セルフバーニング

@jvk

第1話

 月の裏側。そこは、闇に染まった暗黒の空間。


 その、絶対零度の真空に浮かぶ不審な物体。いわゆるUFO。それは、超絶な科学力を有した異星人の宇宙船に他ならない。


 彼らの目的は如何に?



「おいおいおいおい。ここが次の植民惑星候補なのかよ? きったねぇ星だな。オイ」

「任務だからしょうがねえべ。それよりも化石モンの文明と科学技術を持ってるみてえだから、知的現住生命体を駆除すねーと植民地化できねえべ」

「おいおいおいおい、待てよコイツラ。なんだって? 計器の故障か? 七〇億近くいるぞおい。ガァリバリゾール並の繁殖力じゃねーか。かったりーなー、おい」

「手っ取り早く洗脳&奴隷化して連中に殺し合いでもさせるべ」

「OK! それいいな。それでいこう。で、どの地域が奴隷化に最適なんだ?」

「ちょっと待ってくんろ。いま探してるからよ……」


 ――数分経過。


「まだかよトロくせーな。そんなんだから、いつまで経ってもてめーは童貞なんだよ」

「せかすんじゃねえべ。マスばっかかいてる早漏チンカス野郎は黙ってるだ。それよりも見つけたべ」

「ん、どれどれ……。なんだコリャ? こいつはまた小さな島だな。なんでこんな狭っこい場所に一億も人口が密集してんだ? 連中は本当にガァリバリゾールの遺伝子でも持ってんのか? どう考えてもおかしいだろ? 変だろ?」

「原住民の習性なんて知るもんかよ。とりあえず従順そうな性格の民族で検索したらヒットしたんだべ。つべこべ言わずに早く仕事済ましちまうべ」

「ったく、スペルマ臭そうな惑星だぜ」

「てめえのチンポの匂いを嗅いでから吼えたほうがいいべ。包茎さんよ」

「んだと!」

「いいから行くべ」

 訛りのある異星人が自動航行プログラムを起動する。

 キラリンッ! と暗黒の宇宙空間が輝くと、異星人を乗せた宇宙船は、月を飛び立ち、地球へ向けて降下して行く。

 その進入角度は限りなく直角で、普通なら摩擦熱で燃えてしまうところだが、超絶なる科学力を持った異星人の宇宙船は摩擦熱など乾布摩擦くらいの抵抗でしかない。

 彼らの目的地は日本。地球は狙われていた。



 日本の大都市といえば埼玉をおいて他にないだろう。そのさいたま市のとある公園の砂場にて、五歳くらいの幼女が遊んでいた。

 くりりっと大きくて愛敬のある瞳と、ぽっちゃりしたほっぺたがカワイイと近所でも評判の、美少女ポコちゃんだった。

 本名は法子というのだが、読みにくいので、みんなポコちゃんと呼んでいた。

「ここほれワンワン。おたからでてこーい。とくがわまいぞうきんはあたしのもの。だれにもわたさな~い」

 ザクザクと砂場を掘り返すポコちゃん。彼女は糸井●里のファンだった。もちろんコピーライターとしての糸井氏のファンではなく、徳川埋蔵金に命をかける彼の生き様に惚れ込んでいたのだ。

 公園の砂場を掘ったとしても、出てくるのは犬が埋めた靴とか壊れたおもちゃが関の山だろう。

 それでも、ただひたすら本能の赴くままに掘る! という行為に快感を覚えた五歳の幼児は、脳内麻薬のエンドルフィンを大量に分泌させ、狂ったようにシャベルを動かし続けていた。

「あは、あはっ、あははははーーーっ!!」

 五歳児とは思えない奇声を発するポコちゃん。大丈夫か?


