第11話 チュートリアルから称号がてんこ盛りなんですけど。



 【称号】とは…とった行動によって、何らかのメリットやデメリット…もしくはその両方の『効果』を世界から付与されるシステムだ。


 その『効果』はだいたいが永続的。


 そして何の行動がトリガーになって、どんな効果が付与されるのか全く予想がつかないという割と恐怖なシステムであったりもする。


 時々この世界がゲーム世界だということを忘れそうになる僕。そんな僕を現実に引き戻してくれる……これはそんな、『ゲームらしいゲーム要素』ではあるんだけどね。


 なんだけど…、、、僕が授かった称号は数もそうなんだけど、どれも内容がヤバイ。





【不都合な存在】

〘条件〙…忌み子として生まれる。

〘効果〙…とにかく嫌われやすい。しかしそれでも絆を得たならば、通常よりも強く固くその絆は結ばれる。


【魔剣使いの息子】

〘条件〙…呪われし魔剣使役者の息子として生まれる。

〘効果〙…魔剣との相性が良くなる。その代わり、不運に付き纏われ、聖剣、神剣に嫌われる。


【魔剣鍛冶師の息子】

〘条件〙…呪われし魔剣鍛冶師の息子として生まれる。

〘効果〙…魔剣との相性が良くなる。その代わり、不運に付き纏われ、聖剣、神剣に嫌われる。


【狂戦士の息子】

〘条件〙…呪われし狂戦士の息子として生まれる。

〘効果〙…狂戦士化に親和性を得る。よって狂化デメリットは緩和される。敵が付与するバッドステータス『混乱』や『狂戦士化』も跳ね返しやすくなる。その代わり、不運には付き纏われる。


【不屈の生還者】

〘条件〙…絶体絶命の窮地から生還した。

〘効果〙…死ににくくなるが、その代わり、不運に付き纏われる。


【禁忌に触れた者】

〘条件〙…世界の理の裏を突く卑劣漢である。

〘効果〙…Fスキル覚醒時、“業シリーズ”の取得確率増大。


【スキルコレクター】

〘条件〙…レベル4以下でスキルを6以上取得。

〘効果〙…敵を倒し、魔素を取り込む際、レベル経験値への変換率が下降する。その代わり、スキル経験値への変換率が増大。つまりは『レベルが上がりにくくなる代わりにスキルを取得しやすく、成長させやすくなる。』


【殺さずの破戒者】

〘条件〙…絶対敵性の存在を『殺さずに戦闘不能にする』という経験が膨大数有る。

〘効果〙…エンカウント率増大。その代わり、絶対敵性であるはずの存在と友誼を結ぶことが稀にだが、ある。その条件は極めて限底的。


【異臭に囚われた者】

〘条件〙…異臭に長時間さらされてきた。

〘効果〙…周囲で発生した異臭にのみ嗅覚が鋭敏に働き、気付きやすくなり、その異臭の意味を知り、その異臭の扱いに精通するようになる。異臭のスペシャリスト。その代わり、異臭漂わす状況に陥りやすいという不遇にさらされる。


【皮肉なる魔力学師】

〘条件〙…魔力の具現化をすることもなしに、魔力の深淵を知るという稀有な体験をしたことがある。

〘効果〙…魔力の本質に通じやすくなる。その過程では魔力運用に精通することになるだろう。その代わり、『人外化』しやすくなる危険も。


【特異種候補の的】

〘条件〙…将来特異種に成り得るほどの『生来の強者』につけ狙われたことがある。

〘効果〙…強者なる敵に遭遇しやすくなる。しかも付け狙われる。その代わり、格上の敵を倒す際に得る、ただでさえ莫大な経験値が増加する。


【森の人気者】

〘条件〙…複数種類の森の生物に好かれる。

〘効果〙…森の命に慕われ、その恩恵を得やすい。その代わり、町単位以上だと人に嫌われ、トラブルに巻き込まれやすい。


【村の人気者】

〘条件〙…住んでいる村の住人の大多数から好かれる、もしくは敬われる、もしくは畏怖される。

〘効果〙…村単位の自治体で歓待されやすくなる。その代わり、町単位以上だと人に嫌われ、トラブルに巻き込まれやすい。


【狼王候補】

〘条件〙…狼の群れの有力者から王候補として目される。

〘効果〙…狼系の魔物ならばステータス閲覧可能(制限有り)狼に対する威圧効果上昇。狼に好かれやすく、好かれれば意思の疎通が可能になる。その代わり、水棲系の魔物に嫌われる。


