プロローグ

 魔女――――それは、自分より美しい白雪姫を嫌い、自ら毒林檎で毒殺しようとした者。

 また、自分の庭に無断で侵入し、愛情を込めて育てた野菜を妻に与え続けた夫に怒り、生まれた一人娘を高い高い塔の中に閉じ込めた者。

 はたまたは、自分だけ宴に招待されなかったからという理由で、その国の姫を茨で包み、永遠の眠りにつかせたりもした者。


 無慈悲で冷酷で悪魔のような魔女のことをみなはこう言った。



『愛を知らない黒き魔女だ』



 魔女が犯した所業はやがて歴史になり、童話として人々に語り継がれた。

 これは、そんな一人の魔女の〝愛〟を知る物語である。

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