第14話 そのチュートリアル。R12につき。


 僕の師匠は父さんほどじゃないが剣が得意だ。

 そして魔法は父さん以上に得意だ。

 その知識は父さんを遥かに凌ぐ。


 でも、師匠は整理整頓が……下手だ。


 どうやったら1日でこんなに散らかせるのか…ホント謎。


 まあ、でも、日頃世話になってるから、僕は家事手伝いを誠心誠意に……ん?洗濯カゴの中に……うわなんだコレっ!


「師匠!下着は自分で洗って下…!…っ」


「む。すまんな。……どうした?ジン。」

「いえ、……コレ…ココ、置いときますね。」

「うむ。ありがとう。」


 …なんとも間が悪い。


 僕が視線を向けると何故か、椅子に座った師匠が組んでた膝を組み替える瞬間…を、目撃してしまう…。


 …さっきから百発百中の確率で目撃してしまう。

 何故だ。何故なんだ。ハッキリ言って、目の毒だ。


 そもそも膝を組み替える云々の前に師匠は今、下着の上に大きめのYシャツ(誰のYシャツ?師匠が使うには微妙に大きいよねソレ?)しか着ていない。


 だから膝を組んで椅子に座るだけで…禁断であるはずの『デルタ地帯』がパンチラどころの騒ぎでなくマル見えなのだ。常にだ。 …というか、さっき洗濯カゴの中に見つけたあの下着…何なんだアレ。

 あんなエロいカタチ初めて見たぞ。ネット画像でも見たことないわ…恐るべしだなこの世界のエロ事情。


(…っていかんいかん。イカンですよ?親戚の伯母さんですよ彼女は?そんな目で伯母を見るのは世間的に誠に遺憾な感じでマジいかん。)


 ええもう必死ですよ。あんなもん思春期男子の視界に入れられちゃあ溜まったもんじゃないですよ。


 ああ駄目だ深く考えちゃ駄目だ。僕の身体よ反応しちゃ駄目だ。よし皿洗いだ。あそこなら背を向けられるし師匠は視界に入らない。


 カチゃカチゃ……


「好きなり。」


 ホヨヨん……って、はあ?師匠?


「む…もとい、『隙有り』だ。ジン。」



 …………



 くっ……後頭部にやわかいモノが二つ……つか柔らかい球状に後ろから頭が挟まれ……うわめっちゃいい匂い……


「あー〜……ちょと、師匠?」


 ……でも悔しいことに『流石』だと言わざるを得ない。僕が得意とするスキル【気配察知】と【危険察知】が全く反応しなかったのだから。


 あと称号の【異臭に囚われた者】にも。


 殺気を放つ人間からは異臭がする。『良からぬことを考えて緊張する者のニオイ』とでも言うか……それに、足音もしなかったし。相変わらずの達人だ。


「ふ。魔力の気配を消しされるのがお前だけだと思っているならそれは大間違いだと言っておこうか。音も立てず殺意やニオイすら消して背後から近づくような強者だっている。私も昔、里の忍に苦労したものだ。」


「勉強になります……が、師匠。一体いつまで密着してるんですか師匠?」


 僕は今12歳で身長は160と数cm程度。母さんはドワーフなので150に足らず、父さんは190を超える。どちらに似るのか心配だったが身長だけは父さん寄りに成長してるみたいだ。

 ……そして師匠が178…くらいか…いくらなんでも僕の後頭部を後ろから胸で挟むには…かなり無理な体勢を余儀なくされるはず。


 …よってこの状況、はなはだ不自然。


「む。いやな、違う香りの茶葉を楽しもうかとな。だが、…はて…どこに置いたのやら…ウーン。アレー。オカシーナー。」


 と師匠が言いながら僕の頭越しにシンク上の棚を物色し始めた。あ〜ちょっまじでコレ。マジヤバイから。師匠…っ。


 ふよふよプるプニュ


「いやちょ…師匠。マジで師匠……」


 柔らかくいい匂いがする胸で挟まれ揉みしだかれる僕の後頭部。いや揉みしだきたいんはコッチだから…じゃなくてめっちゃ我慢してるから!じゃなくてっ……〜あ〜もうっ!!