【ゴブリンキング亜種】

〘条件〙…ゴブリン王になり得る群れの最強者から王とし崇拝される。この称号の所持者がゴブリンではないため亜種と分類されている。

〘効果〙…ゴブリンやオーガ、トロルなどの『鬼属』の魔物ならばステータス閲覧可能(全て閲覧可能)。鬼属に対する威圧効果上昇。ゴブリンに好かれやすく、好かれれば意思の疎通が可能になる。ゴブリンの尊敬を集めやすく、尊敬されれば命令もできる。鬼属の魔物に対する攻撃力が増大し───


───てこれだなきっと。


「やっぱ、僕のせいか…」


 ゴブちゃんがゴブリンキングになれない原因……それは僕にあった。


 本当はゴブリンキングに成る筈だったゴブちゃん……そんな彼だったが、優しすぎた。優しさが高じて僕と通じ合ってしまった。通じ合った僕を慕ってしまったばっかりに……。


「ゴブちゃん……」


(ゴブちゃん僕……この森の『ゴブリン王』になってんだけど…それでいいのかい?ゴブちゃん………)


 ………………………


 ………………


 ……いや、


 いやいやいやそうじゃない。


 ゴブちゃんには悪いんだけどそうじゃない。


 もはや霞んじゃうよ『ゴブリン王』。


 他の称号が不穏過ぎるんだよっ!


「何なのこのラインナップ…?」



 【不都合な存在】はもう……この種族選んだ自分の自業自得だし。まあ、『しょうがないか』と諦めもつく。


 でも……この、【〜の息子】シリーズ?コレはどうなのよ父さんに母さん。なんだか二人の黒歴史を垣間見た気がしてしょうがないんだけど。



(ホントにもう……恨むからね。チョットは)



 あとは……うーん。面倒だし、総括するけど……



  とりあえずメリットから。



 仲良くなった相手とは通常以上に絆が深くなる……か。


(これってツンデレ属性ってこと?いやいやいやそんな高度なロールプレイ僕には出来ないよ)


 引くほど嫌われ体質らしんだけど、例外として村人と、森の生き物と、ゴブリンと、狼……それと魔剣(?)には好かれやすくなってる。


(ゴブリンに至っては命令までできちゃう?)


 その流れでゴブリンとかの鬼属とか狼系の魔物とは有利に戦えて……つか、絶対敵性の存在と友誼……って…魔物のことか?魔物を仲間にしやすくなるってこと…?もしそうならそれって凄くないか?制限とかあるみたいだけど。それでも魔王プレイが成立しちゃいそうなんですが。群れのリーダーとか仲間にしたりして間接的にその群れを支配したりね。


(……これってどうなんですか運営さん)


 異臭に気付きやすくてその扱いも慣れたもの…てこれ、メリットか?デメリット……だと思うんだけど。


( …まあ、プラス思考でなんとか使いこなしてみるしかない、か)


 基本能力とスキルに関しては目覚めやすくて育てやすい上、魔力運用にも長け、死ににくい……という小チート持ち。


(うん。これは悪くない)


 だから死にかけてもしぶとく生き残るし、狂戦士化した時は(しないけどね)デメリットか軽減されてる。


(……だからしないけどね。狂戦士化は。)





 ………これら、メリット以上に気になるのは……


 そう。デメリットだ。


 ……『とにかく嫌われやすい』て。表現に容赦がない。つまりは、ヤバイだろ。コレ。


(うわー冒険したい僕としては派手にツライよ。行く先々で嫌われまくるとかハードモード過ぎるよっ。)


 そんでやたらと『不運に付き纏われ』て……


(おいおいコレもヤバイって!嫌われて誰も助けてくれず更なる追い打ちで不運が重なる!?『不遇属性自重ナシ』が待ったなしだよ『泣きっ面に蜂オブザイヤー』破竹の勢いで連覇しちゃいそうだよっ!!)


