第18話

 ポジティブにー、やって行こーう!


 ってな訳で、先程までは初めて出会った人達とお茶してました。

 私のパーティーのリーダーのミニトツ=ハース。副リーダーのハトリ=フレディア。このパーティーで1番強い、リトル=ハルギス。

 それと、この中だと仲間外れのグラゼル神。


 この5人で、お茶してました。


 その間に驚いたことは、この世界に妖精がいることです。

 妖精がお茶とか運んできてくれました。ほんとに驚いた。メイドさんとかでもよかったけど、小さな体でも頑張っている姿が微笑ましかった。


 このままお茶にしたぁい。なんて思って数秒後に、リトハルに手合わせ願いたいなぁ。なんて言ったものだから、さっきの感情が丸潰れで剣を交えることに。

 剣道なら知ってるけど、剣の扱い方までは知らないなぁ。

 なんて考えていると、稽古場のようなところに着いた。


「久しぶりかもな」

「そうだね。この前までは遠征だったし」


 へー、3人で遠征に行ったんだ。


「はぁ。俺は疲れが溜まっとるわ」

「私も同意する」

「僕はそこまで」

「お前の体力は桁違いなんだよ」


 ついていけない。

 まぁ、ついていけないのは当たり前で。初めての輪にズカズカと入り込んでいける人間ではないからな。


 稽古場が異様に広い。中庭みたいになっていて、吹き抜けている。周りには木も生えていて、池のようなものもある。

 このグラゼル─オラゲーションの建物は、摩天楼のように高い。


「はい。クルミ」


 リトハルから差し出されたのは、木製の剣を渡された。それを受け取ると、私は周りに人がいないことを確認して一振した。


「力強いね」

「いえ……そんなことは」


 リトハルはにこりと笑う。


「じゃあ、手合わせ願います」

「は、はい」


 出来るのだろうか。剣道しかできないのに。まぁ、負け覚悟で挑んでみよっかな。

 

「じゃあ、行きますね」

「は、はいぃ」


 平和っていいなぁ。スローライフっていいなぁ。

 って、スローライフ送れてねぇぇー!私の夢であるスローライフ!

 そんなことを考えていると、リトハルがこちらに猛スピードで向かってきた。

 私は反応が遅れ、剣が飛んでいった。


 うわっ!やばい……。剣が……!


 その間にリトハルの剣は、上から下に振り下ろされる。私は後ろに重心が傾く。

 仕方ない。一か八かで、これを!


「やぁぁっ」


 足に力を入れて、バク転をする。その間に、リトハルの手を蹴った。

 私は運動神経は良い方だったので、バク転をしながら足を動かす動作は何かと得意だった。器用って言うのかな?

 

 予想通り、リトハルの持っていた剣は緩んだ。そこを狙って、私はリトハルの剣を奪い取る。

 私の飛ばされた剣は、私の真後ろに飛んで行った。だから、リトハルには拾いにいけない。


 早く降参してくれないかな…。


 降参してくれれば、剣を振らなくてもいいんだけど。剣道しか知らないのにね。まぁ、私の、運動神経が有れば、どうってことは、ないんだけどね?


 何故かって?


 それは、私が天才だからだ!


「凄いね。僕こんなの初めてだ。でも、僕が勝たないと君はオラゲーションに入らないんでしょ?」

「へ………?」


 どゆこと!?私らそんなこと一切言ってないんだけど!

 私は焦りの表情を見せた。それを狙ったのだろうか、リトハルは回り込んだ。


 ちょっとォォォォ!私はそんなこと聞いてないですし!恨む恨む!グラゼル神ーーー!

 

 回り込んだリトハルは滑り込んで、私の後ろにあった剣を拾った。

 

 動揺させられた…。こんなんじゃ、パーティーに迷惑をかけちゃうよ。って何勝手に入った設定になっているのさ。まだ加入するかも決めてないと言うのに。


「こんなので動揺は良くないよ!」

「ふん…別に大丈夫ですもん」


 私とリトハルは、真っ正面で向き合っている。


 私が右に重心を傾けてたら、左から来るよね。


「はぁぁぁぁっ!」


 私は左腰から、剣を引き抜くように振った。


「はっ!」


 リトハルの剣は予想通り、左から来た。


 やったね!予想通りだ!


