目を覚ましました。
目を擦りながら見ると、青い髪の女性が一生懸命、私のことを起こそうとしていました。
──私が契約した精霊、ウンディーネです。
「…………なんれすか、もう」
ボーとする頭を回転させながら、私は起き上がります。
すると、ウンディーネは安心したように息を吐きました。
……ほんと、どうしたのでしょう?
『…………だって、リーフィア……何日も起きないから、心配になって…………死んじゃったのかと……』
「……あ〜…………」
そうですか。また私は長い間、寝ていたのですね。
「心配かけて申し訳ありません。ですが、私は寝ることが大好きなのです。何日寝ても、寝足りないくらいなのですよ」
『……そう、なの…………?』
「はい、そうなのです。なので、起きなくても心配しないでください。私は今日も、元気……ぐぅ…………おっと……元気ですから」
『……そうは見えない、けど……リーフィアが、そう言うなら……信じる』
「ありがとうございます。では、おやすみなさい」
『……また、寝るの……!?』
「はい、寝ますよ。一分一秒も無駄にはできませんからね…………ぐぅ…………」
『…………もう寝てる。……本当に、凄い人を、見つけちゃったかも……』
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