 そうしてもうひとり。ポコちゃん以上に脳内麻薬を分泌させているヤツがいた。

 公園を囲うように植えられた雑木林から、ポコちゅんの一挙一動をウォッチする怪しい人影。近所の中学校の制服を着た少年の姿が見える。

 彼こそは、真性包茎ロリコンの御手洗勉造。近所でも札付きの変態だ。

 彼を知る幼女の両親たちは、我が子を決して五メートル以内に近付けないよう常に気を配っていた。その徹底ぶりはすさまじくSNSを駆使した包囲網はある意味警察以上に良い仕事をしていた。少なくとも神●川県警よりすごい!

 そんなわけで、地元で徹底的にマークされてしまった彼は、仕方なく隣町まで巡回し、つい数週間前に愛くるしいポコちゃんを発見したのである。

 まさに電撃! 身体に稲妻が走った。それくらいポコちゃんを見て衝撃を受けた。

 その日より、勉造はポコちゃんの虜となった。それまで愛してきたミカちゃん。ココアちゃんなんてのは有象無象の輩と化した。

 オンリーラヴ。ラブスレイブ御手洗勉造の誕生である。

 そんな勉造のライフワークは、砂場で遊んでいるポコちゃんを視姦しながら、短小でチンカスの一杯詰まった包茎チンコをゴシゴシとしごくことだ!

「ポコちゃん。ハァハァ。可愛いよポコちゃん。ハァハァハァハァ。その小さなお口でボクのビックマグナムをやさしく咥えこんで欲しいんだよぉ」

 実際はレミントンデリンジャー以下の粗チンなのだが、妄想は個人の自由なので干渉しない。大きくなって風俗へ行き、ソープ嬢に「あら大きいのね~」と皮肉混じりで冷笑される。そんな粗末なチンコだった。

「考えるんじゃない感じるんだ」

 勉造のオナニーの師である、某エロゲーの主人公の言葉である。彼の座右の銘でもある。

 確かにオナニーにはイマジネーションが大切だ。

 イメージをせよ勉造!



 一方その頃。

 地球に降下した異星人たちは、宇宙船の外部モニターを使用して、地上を観察していた。

「シット! なんだよここは、巨人達の惑星か? ヤツラの平均体長はおれたちの二十倍近くあるじゃねえかYO!」

「こいつは驚きだべ。どんもコンピュータの一部がイカれてたらすぃーな。縮尺率に狂いが生じてたんだべ。だがデカイからどうだっていうんだ? オラたちの科学力をもってすれば、この巨人達も泡吹いて逃げ出すべさ」

「んなこた分かってるよ。死体の処理とかがめんどくせーなって思ったんだよ」

「んだな。とりあえずサンプルを捕獲してみんべ。トラクタービームを用意するだ」

「んだよ。どうやって持ち帰えんだよ。この船は安物だから亜空間キャリアなんて装備ついてねーぞ。連中はこの宇宙船よりでかいんだぜ?」

「オメはうるさいのー。文句ばっか言ってねーで、手伝わねーがっ!」

「フン。そんくらいでキレんなよバーカ」

「バカはおまえだべ。このチンカスがっ!」

 宇宙船は高度を落しつつ、偶然にも公園で遊ぶポコちゃんにターゲットをしぼり、ロックオンした。

 危うしポコちゃん!



