【あんぐらファンブック】

桐月悠里

第1回、ゲーム内掲示板についての裏話



第1回――【あんぐら】裏話集



 こちらは桐月の連載作品【Under Ground Online】の短編や裏話。本編では出てこない小話などをつらつらと書いていきます。この作品だけ単品で見ても理解できない部分がございますので、ご了承ください。


 基本的には最新話まで読了していることを前提としたファンブックです。更新は気まぐれですが、時々更新していきたい気持ちでいます。


 それでは第一回は、ゲーム内掲示板についての話です。いぇあ。




 ではまず作中、ゲーム内の掲示板について。


 作中では何かと細かい資料を公開するか、多角的に事件を描写したい時。現場の空気感を伝えるため、もしくは主人公が一切興味を抱かない分野の情報を作中に登場させるために便利に使っています。114話の「イケイケドンドン検証部隊!」とか。


 特に狛乃は感覚派で、自分の興味がある情報以外には見向きもしないので、地味に掲示板回が読者様方への情報提供のかなめになっています。用意だけはしてあるのに作中で紹介できない生産系アビリティの話とかですね。


 しかも奴は雪花が細々とグラフをつけたり検証したり魔石を作っている様子にも興味が無いらしく、狛乃の一人称で話を進めている以上、そっち系の情報が作中にまったく出てこない。


 雪花の一人称だったならもう少し細やかに色々なことを描写出来るんですが、悲しいかな主人公はあの戦闘民族なので、やはり本編には今後も登場の余地なしのデータが増えていくでしょう。


 そのため、ここで素敵に登場するのが我らが掲示板回です。後は色々とぶっちゃけて語れるここ、ファンブックでの裏話で公開するしかない。


 では、今回はまず、それら作者の設定公開表でもある掲示板の中でも、作中には出てこないものをピックアップしてみました。

 いや、もしかしたら本編でも出てくるかもしれませんが、とりあえず予定がないものを公開します。


 本編では名前だけしか出ていなくとも、実際に作者用資料として書き起こしてみたものも多いあんぐらの掲示板。


 とりあえず名前だけをあげると――『本気で解毒アルゴリズムと戦うスレ』、『血眼☆セーフティーエリア規則性観測所』、『冗談抜きでアビリティ派生を予測する会』、『魔法学を煮詰めるスレ』、『ゲームの中でも本が好き!』、『内臓強度爆死スレ』、『暑苦しく火属性スキルについて語るスレ』……あたりは114話で名前だけは出していました。


 その他、作中未登場の掲示板は――『最も美しい筋肉のつけかた、マッスルタイプ』、『闇属性をぼそぼそと語るスレ』、『常識を捨てろ☆初心者質問所』、『死なないように海に入る方法を考える会』、『特殊武器、防具の恐怖体験集』、『今日のゴミを吊るすスレ』、『指定ランカーの奇行観察日記』……などなど、まだまだあります。


 正直に言います。ひどい。


 もう一度言います。ひ ど い。書いている途中で何度も思いました。このゲーム、運営もひどいけどプレイヤーも大概だなと。

 だから現実リアルのほうのVRレビューサイトで「人外魔境オンライン」とか「ドマゾ御用達のクソゲー」とか書かれるんでしょう。


 それらの話も別の回でやる予定です。第一回はお得パックですので、裏話も大盤振る舞い。とりあえず全部未公開情報です。


 設定表開いて整理しているだけで時間が溶けていく夏の日――VRMMOって情報量が正気の沙汰じゃない。書き出した情報より、まだまだ脳内設定のほうが多いって信じられない。


 ――えー、では掲示板の話に戻りますが、あんぐらの掲示板。作中では、もはや掲示板というよりかは、それぞれのジャンルについて語り合うサークルのような感じで使われています。


 雑談系の掲示板もありますが、基本的にはどこもサークルとか部活チック。どこのスレにも管理人がいて、代表とか部長みたく基本的なルール指定や全体の話のまとめ役になっているところがほとんどです。


 今回は、作中でははっきりとは書いていない部分とかの仕組みをご紹介。


 まずあんぐらでは、掲示板はプレイヤーがスキルを使って作成するものです。


 運営が作る公式掲示板は存在せず、〝記者〟系統のアビリティ持ちによるスキルによって掲示板が作られます。


 ただ、掲示板の管理人が全員〝記者〟なのか? というとそういうわけでもありません。

 ほとんどの〝記者〟は作った掲示板を自ら運営せず、週額、もしくは月額料金などで掲示板の権利を他プレイヤーに〝貸している〟ことが多い。


 たまに完全に売却しちゃう人もいますが、そうすると売却時のレイアウトが固定になる上、追加オプションとかが付けられなくなるのでレンタルが多い。


 例でいうと、『全力で今後を憂うスレ(ランカースレ)』の作成者は〝記者〟アビリティ持ちの〝クヌギ〟というテストプレイヤーですが、あの掲示板の管理人は〝ノア〟です。


 そのため、ノアに主な権利を貸しているクヌギが持っている権限は「掲示板の強制削除権」と「レイアウト変更権」、「オプション追加権」のみ。


 その他の「ID管理権」や「書き込み日時特定権」、「注意書き設定権」、「レス削除・凍結権」、「書き込み制限権」などの諸設定の権利はレンタルした側である管理人の権限となります。


