転生ライフオンライン〜ネタ枠種族の『ハードエルフ』はチュートリアルからハードモード。

第12話 ある〜日♪チュートリアルのなっか♫狼さんをっ♪強敵と書いて『とも』と読んでみるのだったあっ！

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　………称号、ヤバイです。

　…そん中でも特にヤバイのは…なんと言ってもアレだ。

（【禁忌に触れた者】。この称号を取得してから流れがおかしく……）

　いや、違うな。やっぱアレだ。

「ハードエルフ……」

（性能的に尖りすぎだろこの種族……。）

　つか運営！ハードエルフの調整おかしすぎだろコラ運営い！！【禁忌に触れた者】の〘条件〙にあるけど、『卑劣漢である…』？…………なんだコレ失敬なっ！

　つか、『裏技』使ってなきゃ確実に死んでたからね『あの時』は！？文句言うなら最初からそんな種族を設定に入れるなよ…っ！

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（………………当然だけど返事はなし、か）

『……マスター……ガンバですっ!』

（軽いなFスキルさん？あとその言い草ねっ！）

『くっ…間違えましたか。』

（うんキャラじゃないっ）

　……いや、丁度いいや教えてもらおうこの際…あの、『─Fスキル“業”シリーズ─』ってどんだけヤバいの？

『あー………。』

　………………ん。

『えー……………。』

　………………………んん？

『…………………………………。』

　………はいダンマリ。

　でもFスキルさんそれ、答えてるようなもんだからね？

『　え〜〜っと…　』

「うわ〜………ヤバイなヤバいよー。“業”シリーズやり過ごしたいよー。VR系小説の主人公みたく『極振り』とか『魔改造』とか『隠れクエスト独り占め』とか『ゲーム内通貨ゲスい方法で荒稼ぎ』とかとか『外道系出し抜きプレイ』しまくる奔放さを何でか好きになってくれる美少女プレイヤーに囲まれつつ『ド天然孤高プレイ』を突き進みたかった…ただそれだけなのにー！！（泣）」

『うわー〜……（引）……あ！…マスター！後ろでいつものお友達が待ってますよ？』

（Fスキルさん今誤魔化したでしょ……）

　どんどん質（たち）悪くなってくなこの人。まあ人のこと言えない気するけども。つか人じゃないんだけども。スキルなんだけども。……と脳内で散々悪態をついて一応気が済んだので後ろへと振り返る。