 突然として上空に現れた銀色の球体に、ポコちゃんはびっくり仰天した。

 だけど、好奇心旺盛な五歳の愛くるしい天使は、無謀にも宇宙船に近寄っていった。

「なんだろこれ? おたからかな? 銀色でつるつるしてる。ハッ! ひょっとしてプラチナってやつ? すごいすごい!」

 ポコちゃんは喜んで、目の前に浮かぶ球体をわしっと掴んだ。

 驚いたのは異星人だ。

「お、おい! 捕まえるどころか、こっちが逆に捕まったぞ!」

「すげえ馬鹿力だべ。この船の推力じゃ振り切れねえべ。ヤバイ。マジでヤバイずら」

「どーすんだよおい。おまえが妙な提案すっからこんなことになっちまったじゃんか。責任とれよな童貞!」

「黙ってろ包茎ハゲッ! ゴチャゴチャとうるさいべ。いまなんとかするだ」

 ガチャガチャとコンソールを叩く異星人。だが、その表情は険しい。

「うーん。なんでういてんだろー?」

 ポコちゃんが宇宙船を上下左右にシェイクする。当然ながら、中の異星人たちはたまったものじゃなかった。

「うわっ、吐きそう」

「つかもう吐いたべ……」

「きったねえな。ゲロまみれじゃねーか」

「それより脱出するべ」

 宇宙船からビリリッと電流が流れたので、ポコちゃんは驚いて腕を放した。その隙を逃さず異星人たちは速攻で退却した。

「とんずらーーー!」

「とんずらーーー!」

 ものすごい勢いで飛び去って行く宇宙船。それを不思議そうに眺めるポコちゃん。

「なんだったんだろう? プラチナもったいなかったなぁ。まっいいか!」

 再び砂場遊びを続けるポコちゃん。

「だめっ、もうイク。ポコちゃんいっちゃうよ。そんなとこ舐めちゃだめだよ。だめだったら、そ、そこは……。ああっ! あああっ! くう……」

 ドクンッ、ドクンッ、ピルッ、ピルッ、ピルルッ……。

「くふうっ! いつもながら最高だったよポコちゃん。どこでそんなテクニックを覚えたんだい?」

 勝手に妄想して、勝手に果てる御手洗勉造。思春期真っ盛りの一四歳。性欲絶倫のオナニー猿。いや、ここは敬意を表してオナニー斉天大聖と呼ぼう。

 ぶっこけ勉造!



 さて、夏の日差しによく映える服装といえば、満場一致でセーラ服に決まっている。

 プレザーなんて邪道だし、汚れきって荒みきっている。ルーズソックスなんて言語道断だ。

 ……そういやブルセラショップってまだあるのかな?

 そんなことはさておき、セーラー服が良く似合う美少女がひとり、息を切らせて走っていた。

 頬をつたう汗が太陽に反射して輝いている。汗フェチのおじさんならその汗を五万で売ってくれと懇願することだろう。それくらい美しい、珠のような汗だった。

 セーラー服美少女の正体は、さいたま第三中学校の二年生、霊感オカルト少女の美咲ちゃんそのひとだった。

 彼女はいま、大宇宙の偉大なる意思を授かったので、その知らせを報告すべく、近所でも有名な孤高の科学者。天才中浦和博士の元へと向かっていた。もちろん天才というのは自称であって公称ではない。

「たいへんです博士っ!」

 簡素なプレハブのドアを開けると、パソコンのモニターの前で、全裸でハァハァ言いながらチンポを握っている中浦和博士が居た。

「博士はへんたいですっ!」

 真咲ちゃんは慌てて訂正した。

「いったいどしたんだね美咲ちゃん」

 痴態を見られた中浦和博士だが、あくびれる様子はまったくない。ちんぽを握ったまま毅然とした態度で真咲ちゃんに質問する。

 中浦和博士は、大好きなオナニーの邪魔をされたので、ちょっと機嫌が悪かった。そのキモチは良く分かる。

 博士は、ちょっとたるんだお腹をパシンと叩いて、睾丸の裏をボリボリと掻きむしり、その指を嗅いでちょっとむせた。

「……とりあえず服を、せめてパンツくらいはいてくださいよ博士」

 博士の情けない行為をじっと見ていた真咲ちゃんが、妥協案を提案した。

「生憎だったね。私は室内じゃ全裸で過ごす主義なんだよ!」

「この間ははいていたじゃないですか。女物のプラジャーとショーツだったけど……」

「アレは女性の下着を研究していたのだよ。おっ、そうだ真咲ちゃん。真咲ちゃんがいまはいているパンツを貸して欲しい。それならワシもよろこんで身に着けようじゃないか」

「ブー、残念でした博士。わたしもパンツはいてませーん」

「なんとっ! 真咲ちゃんもその手の趣味があったのかね!」

「ちがうもん。今日だけだもん! へんたいの博士と一緒にしないでくださーい!」

 ヒュン、バシーーン!

