プリンス☆プロミス《戦慄の貴公子》

北川エイジ


女が近寄るとその鏡は闇を映した。縦長の楕円の闇に吸い込まれるような感覚を覚えながら、女は壁付きの鏡に問うた。


「鏡よ鏡、この世でいちばん強い魔法使いは誰?」


「シュエル・ロウの賢者ジェナルド」


「……賢者を除いた場合には?」


鏡は沈黙し、沈黙はつづいた。女は辛抱強く待った。答えに窮するということは候補が複数存在するのだろう。


やがて鏡は答えを出した。


「二○年後……まで生きているとすれば、おそらくシュエル・ロウのデュカス」


楕円の闇が消え、鏡は女の顔を映し出す。若い美貌の顔には疑問の表情が浮かんでいた。


「シュエルロウ……?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る