 てか、リトハルって左利きなんだ。両手で握るようにして持ってたから気づかなかった。


 剣を打ち合っていると、グラゼル神がやめやめやめ、と割り込んで来た。


「互角なのはわかったから、リトハルも直ぐに辞めなされ」

「いや~。つい楽しくなっちゃって」


 と、言いながらリトハルは右手で頭をかく。その顔は汗一つ、疲れ一つ見せていない。


 グラゼル神ありがとう。降参して欲しかったんだ。さっきまでは恨んでたけど、今は感謝しかないですよ。


「私は…疲れました」

「あはは!ごめんね」


 私は頬を膨らせる。そしたら又、リトハルは笑いだした。やきもきするな。

 

 はぁ。今日はよく寝れそうだ。おばさんは動いたら疲れて良く寝れるものだよ。


「取り敢えず。パーティーを組むことは決定で?」


 グラゼル神に問いかけられたので、私は少し静止してから、首を縦に振った。

 すると、グラゼル神はぱぁーっと明るくなった。


「パーティーに入ったら必ず、オラゲーションに入らなきゃ行けないんだ!」

「はぁ。分かりましたから」


 負けました。グラゼル神の押しに負けた。てか、しつこいな。

押しに弱い私はなんでも、首を縦に振ってしまう。


「おぉ!本当にか!?」

「えぇ、本当にですよ」


 ミニトツからの問いかけに、面倒に返す。


「やったな!リトハル!計画通りだ!」


 グラゼル神。何を口滑らせてるんだい。計画は言っちゃいけないんだぞ。


「それ言っちゃいます?」


 ほら。リトハルと、同じ意見だぞ。


「入るって言ったんだから、言っても問題は無い!」

「そうなんですか…」


 うん。すんごい偏見だな。しかも、自信がありすぎる。


「まぁ、てなわけで。これから宜しくね。クルミ」


 ハトリが、改めて言ってきたので私も改めて言う。


「はい。これからよろしくお願いします」

「おぉ!よろしくな!」


 ミニトツにも、軽く頭を下げる。苦手だなこの人。ノリがいい人は嫌いじゃないけど、好きでもないかな。


「うん、僕もできるだけサポートするね」


 お願いします!という意味を込めて、私は両手を合わせて頭を下げておく。


「いらない気がするけどな」

「そんなことないですよ!」

「あったらでいいんですよ。ハトリはもっと頭を柔らかく」


 ハトリは、頑固じゃない気がするけどなぁ。けど、たまに頭硬いなって感じられることはあったけど。

 そして私は、話に入るタイミングを失った。


「頑固だと言いたいのか」

「いやいや、違いますよ~」


 リトハルは、両手を前に出して振る。すると、グラゼル神が手を鳴らして話を中断させる。


「はい!それまで~。取り敢えず、この場はこれで解散!しっかり睡眠をとるように。色々とあるからね」

「「「はーい」」」


 3人でハモって返事をした。

 笑しそうになったけど、何とかこらえた。

 と言うより、私は一旦帰った方がいいのだろうか。帰るのに、半日はかかるだろうし。

 シルもステルスの所にいるだろうしね。


「私はどこに行けば…」

「今日は泊まってってくれる?」


 グラゼル神はそう言って、スキップで進んでいく。私はその後を、駆け足で追っていく。


「分かりました」

「んー!まだお昼だから、案内しよか」


 伸びてから、ストンと肩を落としてリラックスした。


「お願いしまーす」


 グッジョブのジェスチャーをしてから、くるりと私の方を向いた。

 私は首を傾げるが、私を見ているのではないことに気づいた。


「あ、3人ちょいまちー」


 3人を呼び止めた。


「「「………??」」」


 3人は、同時に振り向いた。


「今日の夜、Rに集合で」


 暗号ですか!?


