ダンジョン修行編

第4話

「ダンジョンは近くにありますが危険性はありません」

「外に出てこないって事? 中に入ったことは?」


シエルに聞くと首を横に振る


「数百年前にギルド長がパーティで入って第三階層までなら辿り着いたらしいですがそれ以上は行けなかったそうです。その時以来行く人はほぼいないというか行っても戻ってきた人は居ません」

「死んでいるってことだね。油断すれば死ぬけど油断出来るほど私は強くない」


城壁を抜けてから30分程度でダンジョンに着く


「ではいってくる」

「危険そうなら早めに戻ってくださいね。命を大事に」

「わかってるよ。死んだら意味ないから」


入り口を通りダンジョンに入っていく


魔獣の洞窟 第一階層


中に入り暫く道なりに歩くが敵が見つからない

地図を確認するとダンジョンの道が入る前と変わっていた


「なっ! これは一体」


一瞬シアに騙されたと考えたが自然と道が変わることなど魔法でも難しいだろうし魔力を通して一度魔法が使われているか確認しているので違うと理解する

すぐに立ち止まる


「油断ならない。もう敵の攻撃範囲に入っているのかもしれん」


30分歩きようやく敵を見つける

ゴブリンの姿をしているが外で見たゴブリンとは何かが違う

数は5体でこちらを見るとナイフを持って戦闘準備に入る

すぐさまこちらも戦闘態勢に入り相手の出方を伺う

ゴブリンは動かずにじっとこちらを見ている


……先に動くのはどっちになるだろうな


静寂が訪れる

先に動いたのは私であった

後ろに飛びすぐに魔力を指に集め引っ掻くように空を切る

黒い爪跡が斬撃のように飛び3体を切り裂くが2体には避けられる

避けたゴブリンは地面に着地と同時に接近してきてナイフを振るう

斬撃を避けて蹴りを打ち込むが止められる


「嘘!」


もう一体のゴブリンの攻撃で腕を軽く切られる

血が流れるがすぐに流れた血で傷口を塞ぐ


……早いし強い。考え方を変えよう、奴らは外のゴブリンの域を軽々と超えている


魔力で盾を作り攻撃を防ぐ


「ブラックシールド……まずい」


盾を数発殴り黒い弾を出現させ攻撃するが速度が足りず軽く避けられる

盾には警戒して近づいて来ないが一本ナイフを投げてくる

盾に弾かれたのを確認してゴブリンは攻撃を止める


「まずい、あの2体を倒さないと奥へ進めない。擬似闇魔法の盾で攻撃は防げるがそれだけ、こちらからも攻撃はできない……むむ、魔力の利用がまだ慣れてないから纏うことは難しいし慣れない限り攻撃の邪魔になりそうだから無理だね」


