異世界カードバトル

坂夏孝也

試合開始前

「中継をご覧の皆さん、こんにちは。IKBバトル世界大会地方予選、第三試合の模様をお伝えいたします。実況は私、手札自凝てふだ じこると」


「解説の一手奥礼流いって おくれるです、こんにちは」


「さあ、『†輝紗羅魏きさらぎ 紫苑†』選手vs『アブラ☆マシマシ@るーたん単推し』選手の一戦が間もなく開始となります。一手さん、この試合の見所をお願いします」


「世界大会本戦の出場経験はないとはいえ様々な大会で上位常連の輝紗羅魏選手に対し、初出場のアブラ☆マシマシ選手がどう挑むかがキモですね」


「なるほど、全く中身のないコメントありがとうございました。ところで私、すごく気になってることがあるんですが」


「何ですか?」


「両選手とも、五年後に自分のエントリーネームを見たらどんな気持ちになるんでしょうか?」


「それは想像するだけで心がザワつくというか胸がキュッとなるというか」


「聞くところによると、輝紗羅魏選手は大学ノートにびっしりと設定とか書き込んでるそうです。最近は「この世界の魔術に興味がある」とか言って、古書街でカバラ秘術の本とか探してるとSNSで呟いてました。ちなみに名前の前後のマークは「ダガー」で変換できますよ」


「リアルで異世界からやってきた設定はなかなか香ばしいですね」


「アブラ選手は二ヶ月前まで、@の後ろが『死ぬまでずっとみなしぃLOVE』という名前でした。二ヶ月前に死んで生まれ変わって推し変したんでしょうか?」


「愛する人がたくさんいるというのは素晴らしいことじゃないですか」


「うかつなことを言って炎上したくないという一手さんの心情を察しているうちに、いよいよ試合開始です。中継をご覧の皆さんも一緒に叫んでください。それでは……」


IKBバトルエンゲージスタンバイ! デュエルスタートアップ! 3…2…1…イグニッションゴーファイト!

Power in put all knows!

Shoot Link Guns!!

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