アイスクリーム(2)

「ごめんねちょっと出かけてくるからこれで何か食べてきて。」

そう言われてくしゃくしゃになった1000円札を受け取り首からぶら下げたキャラクターが描かれた丸いお財布にその1000円札を半分に折ってそっとしまう。その人はじゃあねと手を振って高いヒールの靴でカツンカツンと音を残して小走りで去ってしまった。

「ねえ。」

「うん。」

「今日は暑いね。」

「うん。」

「何食べようね。1000円だから色々食べられるね。」

「うん。」

店内のベンチから周りを見渡した。様々なお店がひしめいていてこちらにおいでおいでと手招き、やって来た獲物をパクっと飲み込んでは吐き出していた。 そしてふとカラフルにあしらわれて、キラキラしたものが目に飛び込んできた 。

「ねえ。×××ちゃん。あそこあそこに行こう。」

「うん。」


「アイス二つください。」

そう言って丸いお財布のチャックを開け半分に折りたたんだお札を差し出す。

「はい。味は何になさいますか、お嬢さん。偉いね。」

店員さんは小さな私に目線を合わせるためかしゃがんで笑顔を向け優しげに話した。

「味はー。」

私は二つのカップを持ってベンチに座った。コーンは過去に端を潰し、服を汚してこっぴどく叱られて以来カップにするように無意識のうちにそうなっていた。

「×××ちゃんアイス買ってきたよ」

「うん」

「ねえ。×××ちゃんあのね。これ一つね、残しといてあげよう。だからさはんぶんこしよう。」

「うん。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る