和風月名


🌜1月(新暦の2月頃)

 睦月(むつき):「むつびづき」「むつましづき」ともいい、語源的には、新年を迎えて親疎ともども往来して仲睦(むつ)まじくするからだ(『奥義抄(おうぎしょう)』など)といい、あるいは、1年の初めの月の意の「もとつ月」の転(『語意考』など)とし、稲の実を初めて水に浸す月の意の「実月」(むつき)(『大言海』)とするなどの諸説がある。(日本大百科全書)


 【1月の異称】

 ・初春(しょしゅん)・新春(しんしゅん)・太郎月(たろうづき)

 ・祝月(いわいづき)・霞初月(かすみそめづき)・暮新月(くれしづき)

 ・早緑月(さみどりづき)・初月(しょげつ)・太郎月(たろうづき)

 ・年始月(としはづき)・年初月(としはづき)・初空月(はつそらづき)

 ・初春月(はつはるづき)・初見月(はつみづき)



🌜2月(新暦の3月頃)

 如月(きさらぎ):「衣更着」とも書くが、これは平安末期の歌人藤原清輔(きよすけ)がその歌論書『奥儀抄(おうぎしょう)』に、「正月のどかなりしを、此月さえかへりて、更にきぬを着れば、きぬさらぎといふをあやまれるなり。按(あん)ずるに、もとはきぬさらぎ也(なり)」というように、「更に衣を重ね着る」という意に解したことによると考えられる。江戸中期の賀茂真淵(かもまぶち)は、「木久佐波利都伎也(きくさはりつきなり)」と説き、草木が芽を張り出すという意からできたことばとするが、ほかに「気更に来る」の義とし、陽気の盛んになることをいうとする説もある。俳句作法上、2月とは異なった点を十分に理解する必要があるむずかしい季語とされる

 (日本大百科全書)


 【2月の異称】

 ・梅月(うめづき)・梅津月(うめつづき)・梅見月(うめみづき)

 ・木芽月(このめづき)・初花月(はつはなつき)・雪消月(ゆきげづき)



🌜3月(新暦の4月頃)

 弥生(やよい):風雨も春らしく改まり、萌(も)え出た草木がいよいよ生い茂るとされ、「やよい」の語も「いやおい月」の転化したものだという。江戸時代には、この月の5日に奉公人の契約更改(出替わり)があり、人事の世界でもようやく慌ただしい季節を迎えるのである。 (日本大百科全書)


 【3月の異称】

 ・桜月(さくらづき)・花月(かげつ)・早花咲月(さはなさづき)

 ・早花月(さはなつき)・染色月(しめいろづき)・花見月(はなみづき)

 ・桃月(ももつき)・夢見月(ゆめみづき)



🌜4月(新暦の5月頃)

 卯月(うづき):この月になると卯の花が盛りになるので「卯の花月」といったのが、詰まって「卯月」となったとか、「う月」は「植月(うつき)」の意で、イネの種を植える月の意をもつ、というなどの説がある。この月より季節は夏に入り、衣更(ころもがえ)をした。また、この月の8日を「卯月八日」といって、この日には近くの高い山に登り、花を摘んで仏前に供えたりする行事があった。この日はまた釈迦(しゃか)の誕生日でもあり、灌仏会(かんぶつえ)、仏生会(ぶっしょうえ)、花祭などといって、誕生仏を洗浴する儀式が行われ、甘茶などを仏像にかける風がある。参詣(さんけい)者はこの甘茶をもらって飲んだり、これで墨をすって、「千早振る卯月八日は吉日よかみさけ虫をせいばいぞする」と紙に書き、便所や台所に貼(は)って虫除(よ)けとする俗信があった。(日本大百科全書)


 【4月の異称】

 ・夏初月(なつはづき)・清和月(せいわづき)・卯花月(うのはなづき)

 ・木葉取月(このはとりづき)・鳥来月(とりくづき)・鳥月(とりづき)

 ・鳥待月(とりまちづき)・花名残月(はななごりづき)

 ・花残月(はなのこりづき)



🌜5月(新暦の6月頃)