「ん?何だジン…ああ、洗い物の邪魔してスマンな。しかし暫し待て。もう少しだもう少しで見つけられそうなんだ新たな境地が…じゃなく茶葉が。」 


 グニュグニュ…


「つか師匠……あの…僕が…どきましょうか?僕がいると邪魔で探しにくいでしょ……」「……っあ……!ああ……ゴホンいや待てもう少しで…!」「いや師匠マジ師匠!僕が師匠どきます師匠!このままだとマジ大変なことに…師匠!いやマジ大変です!ええ、勿論師匠の方がですね……っ!」


 ブルングニュプニュプル!「う……っ」ブるるる……


(師匠?痙攣してるようですがどうしました師匠?)


 僕の方はもう色々限界な感じなんですが?


 …師匠?


「………邪魔してすまなかったな。無事上り詰めゲフゲフンっ……見つかった。ん?茶葉だ。そう私は茶葉を探しに来て今見つけたのである。早速たしなんでみるかと考える。うむそれがいいそうしよう。」


 何だかツヤツヤとしてスッキリしたような。

 なのに熱情が反転して在る虚しさを見つめてるような。

 

 そんな、見ててモヤモヤとせずにはいられない雰囲気を醸しながら師匠は茶を用意すべく僕の視界から消えていった。そそくさと。


 …………うん。だから深く考えるな僕。さっさと掃除終わらして魔法の特訓しなきゃ………よし。皿洗い完了。あとはシンク周りを掃除して……よしこれも完了。そしたらあとは…そうだ、洗った食器を乾拭きして食器棚に片付けよう。そのあと床を拭いて……


「む。ジン。」


「…………なんですか…師匠」


「茶をこぼしてしまった。拭いてくれ。」


(ハイハイ…全く次から次へと)


 ……とテーブル用の布巾を手に取ろうとしたら


「いやそれじゃなく。」と、制止の声をかけられた。


「タオルだな。それで拭いて欲しい。」


 僕としてはせっかく洗濯が終わったばかりなので、タオルを汚すのはマジで避けたい。なので「何故?」と振り返ると


「……………………師匠…」


「む。どうした。ジン。」


 僕の視線の先には


 幸いにももう冷めてしまっていたのであろうお茶で、盛大に濡らしたYシャツを、ピタあっ……と身体に張り付かせた師匠が…いた。


「さあ、早く拭いてくれ。」


 言いながら師匠はやたら優雅な動きでやたらゆっくりと膝を組み替える。それが…なんとも……たまらなく……いや、はやく、拭かなきゃ…


「……師匠……」


 師匠の美脚に絡んだ無数の雫。

 そのそれぞれが思い思いの速度で腿と膝を経由し脛へ。

 美しい曲線を弄ぶ老獪なテクニックを、まるで僕に見せつけるかのようにして、ツツと卑猥に這い伝って、爪先から


  …………ぽたり


    ジワ…


     床の上で滲む茶の雫。


「……何だ…ジン……」


 そんな様子が外の光に照らされ…妖しくテラついて……

 これは師匠の魔性なる美肌が茶の雫すらも糧であると吸収し、『美の成分』へと変換しているのではと、僕は本気で疑ってしまった。

 動かせばヌラリと音がしそうな程、幻想的光沢を増した肌が、僕にそう思わせてしまうのだ。



「し、師匠………」





「なんだ………」












「………………………………」








「…………………………………………………」









「…………………………………師匠……」








「………だから…………なんだ、ジン。」










































「いや師匠いい加減にして下さい。」


 

「む。スマン。調子に乗った。」



「グッ……素直!」




 本っっ当、やりにくいなこの人はッ!


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転生ライフオンライン〜ネタ枠種族の『ハードエルフ』はチュートリアルからハードモード。 末廣刈富士一 @yatutaka

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