盾が機能しているうちにゴブリン討伐の為の作戦を立てる

先ほどの指に集める斬撃は相手の防御を超えるが一度見せている為回避される可能性は高いだろう


「咄嗟に考えたけど……この道全体を包むような攻撃を使おう。先ほどのやつに比べれば威力は落ちるが回避が出来ない攻撃ならダメージ入れられる」


盾の魔力が尽き盾が消え始める

それと同時に魔力を集める

煙のように広がり道の幅全体を覆う程に広げて盾が消えた瞬間に打ち込む

ゴブリンは回避を諦めナイフで防御を試みるが防ぎ切れないようでどんどん押されていく


「よし! ただ魔力ごっそり行くなぁ〜、魔力再生があってよかったよ」


雑談中に聞いた話で吸血鬼には魔力を自然の中から集められ自身の魔力を回復することができるらしい

出来るのはドラゴン種や吸血鬼などと言った高位存在のみである

魔力循環率が高いほど回復が早いらしく循環率を上げる方法もあるそうだ

しかし、知っているのは魔力回復がある存在のみの為結局はドラゴンや吸血鬼に会わないといけないらしい


「もう少しコスパを上げたい。……レベルで強くなるなら楽だったけどまぁ、リアルがそれじゃつまらないよね」


……実感を得られるのはその力を使う時のみ、上辺だけの存在など無意味


奥の壁にぶつかり魔法が消えると同時にゴブリンが立ち上がる

よろめいている内に接近して手刀で斬り裂く


「君達の死は無駄にしないよ。とても有意義な時間であったよ」


そう言い残して左の道を歩く


……挟まれたらまずい


「血蜥蜴」


血で作った蜥蜴を前と後ろの壁に配置して貰った地図の裏に血を垂らし血の地図を作る

これで大体の敵の位置、来た道、行く道を確認する

最初にいたゴブリンですらあの強さであるからにここの最下層付近はAランクどころではないだろう

3階層がAランクなだけであってその先の実力は不明

ちらほら人の骨や武器、防具が見える

ここで戦い死んだ者達だろう


「せめて安らかに眠ってもらいたいけど全員分の墓は作れないなぁ」


骨のところにあったボロボロの大剣を地面に突き立てて簡単な墓を建てる


「取り敢えず簡単な墓でも作っておこう」


軽く作り終えてから立ち上がり先に行かせた蜥蜴から得た情報を見る

この先には狼型の魔物が数体見える、他にも色々な魔物がその先にいる


「こっからが本番か」


血で剣を作り戦闘に備える


「煙幕」


魔力を空気中に混ぜ黒い煙で魔物を包み込む

異変に気付いた狼は遠吠えで敵と味方の位置を確認する

猛スピードで駆け抜けて狼を一体ずつ素早く斬り裂く

咆哮を喰らい怯むが声のした方に血の弾を飛ばして撃ち殺す

自分の魔力の煙幕なので自分には先ほど同然に狼の位置がはっきりと見える

最後の一匹を切り裂き倒す


……流石にこの速度で動き回るのはまだ無理かな、体力は温存しておこう


煙幕を張っている間に壁に寄りかかり休憩する


「まだ1階層、今日中には2階層まで行きたいな。この服直ってる! 斬られたところが綺麗に直ってる。魔法って便利だなぁ」


服を見て面白がっていると違和感を感じる

咄嗟に血の地図を見ると倒したはずの狼達が近くをうろついていた


……蘇生? いや、出現の方があってるかな、死体はある。


死体を確認するとちゃんとあったが少し経ってから自然と消えていく

あらかじめ剥ぎ取っていた爪を確認するとそれは消えてなかった


……どう言う条件かな? まぁ、良い。今は先を行こう


煙幕の中を歩いて二階層を目指す

途中にいた魔物には気付かれずに二階層まで行けた

奥まで行くと下に行く道がありその先を確認して安全を確保して向かう


2階層


2階層もほぼ変わらないが魔物の質が一気に上がった

2メートル近くある狼やオークなどが彷徨っている

血の剣でオークの背後から斬りかかるがオークの大きい図体のせいで致命傷までは持って行けなかった

大剣を振り回してオークは攻撃を繰り返す

魔力を込めてぶん殴る

単純な一撃であったが効いていたようで一瞬よろめく

ゴブリンのような小さく速度のあるタイプには向かないがオークのような図体がでかく一撃一撃が遅いタイプには通じやすい

自慢の速度で攻撃の隙を与えずに叩く


……魔法とは言えないけど大型にはこれがいいな


オークをごり押して倒す

影を使い2メートルある狼の足を縛り顔面を全力で先ほど同様に殴り蹴りも加えて倒す

奥から数体のオークがこちらに向かって突っ込んでくる


「ブラックシールド!」


咄嗟に盾を作るが数体の攻撃を喰らい破壊され吹き飛ばされる

壁に叩きつけられ血を吐く


「がっは……はぁはぁ、ぐっは、うっぐ……はぁはぁ、痛い」


立ち上がろうにも力が入らない


「……ブラックシールド!」


魔力で盾を作り身を守る

激痛で意識が飛びかけるものの吸血鬼の治癒能力によって段々痛みが引いていく

少しずつ骨や内臓のダメージも治っていく

盾にヒビが入りオークの様子が見え始める


……しっかりとした盾を作らないとこの先は無理か。痛え、意識が飛びかけた


「……闇魔法 ブラックウェポン」


魔力でまだ不安定な剣や槍などの武器を大量に作り敵めがけて飛ばす

盾が壊れると同時に突っ込んできたオークの全身を武器が貫いていく

一本一本の切れ味は普通の剣にも劣るが質よりも量といった感じで大量の武器でゴリ押す

不安定な為貫く途中や刺さった後などにすぐに霧散し消えていく

大剣で防がれたり弾かれるとすぐに消えてしまう為押し切れない


……押し切れないってなんか増えてないかな?


よく見るとオークが増えてきている

オークはどんどんと近付いてくる

不安定な武器たちは魔力の消費が少ない為数を出しても魔力が尽きることはほぼないが殺し切れないので精々時間稼ぎにしかならない

押されていきギリギリまで追い詰められる


……やむを得ない。あの手段を取ろう


「闇よ敵を捕食し前へ進め!」


詠唱を行う

地面から現れた黒い気体は集まり蛇のように細長くなり数体に分かれる

蛇の顔のようなものが先端に現れ口や目が現れる

口には鋭い牙があり簡単に肉体を噛みちぎるだろう

意思があるかのように今か今かと命令を待って周りをゆっくり動いている


「さぁ、私の敵を捕食せよ」


私がそう言うと餌を待っていたかのように高速でオークに向かっていき一体が大剣に噛みつき残りがオークの肉体を喰い千切る

オークの血が飛び散り声にならない断末魔がダンジョン内に響く

一体を噛みちぎり続いて2体目を食おうとするが大剣で斬られる

しかし、蛇は実態が存在しない為すぐさま再生する

何度も切られても何度も蘇りオークの命が尽きるまで食い尽くす


「魔力がある限り不死身とは中々強い。もう少し詠唱を伸ばして使い勝手を良くしよう。これを使いつつ銃を持てば良い戦いができそうだ」


魔力の消費を抑える為蛇を3体まで減らして武器達を全て消す

血蜥蜴で探索しつつゆっくりと警戒しながら奥へ向かう

左、右、後ろを蛇に守らせて正面に集中する


「前世で見た仮想の力が役に立つとは中々に面白い」


オークや狼に複数回会って戦闘になったが蛇を使うことで問題なく勝つことが出来た

蛇が食べた物は一体どこへ行ったのか気になるが気にしない方がよさそうに感じる

魔力の操作を少しずつ慣らしてより正確に蛇を操作できるようにしていく

1日目は二階層で終える

壁に寄りかかって蛇三体に守備を任せ眠る準備をする

途中途中蛇が戦闘している音が聞こえたが少し経つと静かになったので気にせずに身を休める事に集中する


……身を休まないとこの先は持たない、限界に挑戦せねばならないがそれはまだ必要ない。時が来るまでは万全の状態を保つ


目を瞑って暫くすると自然と眠りについた


一階層 危険度Fランク 出現モンスター基準

二階層 危険度Dランク 出現モンスター基準

三階層 危険度Aランク モンスター基準??

三階層〜不明


血蜥蜴の探索は続いていた

ずっと奥へ進んでおり下に降りられる場所を見つけていた

そこで見たものも蜥蜴を通じて情報として血の地図にしっかりと書き込まれていた

二階層 奥地で待ち構えている怪物の姿を

二階層 ボスモンスター、ゴブリンキング 危険度 不明

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