　そして行儀よく待っててくれた『顔馴染み』に、ご挨拶。

「よ。迎え“狼”くん。待たせたな。」

「ガグルルルルルゥゥゥゥ……」

　そこには人間の大人程もある体躯の、大狼がいた。

　めっちゃ上げております唸り声。

　ウン。顔馴染みなんだけどねコイツ。

　会えばいつも臨戦態勢なんだよねコイツ。

　この森で出会って、戦って、負かした。その後見逃した。

　でも彼にしてみれば負けたことより『生かされたこと』の方がよっぽど、プライドを傷付けられたと感じたらしい。

　それからだ。意地になって毎日毎日挑んでくる。

　律儀にも僕に合わせて『レベルを上げずに』だ。

　魔物のくせして、妙に正々堂々としたやつだ。

　でも野生の世界でそれをするのはかなりキツイはず。

　なのに、しぶとく生き残ってる。痩せ我慢しながら。

　命も誇りも…全部を賭けて僕を殺しに来てる…

　でもなんと言うか…とてつもなく、健気だ。そう感じてしまった。

　この世界の生き物は、殺した相手から得た魔素をステータスレベルやスキルレベルの経験値に変換して自らを強化する。その経験値は倒した者が総取りするシステムだ。

　だから魔物といえど野生生物ならば、食べるため、強くなるため、生き残るため『自ら獲物を狩り、レベルアップをする』という行為は必須。

　でもそれをせずに、こうやってレベルも上げず餓死もせずにいられるのはきっと…コイツが低レベルのまま群れのボスという稀有な存在だからだ。

　つまり、自ら狩りをすることを自（・）制（・）して仲間たちに餌を貢がせてるんだろうけど……それは決して楽なことでは無かったはず。

　野生生物が本能に逆らうという行為が、どれ程のストレスであることか。

　群れの中で自分だけが低レベルのまま、ボスの座を狙う台頭勢力を力ずくで抑え込まなければならない。その上で群れを治め守っていかなければならない。

　それにプライドの高いコイツにとって『食わしてもらう』なんてことは相当な屈辱であったはず……

　その上で執着せずにいられぬ相手が経験値的に全く美味しくもない、レベル2。僕だ。……随分な執念深さである。

　だけど、それほどに僕との勝負に賭けて来てるんだコイツは。スゴイ矜持だ。これぞ生粋の強者。正直憧れる。

「まったく毎日毎日凝りもせず……ホント、プライドの塊みたいな奴だよなぁお前……全く、光栄なことだよこんな僕にさ…」

　そう、光栄なことだ。コイツは魔物だけど、尊敬出来るヤツだから。

　こんなヤツにこんな風に雄（オス）として認めてもらえるのは、こんな僕にとっては光栄の至りとする所だ。それはもう、泣けるくらいに。

　実のところ、僕が師匠の家に行くには、この道は少し遠回りになる。でも毎日この道を使って通ってる。

　この狼に会うためだ。いつの間にやら僕にとってもこの勝負は『特別』となってしまった。

　これから始まるのは、普通の日課とは明らかに違う。

　毎日のことなんだけど、これは命懸けの勝負だからね。

　まあ、例え死んでも僕の場合はゲームオーバーになるだけなんだけど……いや、ゲームだけどもう、遊びじゃない『たかが』なんて言えない。

　だから戦いを始める前には、毎回このゲームに感謝することにしてる。いつもなんやかんやと文句言ってる分、フォローも兼ねて。

　何故感謝かと言うとこんな素敵な関係、リアルでは知らないで生きてきたんだよね。僕。

　こんな濃密な人間関係（？）築いてこなかった。

　もしイジメられても挫折せず、引きこもらなかったとしても、僕はきっと深く考えずただただスルースキルを磨いて生きていったんじゃないだろうか。

　息の詰まる現代社会では、（通用するかどうかは別として）それが悪いことだとは思わない。

　でもコイツを前にすると、そんなことを考える僕が何故か恥ずかしく思えてしょうがない。

（……これがライバルってもんなんだろうか。）

　好敵手と書いて、ライバルと呼ぶアレ……改めて言うとこれも恥ずかしい。でもこっちは……そうだな。胸が熱くなる照れくささだ。なんと清々しい恥なんだろう。

　ゲームだと解ってはいても、どれもこれも未体験だった感情なんだ。だから……僕だって判る。たとえゲームの中のことだとしても、これは貴重な経験なんだと。だから感謝だってする。

「そうだな。お前はライバルだ。僕の。だから、誰にも渡さない……」

　だから、手は抜かない。抜けない。

　だから、全身全霊をもって相手をする。

　つまり、本気出す。

　コイツにだけは誤魔化しなしだ。

　フツフツと、汗が吹き出す。

　グラグラと、血を滾らせる。

　ミリミリと、筋をたわませ、

　ギシギシと、骨を軋ませ……

　メラメラ。メラメラ……火種を心の炉心に近付ける。

　同時に満を持してと鞘から剣を、スラと抜く。

　コイツと戦う時にしか、晒さない刃（やいば）。

　僕の愛剣。

　銘はない……でも母さんの良作だ。

　さあ、僕よ準備は整った。

　あとは……そう。メラメラ……

　心燃やせ、轟と燃やせ……

　　　　いけ！

　着　「来いよ」　火ッ　

　「ガアッッ！！！」

　〈〈〈〈轟ッッ！〉〉〉〉

　大気を割いて激突する。

　命が。命と。

　交差する。

　力と力が。

　技と技が。

　混じり合う。

　研ぎ澄まされた刃と牙が。

　タガを外した知性と野生が。

　煮えたぎった人血と獣血が。

　跳ね踊る心と心が。

　純度極めた魂と魂が。

　闘って争って、戯れて…

　互いの全存在。

　絡み合う。

　輪舞曲（ロンド）を踊る………

　ゴブリン編での軽いノリは何処へやら。

　僕ら一人と一匹を発生源とした……質量すら伴いそうなこの、濃くて粘くて透き通った……戦いへの情と熱。

　　この森を席巻し、

　　　　　震わせた。

　　　　　　　　広く。

　　　（アハ……まさかね。）

　あ（・）の（・）僕が今、

　　　　楽しんでるって言うんだから不思議だ。

　　　………『戦う』ことを。

　　　　　　………『生きる』ことを。