第3話 《クレル》使いすぎて説明役だったやつが…【中編】
つっても、することが無い。何をすればいいんだ。
思い出せ。生き残るためには何が必要になるんだ?
アニメとかでは、チート能力で何とかしてたし、こんな森の中の転生物は見たことないや。
やっぱ、小説最強。
んーとなると、栄養を採るための食料。
脱水症状にならないための水。ん、水?そうだな。
水が1番必要だ。
「《クレル》」
いつもなら直ぐに、怒りながらも来てくれるのに今回は、なかなか返答がない。
なので、どうしたのだろうかと少しだけ。ホーンの少しだけ心配してあげる。
すこしだけの心配。まぁ、居なくても街に出てなんとかすればいいんだけれどね。
あとのことを考えると、《クレル》は大事にした方が良さそうだしぃー。
何も知らない私に教えてくれる、唯一の存在だから。
なので、もう1回呼ぶ。
だって、いないと何も出来ないんだもん。
「《クレ》……」
「何度も呼ばんでも分かるわ…」
呼ぼうとしたのを遮った。でも、何故か凄く安心した。
なんでだろうなぁ。1人で知らないところに居るのがやっぱり、怖いのかもしれない。
そう考えると、少し緊張した。
「何用?」
「水がある所、ここら辺にある?」
冷たい態度に、少しだけ肩を落として伝える。
べっつにー寂しくなんかないし。居なくたって街に出れば、って思ったけど知り合いなんて一人も居ないや。
「あぁ、勿論あるよ」
冷たい態度の中にも、優しさが滲み出ている。
どーせ、なんだコイツとか思ってるんだろーけどな。
ふと思った。
女のままの体型なのだろうか。
そう思って、胸を手で包み込むように触る。てゆーか触らなくたってなんかあるなってのくらい分かる。
どうせ、男なんてここらにいないし……いや、居たわ。
《クレル》あんた、自称男だったね。ボクっ子だったね。
後に、水場を男に聞くのはどうなんだろうと考えた。
恋愛感情とか抱くんでしょうか。こんな状況での、唯一無二の男。
まぁ、男っていう確証がないからあれだけど。
男の振りをして、女とか居ますからね~。詐欺ですよ詐欺。ゲームあるある。
「私男ですよ」詐欺。
「どこにあるの?教えて」
いつもの、会社テンションに戻ってしまった。
私は、会社では命令する立場いにた。その癖で、敬語が使いにくい。
せっかくの異世界だぜ?
楽しもうじゃねぇか。うんうん。
「なんか、テンション低いね」
「そうかな。別にいつもと同じ風にしてるつもりだけど……」
あぁ。上手くいかないなぁ。
ため息をつきながら目線を下に落とすと、足元でくるくる回っているシル。はぁ~。癒しだわぁ。
「まぁ、いいや!右に突き進めー!」
私のテンションを上げてくれようとしたのか、《クレル》がテンション高めだった。
それに乗ってあげようではないかー!
私の優しさだぞー、《クレル》ー。
* * * *
滝がある、泉に着いた。
HPある訳ないのに、数値が見えるのは触れないでおこう。
そこには、青い鳥やら、鹿みたいな動物が沢山いた。
周りには、木が生い茂っていて食料となる物がありそうだ。
シルは私の足の後ろに隠れて、何故か怯えている。
それにしても良いところだなぁ。
「ここかぁ。よし、生活の糧になるから覚えておこう」
「おい。生活の拠点にするならステータス開け」
命令ですか。上等だオラ。自分で開きますよ。
てか、開く意味あるんすかね。
私よく分からなぁーい。
「マップが右上の方にあるだろ。そこ開いて、ピンを置け」
「まじで、ゲームみたいだ」
言われるがままに、マップを開きピンを置く。
「これで、マップを開けばここに案内されるからな」
「成程。便利だな」
と思ったと同時に、1つの事に気付いた。
これって、《クレル》を使わせないようにじゃないの?と。
嫌がらせしようと、私の悪魔が囁いたので嫌がらせをすることにした。
「はは!これで、俺の役目が減るな!」
やっぱりそうだったか、と思い聞いてない風に無視をする。
《クレル》を使わせないためだな。
まぁ、呼び過ぎるのも失礼だと思い程々にしておく。
エメラルドグリーンの泉。地面がスケスケに見える。
よし、決めた。入ろう。
私はスコップを岩に立てかけて、服を脱いだ(下着はさすがにきる)。
そして《クレル》に言った。
てか、言わなくても想像できますよね。
あ、でも私の中に存在してたら脱いでることも知らないか。
「ちょっと、一風呂行ってきます!」
「え、ちょ、くる、ま、待て!」
何動揺してんだよ、てめぇ。
男、男、詐欺なんだろ。
おーい、頭の中でブツブツ呟いてんじゃねーぞ。
うるせーよ。せっかくの水浴びだってのに。
てか、シルはどこに行ったんだ。
「シル~。おいでー」
すると、岩陰からひょっこりと出てきた。
またそれも、萌えポイントだ。
「クゥーン…」
鳴いた!鳴いたよ。可愛すぎるでしょ。
もしかして、水が怖いのかな。
無理に入れるのはストレスになっちゃうかもだから辞めておこう。
