第16話 変わる
うぎゃあ。来てしまったよ。
着いた時には、いつの間にか日が昇っていた。ビックリです。
時の経過は早いな。
グラゼル神が運営するオラゲーションに。
てか、ステルスさん。投げやりでしたよね。ギルドの危機だからとかなんとか言って、逃げていった気がするんですけど。
グラゼル神に押し付けて、自分は逃げるように帰っていったよね。
グラゼル神は、グラスを一気に飲み干した。
オラゲーション。グラゼルオラゲーションと、呼ばれているグラゼル神のオラゲーションについた。
周りの人の視線が痛い。ここのオラゲーションの人からしたら、はぐれ者の私。
耐えれるであろう私。
「いらっしゃーい!オラゲーションへ!」
「はい。いらっしゃーい」
軽く受け流すと、グラゼル神は頬を膨らませて地団駄を踏む。
子供か!確かにグラゼル神は、胸はたわわなのに背はちっこいなぁ。
何歳なんだこの人は。てか、この人についてなんも知らないな。
聞きたいけど、聞いたらガチで殺されそう。
「君はどうしてそんなに冷たいんだ!」
「前からも、こんな感じなんですよ。サイテーでしょ?」
グラゼル神は聞いていけないことを聞いてしまったような顔をする。
まぁ、聞かないで欲しかったけど。
だって、ゼウスを助けたのもそのせいで、仕事でハブられてたことが多少は関係してるし。それだけじゃないけど。
はい。やめやめ。こんなシリアスな感じを、この世界で感じたくはないな。
「んー。どうだろ、ここにはもっと特殊な奴らが揃ってるからさ」
そんなに個性的な奴らが集まってるのか。それが、グラゼル神の趣味なのだろうか。そしたら、驚きだけどね。
「へ~。共有できそうですね」
何とかやっていけそうな気も(まだオラゲーションには加入してない)。
「あはは。それはどうだろうね~」
グラゼル神は苦笑いをして返してきた。どんだけ塞ぎ込んでる人がいるんだ。
てか、個性的な人が本当に多いんだな。
って考えながら、グラゼル神と向き合って話していると、グラゼル神の視線が私の右手にあることに気がついた。
このスコップに興味がおアリですか。雪かき用のスコップだけどね。
あはは。
「それは何~?」
「これですか?スコップって言うんです」
デジャブな気がしなくもないが、まぁそこは気にしないでおこう。どうせ、ゼウスとの会話だろう。
はぁ。懐かしく感じるなぁ。数日前のことなのに。
「すこっぷ……不思議な形だね!何が出来るの?」
これって、不思議な形なんだろうか。逆にこっちの世界の方が、不思議なことが多い気がするけどな。
キョトンとした顔で、グラゼル神は眺めている。
「何と、言われますと……」
何が出来るのかは把握出来ていない。把握出来ている使い方といえば、土は当たり前だけど掘れて、木は切れて、後は何なんだろうか。
わっかんねぇ。
あ、まだあったわ。モンスター倒せるわ。
多分ね。多分。
「色々あるのかぁ?」
人差し指を唇に当てて、お尻を突き出すようなポーズをとっている。
「はい!」
と言ったら、急にグラゼル神に指をさされた。
えー。びっくりだよ。
不意に指を刺されるのは、ビックリだ。
てかこの人、常識がなってないのか?さっきも、指を指されたしさ。
どうなってるのさ、この世界の上下関係は!!
「君」
「はい?」
怖いよ。なんか怖いよ。急に真面目な顔になるしさ。
どうしたんだよ。
「やっと笑ったよ」
「!?」
あれ?さっきから私笑ってなかったっけ?