 と、真咲ちゃんが隠し持っていた金属バットの一撃が中浦和博士の尻に炸裂する。

「あううっ! 痛い。痛いが気持ちいい。イタ気持ちイイという感覚だな。これは新たな発見だ。忘れないようメモしておかねば……」

 中浦和博士が新たらな趣味に目覚めたようだ。やれやれとため息をついた真咲ちゃんは、ようやく自分が何しに来たのか思い出した。

「それはそうと大変なんです博士。地球が狙われてるんですよ!」

「なんだと! それはアレかね? 例のお告げかね?」

「お告げじゃないです。偉大なる大宇宙の意思を受信したんです。強烈な電波でした。子宮にジンジンときちゃって、思わずパンツ濡らしちゃったんです。気持ち悪いから脱いだんだけど、一刻も早く知らせなきゃって思って、新しいパンツをはいてくる時間も惜しんで駆け付けたんです。だからいまはパンツをはいてないんです。てへっ!」

「フーム。実に興味深い話じゃないか。濡れたパンツの行方がとても気になるが、まあいい。それで、お告げとやらはどんな内容なんだね?」

「はい。『地球ヤバイ! マジ狙われている!』……と、さまよえる大いなる宇宙の意思がそう言い放ったんですっ!」

「……なるほど。真咲ちゃんの受信する電波はこれで意外と侮れんからな。ワシが二度も逮捕されるなんて予想できたのは真咲ちゃんくらいのものだよ」

「えっへん!」

「ようし。いよいよワシの力を世界に示すときが来たようだな。真咲ちゃん。タカヒロに連絡をとってくれたまえ。牛丼を奢るといえばすぐに飛んでくるだろう」

「わかりました!」

 シュタッ! と博士に敬礼し、中浦和の研究所を後にする真咲ちゃん。その姿は天真爛漫で元気いっぱいだ。

 残された中浦和博士は、何事もなかったかのように、パソコンに向き直り、エロサイトからダウンロードしたアニメのパンチラキャプチャー画像を眺めつつ、チンコをしごき始めた。

 しごけ中浦和博士。走れ美咲ちゃん!



 そんでまあ、地球から宇宙に逃げ出した宇宙人たちだが、彼らは月の裏側に設計した基地に戻り、そこで作戦を練り直していた。

「やっべ、やっべ、やっべーよ。最悪だよ」

「やってらんねーべ。あんだよあの凶暴さは。これまで見てきた原住民の中でもとびっきりだべさ」

「どうするよ? 惑星破壊ミサイルでもブチ込んどく?」

「バッカ! それじゃ意味ねーべ。そんなことしたら減給されて更に辺境宇宙に左遷されるだけだべさ」

「でもありゃヤバイって。おれたちの手には負えねって!」

「黙れやチンカス。科学力ではこっちが一枚も二枚も上手なんだべ。幸いあの凶悪原住民のスペックはデータ化してあっから大丈夫だ。要はそれ以上の性能を誇るダッチロボ作ればいいだけだべ」

「ああ、原住民に似せて作ったアンドロイドで侵略するってあれか。侵略マニュアルの……、なんだっけ?」

「ケースC、ステップ4だべ。今回の原住民は巨大だから遠隔操作式じゃなくて内部操縦方式でやるべよ」

「マジかよ。誰が操縦すんだよ」

「んなのオメに決まってるべ? 肉体労働はオメの仕事だべ」

「んだよ、やっぱりそうなんのかよ。タリーなー、おい」

「バッカ! 操縦方式は面白しれえんだど。原住民を殺戮する様がライブで見れるんだからよ」

「まあな。泣き叫ぶ原住民の脳漿ぶちまけるのは楽しいもんだよな」

「分かったら準備しとくだ。センズリばっかりしてねえで少しは運動するだ」

「そりゃこっちの台詞だ。それよりも早く作れよな」

「一日ありゃ充分だべ」

 二人の異星人の悪巧みは尽きない。危うし地球!


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