 これについてはチラっと147話の掲示板注意書きの中で出しています。以下、抜粋。

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『※首領ドンの掲示板設置担当〝クヌギ〟より――このスレからレイアウトを変更したよ! もっとこうしてほしい、とかあったら言ってねー』


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〝記者〟アビリティ持ちのクヌギはノアと友人関係でもあり気心が知れているので、注意書きの隅っこを貸してもらい、掲示板使用者にレイアウトの使い心地を聞いている様子です。


 このように、レイアウト(名前の表記法や字体など)を変更したりできるのは掲示板を作ったクヌギです。


 ですが、注意書きを書いているのは管理人であるノアです。書き込み制限をかけたのも、IDの非公開を設定したのもクヌギではなくノアになります。



 では、具体的にはどんな権利があるのかをご紹介していきます。


 現在、本編200話の段階で指定権限があるものは、



 ・掲示板冒頭の注意書き……主にこの注意書きで、それぞれの掲示板での〝ルール〟が記載されます。


 ゲーム内個人情報は書いちゃダメとか、書いても良いけど自己責任だよ、とか。荒らしは吊るす、とか。

 自分以外のID、書き込み日時が知りたい場合は有料です、とか。検証作業の邪魔をする奴は殺す、とかです。大体守らないと酷い目に合う。




 ・書き込み時の名前指定……あんぐらの最新版の掲示板ではIDの他に書き込み時の名前――ハンドルネームとかが必要なのですが、これは掲示板の管理人が指定できます。


 具体的にはプレイヤーネームで固定、プレイヤーネーム以外、どちらでも可、の3種類から選べます。



 主にPKプレイヤー報告板や世界警察ヴァルカンの掲示板など、虚偽の報告を許さない性質の掲示板では、ほとんどがプレイヤーネームじゃなければ書き込みが出来ません。



 反面、PK被害者の会や、隠れPKKの寄合所など――事故でプレイヤーネームがバレたりしたら面倒なことになる掲示板では、プレイヤーネーム以外でのレスしか出来ないという設定が多いです。


 前者は被害者をPKプレイヤー達の報復から守るため。後者はPKプレイヤーにプレイヤーネームを特定されないため、という理由です。



 雑談系は、ほぼどちらでも可。ただし、特定の雑談掲示板はプレイヤーネームしか認めないものもぼちぼちあります。


 有名どころは『全力で今後を憂うスレ』とかです。あそこは特にランカースレとか言われるほど人外率が高いため、好き勝手が出来るようになるとどこまでも暴走するプレイヤーが多い。


 ほとんどノアの注意書き(圧力)と行動力(物理)とスレ民への首輪(偽名不可&現在位置特定)で掲示板の秩序とマナーが守られているため、プレイヤーネーム指定は必須設定になっています。



 他にも検証系の掲示板では、管理人の気分や性格によって違います。


 作中で登場済みの『ガチで属性と系統を検証するスレ』の管理人は〝フラフム〟ですが、彼はガチ検証スレシリーズの中では緩いほうの管理人なので、名前は自由に決めて良いとしています。注意書きの傾向も検証作業の邪魔さえしなければ放任主義。


 対して、『血眼☆セーフティーエリア規則性観測所』の管理人は厳格(人外の感性で)な人なので、注意書きも名前についても変な方向にガッチガチに厳しい。

 認められるレスは敬語のみ。敬語で書いてあればどんな暴言も認められるのに、敬語以外のレスの削除、書き込んだプレイヤーの追放は当たり前。


 管理人の主観で「こいつ……なんか気に入らない」と思われただけで永久追放など、好き放題の掲示板もあります。別名は「礼儀正しい蛮族の村」。端的にカオススレ、と呼ばれることも。



 ・ID管理……ぶっちゃけていうと、どこの掲示板に書き込むにも、誰もが固定で1つは持っている裏番号のこと。

(※後述するID表記のない初期掲示板へのレスにも、表示が無いだけでIDは存在します)