いつもの癖が出ちゃったかな。言葉だけ笑って、顔は笑ってないって感じ。このせいで、会社では嫌われてたんだよね。愛想笑いも出来ないの?ってさ。
みんな酷いよ、って今なら思える。まぁ、その本人達には言えなかったんだけどね。そんな根性ないからさ。
「ほ、本当ですか。すいません」
両手で頬を覆う。
「謝ることじゃないよ。ここでは、いつもどうりやっていればいいんだよ。だって、いつもどうりをさらけ出せないってことは、やりにくいってことだよね?」
あぁ、確かに自分には向いてないかなって最初から気付いてた。
「そ、そうですね」
なんか納得させられるな。
「やりにくい場所に居たって、ストレス溜まって仕事が進まないだけ。だったら、辞めればいい。だから!」
「だから?」
オウム返しのように、私は繰り返した。
長い廊下に響き渡った。特に人がいないので、2人の呼吸が聞こえてきそうだ。
「……自分をさらけ出して、本当の自分を認めてもらって!それが認めてもらえないんだったら、認められるように完璧になればいいんだから!」
あぁ。本当の自分を押し殺すってことは、謙虚なんかじゃない。嫌われるのが怖かっただけなんだ。
「そうですね!そうですよね!分かりました!」
前の職場じゃ、満足できなかったけどパーティーを組んでオラゲーションに加入出来たらして、やれなかったことをやろう!
案外いいこと言うじゃん。グラゼル神。ダメ人間かと思ってたけどさ。人生経験豊富なんだろうなぁ~。
人生経験?遠回しに聞いてみよっかな。いしし。
「そんなこと言えるって、人生経験相当豊富なんですね」
「そうでも無いよ~?だって、このオラゲーションに特殊な人が多いから、心を開いて貰うのに努力して来たからかな」
やっぱり、って期待させてんじゃねぇ!
外見若いのに、歳は3桁とかよく小説であるじゃないか!見てみたかったよ!
少し期待しちゃったけど、前世とかの設定を引き継いでるんだね。
てか、私が3桁以上をこの世界で過ごすんだった。
改めて思ったけど、グラゼル神って努力家なんだな。
感心感心。上から目線ワロタ。
「ところで、この建物は?」
さっきから、くそ長い廊下での立ち話。誰一人通らない。
「むふ。そうだったね。ようこそ!我がハウスへ!」
と、両手を大きく広げる。まぁ、身長は小さいんだけど。存在感だけは、バリバリあるから。心配しないでくださいね、グラゼル神。
そして、何で我がハウスだなんて。
「あ、まだオラゲーションには加入してないんで」
あっさりと切り捨てる。
あら、私怖いわ。おほほほほ。
「あ、まぁ、そこはいつかは加入するんで」
そんなことは断じて言ってはない!
「いつかは、ね?」
謎の圧力を掛けておこう。
ついでに、身長縮め~。嫌がらせをしておこう。
私を無理やりオラゲーションに入れようとしたバツだ!
「は、入ってくれるよねぇ?」
さっきまですごいテンション高かったのに、急に自信なさげになったな。
感情がコロコロ変わるから、この人面白いな。
「んー。どうでしょうか」
「え、入るよ入る。君はきっと入るって」
「その自身はどこから…」
その自信が欲しいな。わけてくださいよ少しくらい。
パワーが欲しい。欲しいものばかりじゃないか。
ちょっとは、手に入れようっていう努力をしないと。グラゼル神は努力してたんだから。
「ここからだよ」
と言って、胸を2回叩く。
あ、違ったは。心の強さだったんだ。
私は弱い、ガラスのハートなのでじゃあ無理ですね。無謀な事だったんだ。
「まぁ、理想を現実に変えるのは大変だろうけどね」
おぉ~。確かにそうかもしれない。身と精神を削って手に入れられるものは、大きいんだろうけどな。
それだけ、簡単には変えられないんだ。
「理想を低めにするってのは……」
「そんなん理想じゃなくない?理想が低いんだったら、意外と簡単に変えられちゃうでしょ」
子供な割には、言うことは言うんだな。この人。
いろんな人から好かれるタイプなんだろうな。みんなの憧れみたいな感じ?
「理想を高く、かぁ……」
理想を高くして、生きていきたいと思います。
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