第59話 コピーバンドどころか・・・
「・・・あらあらー、結構賑やかにやってるわねー」
そう言って開けっ放しになっていた扉から南城先生がニコニコしながら第二音楽室に入ってきた。おいおい、勘弁して欲しいぞ、わざわざ第二音楽室まで南城先生が来た理由が全然分からないぞ!?
しかも南城先生は何を思ったのか、先輩に向かって右手を突き出しながら
「先生の分のコーヒーもよろしくね」
それだけ言うと南城先生は椅子だけ持ってきて中野さんの横にドカッと腰を下ろしてしまったし、誰かに許可を取る訳でもなく確認を取る訳でもなく、『うなサブレ』を1枚手に取ると口の中に入れてるじゃあありませんかあ!
「な、南城先生!どうしてここに来たんですかあ?吹奏楽部の方はどうなってるんですか?」
俺は思わず南城先生に向かって絶叫してしまったけど、南城先生は『気にしない、気にしない」と言わんばかりに右手を軽く振っているぞ!マジで生徒と一緒にお菓子を食べるために第二音楽室へ来たとしか思えない!!
「はーい、先生の分ですよー」
そう言って先輩がコーヒーカップを南城先生に手渡したけど、南城先生は「お、サンキュー」と言って左手でコーヒーカップを受け取ると、2枚目の『うなサブレ」に手を伸ばしているし、これじゃあ、名前は全然違うけど、あのアニメに出てくる顧問の先生とやってる事が同じだぞ!
あれっ?
そう言えば・・・いつの間にか唯は中野さんの隣に座って「アスにゃん、はーい、お菓子ですよー」とか言ってるし、中野さんも中野さんで完全に調子に乗って唯に食べさせてもらってるし、これじゃあ、あのアニメに出てくる5人目のメンバーで唯一の下級生『アスにゃん』と同じじゃあないですかあ!アニメのアスにゃんは1年生で中野さんは2年生だから違うけど、5人の中で唯一の常識人で一番練習熱心で、それでいてギターの腕はユイ、いや失礼、唯よりも上で・・・
おいおい、ここにいる俺以外の生徒5人と先生1人の6人の女子・・・どう考えても、コピーバンドどころか、完全にアニメのコピーそのものだ。こんな事があってもいいのかよ!?
「・・・はいはーい、後輩君もコーヒー飲んでねー」
俺は絶句しながら考え込んでいたけど、その思考を中断するかのように先輩が俺の前にコーヒーカップを置いた・・・けど・・・あれあれ?
「・・・せんぱーい」
「ん?後輩君、何か用?」
「どうしたもこうしたも無いですよ、このカップ、先輩が使ってたマグカップですよね」
俺はマグカップを右手で持ち上げながら先輩に尋ねたけど、先輩は何を思ったのかニコニコ顔で
「そうだよー」
「俺が使うはずだった青色のコーヒーカップを中野さんに譲るのは一向に構いませんけど、俺が先週まで使ってたカップはどうしたんですか?」
「あー、あれね。あれはもう使う事もないだろうという事で、あたしが貰い受けました」
「貰い受けた!?」
「そう、貰い受けた。だから今日から後輩君は、君がどうしても欲しくて欲しくて仕方なかった、このマグカップでコーヒーを飲む事を許可してげるから、有難いと思いなさいねー」
「『許可してあげるから』とか言われても意味不明です!それに、どうして俺が先輩が使ってたマグカップを『欲しくて仕方なかった』などという事になってるんですかあ!?」
「何を言ってるのかね後輩君。君はあたしが使っていたマグカップを使う運命にあるんだよ。いや、そうに決まった!」
「ちょ、ちょっと先輩!何を目茶苦茶な事を言ってるんですか!!俺のカップを返して下さい!!!」
「またまたー、そんなに照れなくてもいいんだよー。本当は『先輩、俺の為にこのマグカップを譲ってくれて感激です!俺、先輩に一生ついていきます!』と言いたいんだろー?」
「勘弁して下さいよお」
先輩!冗談は休み休み言って下さい!!どうして俺が先輩のマグカップを使う事になるんですか!?マジで勘弁して下さい!!
「わおー、平山先輩って、結構大胆ですねえ」
「うっそー、律先輩と平山さんはそういう仲だったんですかあ!?」
「あらー、先生も初耳よー。これは一大スクープとして新聞部に持ち込んじゃおうかなー」
「拓真くーん、やっぱり律子先輩一筋なのね」
「たっくーん、おめでとう!」
おいおい、ホントに勘弁してくれよお。藍はともかく、どうして唯まで俺を茶化すんですかあ!?しかも先輩も完全に調子に乗って、俺の左腕を自分の右手で組みながらニコニコして「いやー、皆さんに祝福されて感激でーす」とか言ってるから、俺は右手を額に当てて「はああああああ・・・・」と超長ーいため息をつく事しか出来なかった。
これでホントに良かったのかあ?俺、どこかでボタンを掛け間違えたのかなあ・・・
とーにーかーく、軽音楽同好会の男子禁制は守られたけど・・・中野さんと琴木さんと南城先生の誤解の解き方、誰か教えて下さい!!
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