【Under Ground Online】では、プレイヤーコードというものがあります。


 主にそれらを交換することでフレンド一覧に登録することが出来たり、統括ギルドへの支払いに必要だったり、他プレイヤーとの契約を結ぶ際にも必須となるものです。


 あんぐらでは、それら表のプレイヤーコードとは別に、掲示板でのIDとして、別名サブプレイヤーコードと呼ばれるものが存在します。


 何のためにあるのかというと、管理人が掲示板に書き込んでいるプレイヤーを特定するためにあります。


 あんぐら特有の無駄に〝悪いこと〟を助長するシステムに対して、プレイヤー達の力だけで対抗するためのアンチシステムの1つです。


 普通のゲーム内掲示板ではあり得ない仕様ですが、それらのIDを誤魔化すためのスキルを保有する〝詐欺師〟とかのアビリティが存在する時点でお察しですね。


 ゲーム内で何させる気だよってシステムに満ち溢れたあんぐらですが、その中でもゲーム内掲示板は犯罪計画や陰謀の温床でもあります。


 一応、それらの問題を抑制するためにあるのが掲示板用サブプレイヤーコードシステム――なのです。そう、一応。


 書き込み日時の特定権もID権に付随するものです。どちらも管理人によっては金銭での販売を行う者もいます。




 ・「レス削除・凍結権」、「書き込み制限権」……これはもうそのまんまの権限です。管理人は自分の管理する掲示板内のことならほぼ絶対の権利を持っているので、無駄な荒らしレスや都合の悪いレスは削除したり、凍結したり出来ます。


 ただし、あまりに一方的すぎると面白くないので、完全に意味のない暴言等は問題なく削除出来ますが、サポートAIが不当であると判断したレス削除は、削除ではなく凍結となります。


 何が違うのかというと、凍結されたレスは〝このレスは削除されました〟ではなく〝このレスは凍結されました〟と表示されます。


 その上、凍結されたレスは何と解凍スキルなんてものが存在するので、そういったスキルを持った一部のプレイヤーには、凍結されたレスが読めるわけです。


 この設定が生きるのはいったい本編のいつなのか……もうちょっと先ですが、そんな権限もあります。


 解凍スキル……個人的にはあんぐらの意味不明なシステムの中でも、特に意味がわからないスキルだと思います。

 いえ、意図はわかるんですがね。……きっと運営はゲーム内掲示板を戦場か何かと勘違いしてるんでしょう。



 以上が、主な管理人の権限です。悪用できるシステムが多過ぎてどうかと思いますが、あんぐら仕様はこんな感じ。


 その他には、権限とは別に以下のようなシステムもあります。




 ・次スレへの自動転送機能……あんぐらの掲示板はスキルによるものなので、〝記者〟のアビリティ持ちでも、保有スキル数によっては作れる掲示板の質が変わってきます。


 具体的に言うと、テストプレイ中に登場した掲示板は作中でもあんな感じで、非情にしょぼいです。〝見習い記者〟による熟練度0の【掲示板作成】で作った掲示板があんな感じ。


 カクヨムの応援コメントにて、16話で初登場した掲示板について、「掲示板手抜きって…」というコメントを頂いたことがありますが、手抜きではなく仕様です。


 初期スキルで作成した掲示板には、次スレへの自動転送機能どころかそもそも番号が無く、IDも表示されず、名前を記入する欄も無ければ、レスが500を超えると古い順から削除されデータが残りません。


 そのため、200話現在でも、他プレイヤーへの誹謗中傷や、同意なしのスクリーンショットを晒すために、あえて初期スキルである【掲示板作成】で作られた掲示板も存在します。


 プレイヤー間の俗称では非合法スレ。


 それらの掲示板は、常にキーワード検索をすれば人気が高い順に表示される掲示板検索機能の特性上、普通に検索してもスクロールのかなり下の方にしか存在しないため、ディープウェブになぞらえて、深海ディープスレと呼ばれることも。


 ともあれ通常は、最新型の作成スキルによる掲示板が基本。


 一定数のレスを貰ったり、スレ立てをすることで〝記者〟のアビリティレベルが上がっていき、アビリティから見習いが取れてようやく掲示板らしくなってきたのが90.5話の掲示板です。


 90.5話あたりだと、【掲示板作成】で作ったしょぼい掲示板に、【スレ拡張機能】や【自動転送】のスキルで、オプション機能を付けて整えていくイメージ。このうち、次スレへの転送機能は【自動転送】スキルによって付与されます。


 あんぐらでの次スレへ飛ぶ基準は1500レス。これは固定で、どこの掲示板でも変わりません。





 とりあえず、現時点(本編200話時点)での掲示板についてのあれこれは以上です。


 その内、本編には絶対に出てこない掲示板を丸っと描写して、こちらのファンブックにて短編扱いで更新するかもしれませんが、今日の裏話はここまで。


 基本的には思いつくまま、気の向くままにお題を選んで更新していきますが、何か優先的に知りたいことがあったら、感想や応援コメントにて気軽にリクエストしてください。喜んでお答えします。


 とりあえず、次回はなろうの活動報告で予告していた「VR接続機器〝ホール〟とそれを作ってる「ラプター・オルニス」社の小話」とかをやる予定です。


 それでは、次回もお楽しみに。












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