 皐月(さつき):この月が仲夏の節にあたっていて、田に早苗(さなえ)を植えることが盛んであるため、早苗月といったのが訛(なま)ったからであるといい、また五月雨月(さみだれづき)の約されたものという説もある。祝月(いわいづき)の異称が古くからあり、5月1日になると人々は相賀し、この日から神社への参詣(さんけい)が多くなるといわれ、今日のゴールデン・ウィークを連想させる点が興味深い。

 (日本大百科全書)


 【5月の異称】

 ・悪月(あくげつ)・雨月(うげつ)・鶉月(うずらづき)

 ・早苗月(さなえづき)・田草月(たぐさづき)・月不見月(つきみずつき)

 ・稲苗月(とうびょうげつ)・吹喜月(ふっきづき) ・早稲月(さいねづき)

 ・梅月(ばいげつ)



🌜6月(新暦の7月頃)

 水無月(みなづき):「みなつき」ともいう。この月は暑熱激しく、水泉が滴り尽きるので水無月というのだとするが、語源的には諸説があり、『奥義抄(おうぎしょう)』は、農事がみな為尽(しつ)きてしまうので「みなしつき」といったのを誤ったのだとし、一説に、5月に植えた早苗(さなえ)がみな根づいた意からだという、とも説いている。今日の陽暦では7月に相当し、常夏(とこなつ)月、風待(かぜまち)月、鳴神(なるかみ)月、水待(みずまち)月など猛暑の季節にふさわしい、生活に根づいた異称が多く、古くから詩歌にも数多く詠まれてきた。なお、この月の晦日(みそか)限りで夏が終わるので、この日をとくに六月尽(みなづきじん)といい、各地の神社では水無月の祓(はら)い(六月祓(ばらえ))が行われる。(日本大百科全書)


 【6月の異称】

 ・青水無月(あおみなづき)・風待月(かぜまちづき)

 ・涼暮月(すずくれづき)・常夏月(とこなつづき)

 ・松風月(まつかぜつき)・水月(みづき)・皆月(みなづき)

 ・ 鳴雷月(なるかみづき)・焦月(しょうげつ)・涼暮月(すずくれづき)



🌜7月(新暦の8月頃)

 文月(ふみづき):単に「ふづき」ともいい、七夕(たなばた)月、女郎花(おみなえし)月などの称や、親月(おやづき)、蘭月(らんげつ)、涼月(りょうげつ)などの漢名もある。季は三秋の初めの月で、7日には七夕、月なかばには祖先の霊を祀(まつ)る盂蘭盆会(うらぼんえ)の行事がある。語源については、平安末の藤原清輔(きよすけ)の『奥義抄』に「此(こ)の月7日、七夕にかすとて、文どもをひらく故に、文ひろげ月といふを略せり」とあるのをはじめとして、稲の穂のふふみつき(含月)とする『類聚(るいじゅう)名物考』、この月は諸人が親の墓に参詣(さんけい)するからふづき(親月)というとする『和爾雅(わじが)』などの諸説がある。(日本大百科全書)


 【7月の異称】

 ・秋初月(あきはづき)・女郎花月(おみなえしづき)・桐月(きりづき)

 ・七夜月(ななよづき)・七夕月(たなばたづき)・穂見月(ほみづき)

 ・愛逢月(めであいづき)・蘭月(らんげつ)



🌜8月(新暦の9月頃)

 葉月(はづき):語源については「葉落月(はおちづき)」の略とする『奥義抄(おうぎしょう)』『和爾雅(わじが)』『日本釈名(しゃくみょう)』などの説や、穂張月(ほはりづき)(稲穂が張る月)の義とする『語意考』、黄葉の月の意とする『和訓栞(わくんのしおり)』、初来(はつき)(初めて雁(かり)が渡来する月の意)とする『滑稽(こっけい)雑談』などの諸説がある。三秋の仲(中)の月にあたり、万物の実りのときであるとともに、月のもっとも明らかな季節として知られ、とくにこの月の望月(もちづき)は「仲秋の名月」として賞美される。

 これらの風物によって月見月、秋風月、雁来月(がんらいづき)などの異称があり、南呂(なんりょ)、中律、壮月、桂月(けいげつ)などの漢名も知られる。(日本大百科全書)


 【8月の異称】

 ・秋風月(あきかぜづき)・雁来月(がんらいづき、かりきづき)

