かりゅちー書いたよ1
焼肉が食べたい。
第1話
水道の蛇口をひねると、それまで糸のようにさらさらと流れていた水は止まった。
俺は蛇口の水が止まった事を確認してから、シンクの水が排水口に流れていくのを見つめる。ゆるゆるとした速度で流れていく水と泡を眺めながら、ぼんやりと、あー明日の仕事面倒だな、と思った。
日曜日、夕方16時23分。
久しぶりの休みは、だいたい休息と買い出しと掃除で潰れる。今はここ2、3日で溜まった食器を洗い終えてひと段落ついたところだ。
もう少しで夜の帳が下りるくらいかなと考えつつ、やることがなくなって自由になった俺はパソコンの前に座る。
そしてそのままYouTubeを開いて、ゲーム実況動画を漁っていると、何度かネット上でやり取りをしたことがある人の動画がアップされていて、その新着通知を見た時に、ああそういえば最近実況動画すらもまともに見れていなかったなと思い出した。
リアルが大変すぎると、動画を見る時間もなくなるのだ。悲しい事に。
そういや最近編集も全く出来てないなぁ、つーか編集ソフトにすら触ってないや。あーコリチンタにそろそろ会いたいなーとか頭の中で色んなことを雑多に思いつつも、俺は"ネット上で何度かやり取りをした事がある人"こと、かりゅの動画を見る。
その動画は、とあるゲームのRTA動画だった。
俺はかりゅのそのRTA動画を見ながら、そういやこの人、マリオデでも変な縛りで実況プレイしてたなぁと思い出して、少しだけ笑う。
縛り実況とか、RTA動画とか、彼はゲームをしながら、何かに挑戦し続ける事が好きなのだろうか。
彼の姿は、おちゃらけているようで何処か楽しげで、それがひどく羨ましかった。俺は、パソコンのマウスを握りながら目を細める。
俺のパソコンの中で飛び跳ねながら淡々と移動する隻腕の狼を見て、その向こうでゲームをしながらあくせくするかりゅを想像して素直に尊敬した。
かりゅは、多分自分が一番楽しいと思える方法でゲームをしていて、かりゅが楽しそうだから視聴者も楽しくて、だからきっとかりゅの動画は伸びるんだろうな。
喜怒哀楽がやや薄めなかりゅが、一番新しい目隠し実況の動画内で、手持ちポケモンがなみのり急所を当ててくれた事に対して「大好きやわ…」と言っていたのを思い出す。
あの人が好きって言うイメージがあんまりないから、あの発言は俺でもちょっとびっくりしたし、それくらいかりゅとしては嬉しかったんだろうなと思うと、思い出しただけでも笑えた。…ああ、くそ、基本的にあの人の動画全部面白いけど、なんか、最近負けてるような気がする。
「(…負けらんないよなー…)」
2017年にニコニコで動画をアップし始めた人間の中で、俺が勝手にライバルと思っているけど、向こうのほうがずっとずっと先を行っている気がした。
実際、最近俺は動画をあげられていないわけだし、視聴者もかりゅの方が人気も実力もあると思ってそうだ。…いや、分かんないけど。知らないけど。でも。
「(やっぱ、編集しよ。負けたくないし。)」
動画投稿なんて所詮は趣味の一端だ。いつでも辞められる事だし、しなくても生きていける。
でも、ふとした時にやっぱりやんなきゃなー、とは思うのだ。動画投稿者のサガみたいなものだろうか。分からないけど。
頭の中でごちゃごちゃと考えながらも、俺はなおもかりゅの動画を見た。隻腕の狼が、蘆名なんとかを倒すまで、あと3分。
かりゅちー書いたよ1 焼肉が食べたい。 @yakiniku_ga_tabetai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。かりゅちー書いたよ1の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます