『続 へび娘さん』

やましん(テンパー)

 『続へび娘さん』

 ✳️ これは、すべて、フィクションであります。この世の中とは、一切関係ありません。


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 あれから、随分と長い年月が経ったようだった。


 男は、社会とのつながりを断ち、昔、崩壊してしまったとある深い山の中の村の廃墟で、ひっそりと生きていた。


 食べるものと言っても、自生している、いもばかりである。


 水は、奇麗な清流があった。


 そんな中、ある日のこと、ひとりの若い女性が尋ねてきたのである。


 『あなた様をご援助するように、市役所から依頼されました。費用は行政もちです。お食事のお世話から、さまざまな、家庭サービスを行います。ただ、あたくしが仕事しているときは、畑とか、うら小屋にいてください。仕事姿は見られたくないのです。』


 と、奇妙な事を言います。


 この『科学文明社会』でもって、いったい何だろう?


 とは、思ったが、このあたり体調が良くなく、臥せりがちでもあったので、大いに助かることは事実だ。


 会社が派遣した刺客であれば、それもまあ、構わないが、自分はそんな大物ではない。


 すべてが昔のことだ。


 それ以来、その女性は午前10時くらいにやって来ては、洗濯や食事の用意などし、午後3時くらいには帰って行った。


 それが10年は続いたのである。


 やがて、男は年をとり、あまり余命はないと悟った。


 不思議なことに、その女性は、若いままで、まったく変わらなかった。


『あなたは、お約束を守り、あたくしの仕事姿を見ることもなく、無事に生き抜きましたね。立派です。もし、覗いたら、噛み殺すつもりでした。でも、とうとう、お別れの時が来ました。病院に連絡しておきましたから、この先は、少し医療のお世話になりました方がよろしいでしょう。あなた様の口座には、いくらかの謝礼が払われております。』


『謝礼?』


『はい、あたくしを、長年、懲罰労働させてくださった、謝礼です。あたくしは、ある仕事に失敗し、その罪で、人間の家での、ご奉公をするように長老様からの罰を受けたのです。あなたは、あたくしの懲罰を監視するという、そのお役目を見事に果たされました。最後まで、様子を覗かなかったのは、あなたが始めてと聞きます。』


『はあ・・・・・・じゃあ、君は・・・・・・』


『ほほほほ。いつか、いい事があると、申し上げましたでしょう。まあ、結果オーライですけれど。では、さようなら。』


 男は、そのあと救急隊に助け出され、しばらく病院暮らしをしたのである。


 男には、多額の財産が残されていた。


 ただ、時間だけは、あれからすでに、200年ほど経っていたのだった。


 いやな、上司や部下たちは、みな、もう、お墓の下であった。



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 『続 へび娘さん』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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