「フレーワも?」


 ハトリが、誰かの名前を上げたけどこれも暗号かな。


「うむ。みんなだからな」


 グラゼル神は、腕を組んで頷いた。

リトハル以外は少し嫌そうな顔を見せた。


「了解です」


リトハルが返事をした。


「んじゃそゆことで~」


 3人はスタスタと、行ってしまった。


「Rってなんですか」


 リビングはLだから、何なんだろう。


「Rはさっき居たところ。私が勝手につけたの」


 勝手につけたんかい。なんやねん。そこまで考える必要はなかった。


「じゃあ、フレーワも?そんな感じですか?」

「いや、そいつはオラゲーションの全体をまとめる嫌われ者だ」

「き、嫌われ者って…」


 私もまんま一緒じゃねぇか!私だって会社でまとめるリーダーやってて嫌われてたし。


「まぁ、仕方ないんだがな」

「へ~」

「まぁ、そんなことは置いといて。案内しますえ~」


 置いといていいんだ。良くない気がするけど。

 嫌われてるって言うのに、何とかしないんだ。私だったら何とかするのに。

 まぁ、自分の価値観を押し付けないでおこう。グラゼル神のやり方があるのかもしれない。

 それか、グラゼル神でも、どうにも出来ない感じなのか。


 私はニッコリと笑った。これから、嫌なことが沢山起きるって言うのにね。

 

 その後は、いろんな場所を案内された。特に大切な場所はRらしい。オラゲーション全体が揃う場所なんだとか。ご飯を食べる時、会議をする時、遠征に行く時の説明など。

 色々なところで使われるらしい。私はそこの珈琲が一番好きです。こっちの世界でね。


 ってな感じで、この一日が終了。


 

 寝ようと案内された部屋のベッドに大の字で寝転んだ。いや、そういえば呼ばれてたような。

グラゼル神に呼ばれていたことを忘れていた。行こうとした時には、リトハルが1人で呼びに来てくれた。

 優しさが溢れる笑顔で、迎えに来てくれた。


「すいません、忘れてました」

「まさか、寝巻きで出てくるとは思わなかったけど…」

「その件については」


 そう。私は家にいる感覚で、人様の前に寝巻きのまんまで出てしまった。

 寝巻きっていうか、バスローブって感じのやつ。モコモコでふわふわしてて手触りは気持ちよかった。


「あの寝巻き似合ってましたよ」

「いや…そんなことは」


 ははは、とリトハルは苦笑いをした。

 薄暗い廊下を、二人で歩いて行く。窓ガラスなんてものはなくて、少し肌寒いくらいの気温である。月は満月で星が綺麗だ。元の世界より何倍も月が大きい。

 それにここは街が見おろせる。王城の方がオレンジ色で明るい。

 街の方は、ポツポツとオレンジの明かりが見える。


「綺麗でしょ」

「はい。とっても綺麗です」


 リトハルは立ち止まって、廊下は螺旋を描いてある感じで、枠で吹き抜けている所に肘をつく。


「僕はね。違う世界から来たんだよ」

「……………」


 え、ちょっと驚きすぎて言葉が出なかったです。


「って言うのは嘘でね」


 嘘かい!本当だったら、ちょっぴり嬉しかったけど。


「ビックリですよ」

「でも、たまにそういう人いるんだよ。極たまにだけどね。ちなみに俺はあったことないよ」

「はぁ……」


 目の前にいるんですけどね。


「クルミは、どう?」

「どうって…言われましても…」


 リトハルが一瞬怖く感じた。月の光で、瞳が潤んでいるように見える。


「答えられないか~」


 ニッコリと笑った。


「!?」


 ひぇっ。


「そんなに驚かないでよ。僕だって君のことは知っ………」

「おみゃーら!遅ーーい!」

「す、すみません!」


 リトハルにグラゼル神が、ぶつかった。

 すみません。私が変なことを言ったから、立ち止まってしまって。


 リトハルは、不思議な人だなと、思った数分でした。

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