 …そんで都会の人には特に嫌われるのか。田舎者だからってこと?


(村人舐めんなや都会人っ!)


 聖剣とか神剣にも特に嫌われるのか…


(いや、剣に好かれるとか嫌われるとかピンと来ないからっ。)


 あと水棲系魔物にも凄く嫌われるのか……尻子玉防衛にも十分な注意を払わなきゃダメってことか。


(なんとなくだけど男子的にこれが一番ヤバイ気がするな…………尻子玉って、何だ?)


 ……いや嫌われてばっかだなオイィィイイイ!


 この『嫌われ』と『不運』って効果がやたら目に付くぞ?

 随分似たような内容の称号がしかもたくさんあるんだが?

 もしかして称号って効果重複しちゃったり、するの?


 もしそうならメリットと全く釣り合ってないぞコレっっ!!


 絶望的にヤバイだろうコレ(泣)!?


 …エンカウント(魔物との遭遇)が増えて、その魔物の中には(いや、これもしかして魔物に限定されないのか?)ゴロゴロ強いのが混ざってきて、しかもそつらには付け狙われて…って大丈夫か?これもガチでヤバイぞ?

 つかコレ要するに『付け狙われるほど嫌われてしまう。不運なことに。』って解釈もイケるクチだよねコレ?


(また重複ですか!?どんだけ重ねがけするつもりですかこの呪い!?)


 独り立ちして上京すればトラブルに巻き込まれやすいし、そんなひどい環境なのにレベルまで上がりにくい…これも…まあ、のちのちに響くヤバさなんだけど…


(執拗にボコりにくる『嫌われ不運体質』を前にするとなんかもう…可愛く思えてきてしまう…という不思議。)


 異臭に晒されてどうのこうのってのもそうだよな。こんなのも可愛いモンだ…いや、これもヤバイか。


(麻痺しちゃ駄目だ騙されるな僕!想像したらヤバイよそんな状況嫌すぎるっ!)


 …つかさ、妙に存在感を放つこの『人外化』とかさ…何だろね?それっていい意味で?例えば『人外の強さ!』とかさ。…それとも悪い意…


(ああ聞くまでもなかったですね。きっと悪い意味なんでしょうね。どんな状態なのかどうやって回避すりゃいいのか共に不明なとこがまたヤバイですねっ。)


「あーもー。ハイハイ。ヤバイヤバイ。あーっはっはっはっはっ。」


『(もうヤケクソなんですね…マスター。……不憫な。)』


 ん?なんか言いました?Fスキルさんっ


『いいえ。何も言っておりません何も考えておりません。』


 ……!……


 ああそうだ…思い出したわ…

 Fスキルさん関連で、あったよね。

 これら『ヤバすぎるデメリット』の集大成みたいなのが。


『えーーー?(飛び火ですか?)』


 このチュートリアルが終わる時…つまりはFスキルさんが覚醒した時には『“業”シリーズ』とかいう……なんだか見るからにヤバそうなスキル……に大当たりする可能性が、『大』………とかゆー、アレ。


『あー……アレ。……ですか。ふむ。……どのアレでしたっけ。』


(あのFスキルさんが言い淀んでる?…まさか、あのFスキルさんが…僕を気遣ってる?…いやそんな馬鹿な!………これは………僕の本能が叫んでるぞ?『“業”シリーズ…コレはマジでヤバ過ぎるやつなんだ!きっとそうだ!』って!!)


『…それって酷くないですかマスター?』


あああもおおお!やっぱ駄目だヤバイヤバイヤバイって!………いやホント。マジでコレ…



「はあぁ…(溜息)」


 

  …えらいことなっとるがな。




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