泉に足先を少し踏み入れると、水紋が出来た。
おぉ、と見ていると私は思った。
「私の容姿ってどうなってんの……」
呼びつけるか。
いや、さっきあまり呼ばないでおいてあげようって決めたじゃないか。
なんか、今思ったけどすごい迫力のある滝だな。
その滝は、100メートル上から流れ出て、霧がかっている。
てか、呼びつけなくても水に映るかな。
でもいいや。呼ぼう。
「《クレル》」
「なんなんだ!速く入ってこいよ!」
何を焦っているんだろうかと思いながらも、私は続ける。
「私の姿って今どうなってるのかわかる?」
「知らん」
即答だった。
まぁ、そうだろうなとは思った。
だって、私の中に《クレル》は存在していて《クレル》は単なる呪文なのだから。
それに、私の精神と結びついてそうだから、あまり引っ張り出さないようにしよう。何かあったら怖いし。
「やっぱりかー」
「だってボクは、貴方の中に存在しているんですからね。知るわけないでしょう」
その通りだと思いました~。
私は、しゃがみこんで水を眺める。
おやおや、分かるぞ~、映ってるぞー。
「白銀のショートカットォ!!私が望んでいる髪型ではないですかぁ!え、ゼウスありがとぉ」
私は嬉しすぎて、前かがみになる。
予想できるであろう。
「あっ、おちぃるぅぅ!!」
案の定、助けてくれる人などもいるわけなく、1人叫びながら泉にドボンした。
「あー、やっちゃったよー」
疑問に思っていたことを聞くチャンスだな。
怒られる覚悟で、読んでみる。
「《クレル》」
「あ゙あ゙!なんですか!何回も!ボクの言ってることわかってます!?いそがしい!おーけー?」
はいはーい。分かってますよーん。
疑問なことがあったら頼ってくれって、転生神ゼウスが言ってるんだから。
学校で習いませんでした?利用できるものは利用しろって。
あ、私だけなのかな~?特殊な学校だったしね。
「何故、泉にHPみたいな数値があるんでしょうか」
「あぁ!?んなもん分かるだろ!水の綺麗さだよ!知っとけや!じゃあ」
うん。ありがとうございました。
殴りたいです。
私は、拳を片手で作って凄く力を入れる。
そのまま、地団駄を踏みたかったけど水の中だったのでバタバタさせといた。
傍から見ると、大の大人が子供みたいに遊んでるように見えるだろう。
違う。断じて違いますからね。
私は、あのクソ案内人に怒っているんですよ!
あのクソめ。まじで殴ってやる。
私は頭を冷す(物理)ために頭を泉に突っ込んだ。
そのままの流れで、泳いだり、潜ったりした。
その後は、泉からでて乾くまで待って過ごしていたら、夕方になりつつあった。
太陽が傾いてきた。
これから何をしようか。次に大切なもの。
よーし、読んでやろう。
「《クレル》」
「はーい!何用ですかーい?」
高い声が耳に響く。
折角眠気が来てたのに、そのテンション、その声に起こされる。それにさっきのテンションどうしたんだよ。
私は、頬をふくらませる。誰にも見られていないけど。
「夜を越すには必要なものがありますねぇ。それはなんですか?」
いざとなると忘れてしまうこと。よくありますねぇ。
こんな時に、大事なことを忘れたくなかったけど。
テストとかで後ちょっとで思い出せそうなのに、思い出せないあの感じ。後で答え知ってスカッとする反面、イラッとする複雑な気持ちになるやつ。
「スコップの出番。到来だ」
「お~!やっと、スコップの出番ですか」
スコップを、岩に立てかけていたのを手に持ち替えて肩に乗せる。
シルは、さっきから私にべったり。
うん。癒しだね。
まさか、後にあんなことになるなんて思ってもいなかったけど今はどうでもいい。
「はーい。そのまま、前に進んでー。前進ぜんしーん」
「ぜんしーん!」
私は、前後に片手を振り行進をする。
行進するっていつぶりだろうか。中学生?高校生?
真面目にやってたのは、小学生だったな。中学生は周りに合わせてふざけてたけど。
「はい。ストーップ。はい。ここで構える~」
「いえっさー。《クレル》隊長」
あ、なんか楽しくなってきた。
そんな下りがなければ、あれには気づかなかったかもしれない。
「「木をきれー!!!」」
「「ムリぃーーー!!!」」
え、こんなスコップでこんなかってぇ木を切れるとでも思ってるんですか。
物は試しにとか言いますけど、これは次元が違いますからね。
「まぁ、物は試しに、ですよ。はい。やりましょう」
「い、いえっさー《クレル》!」
え、無理でしょうに、とか思いながらも半分エンチャント付属のスコップだから大丈夫でしょうとか思ってみたり。
「えええーーーい!」
ざくり。
爽快な感覚だった。
なんですか?これ。爽快です。
ハマりますよこれ、何度でも切れます。切り倒しますよ。
ここに拠点を立てるのだから!
切りまくれーーー!
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