 ・木染月(こぞめづき)・其色月(そのいろづき)・月見月(つきみづき)

 ・萩月(はぎづき)・紅染月(べにぞめづき)・仲秋(ちゅうしゅう)

 ・観月(かんげつ)



🌜9月(新暦の10月頃)

 長月(ながつき):語源は明らかではないが、中古以来、夜がようやく長くなる月の意の夜長月の略称といわれてきた。稲熟(いなあがり)月、稲刈(いなかり)月、穂長月などが変化したものとする説もあり、近時では、9月は5月と並ぶ長雨の時季で「ながめ」とよぶ物忌みの月だからとする折口信夫(おりくちしのぶ)の見解もある。この月は菊の花の盛りにあたるため菊月ともいい、また紅葉の季でもあるため紅葉(もみじ)月、木染(きぞめ)月などの称もあるほか、漢名では季秋、無射(ぶえき)、玄月(げんげつ)などともいう。(日本大百科全書)


 【9月の異称】

 ・色取月(いろとりづき)・菊咲月(きくさきづき)・菊月(きくづき)

 ・青女月(せいじょづき)・紅葉月(もみじづき)・夜長月(よながづき)

 ・稲刈月(いねかりづき)・稲熟月(いなあがりつき)

 ・穂長月(ほながつき)



🌜10月(新暦の11月頃)

 神無月(かんなづき):「かみなづき」の音便で、「かむなづき」「かみなしづき」とも読む。季節は孟冬(もうとう)で、時雨(しぐれ)月、神去り月などともいう。名称の由来については、雷の声が収り果つるゆえに「雷無(かみなし)月」といい、6月を「雷鳴(みな)月」というのに対するとか、10の数より上の数はないので「上無(かみなし)月」というとか、伊弉冉尊(いざなみのみこと)が崩じた月というので「神無(かみなし)月」というとか、新しくとれた米穀で酒を醸造する月というので「醸成(かみなし)月」というなどの諸説がある。なかでもっとも有名なのは、10月には日本国中の神々が出雲(いずも)大社に集まり、出雲以外の国々には神が不在となるため、「神無月」(逆に出雲では「神在(かみあり)月」という)という説である。(日本大百科全書)


 【10月の異称】

 ・大月(おおつき)・時雨月(しぐれづき)・初霜月(はつしもづき)

 ・陽月ようげつ)・良月(りょうげつ)・神去月(かみさりづき)



🌜11月(新暦の12月頃)

 霜月(しもつき):だいたい陽暦の12月にあたる。この月になると霜がしきりに降るから霜降月といったのが、霜月に転じたといい、露ごもりの葉月、神楽(かぐら)月、雪待月などともいう。冬も深みゆく季節で、まだ極月(ごくげつ)師走の慌ただしさは世間にもみられず、冬の季節に入ったことをしみじみと味わう日々が続く。歌舞伎(かぶき)の世界では、この月の1日を顔見世といい、元旦(がんたん)の心でこの日を祝うが、これは中国古代の周の風俗に倣ったものともいい、周正(しゅうせい)、周の正月などの名もある。 (日本大百科全書)


 【11月の異称】

 ・神楽月(かぐらづき)・神来月(かみきづき)・神帰月(かみきづき)

 ・霜降月(しもふりづき)・霜見月(しもみづき)・雪待月(ゆきまちづき)

 ・雪見月(ゆきみづき)



🌜12月(新暦の1月頃)

 師走(しわす):この月になると、家々で師(僧)を迎えて読経などの仏事を行うため、師が東西に忙しく走り回るため、「師馳(しは)せ月」といったのを誤ったものだとか、四時の果てる月だから「しはつ(四極)月」といったのが、「つ」と「す」の音通(おんつう)によって「しはす」となったのだとかの説が伝わる。このことばのもつ語感が、年の暮れの人事往来の慌ただしさと一致するためか、陽暦12月の異称としても親しまれ、習慣的に用いられている。(日本大百科全書)


 【12月の異称】

 ・弟月(おとづき)・親子月(おやこづき)・限の月(かぎりのつき)

 ・暮古月(くれこづき)・年積月(としつみづき)・春待月(はるまちづき)

 ・梅初月(うめはつづき)

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