転生ライフオンライン〜ネタ枠種族の『ハードエルフ』はチュートリアルからハードモード。
末廣刈富士一
プロローグ。
今ゲームをプレイ中だ。
ずーーーーっっっと、ぶっ通しで。
一体何時間プレイしてんのかって?
いやいや。それ、単位か違うから。体感時間は………………2年……くらい?
【ゲームは一日2時間まで】
そんな遊戯基準法、とっくの昔にブッチギってる。
【遊戯基準法……?そんな法律ないよね?】
はいはい。……それはそうとさ……まだ序盤なんだよコレ。最序盤。
いや、
まだ、始まってすらないのか……なんせまだ──
【……
いやさっきからうるさいよ“バッド”。
それ今僕が言おうとしてたやつ。
【そう?……ゴメン。】 ……まったく。
そのチュートリアルが曲者過ぎる……この薄汚れてて古キズだらけな身体も、自分で好き好んで設定したわけじゃない。
装備もなし。フンドシ?みたいなのは履いてるけどね。ほぼ裸。凄いですね。初期装備、ゼロ。
え?ふんどし?これ装備含まれません。遠足のバナナと同じ。アレお菓子含まれないから。…いやでも待てよ?僕の大事なバナナ守ってる…そう思えばこのふんどしもあながち…いや話逸れた。大分逸れた。つか 初っ端からシモすぎた。
話戻します。
今私は、広い円形の砂地にいまーす。
所々紅く染まってる円形の砂地でーす。
砂地だけど、足場はそんなに悪くない。足が砂に取られることはなさそうだ。砂地なのはほんの表面だけだコレ。
砂のすぐ下には硬い地面………うーーーん。この硬さ。叩きつけられでもしたらヤバそう。命的に。
【……安易に“スキップ機能”使うから状況把握に戸惑う事になるんだよ……『スキップが強制解除された意味』…判ってるよね?つまり『死の危険迫ってるなう。』………だからほら、早く集中しなきゃ。……死ぬよ?】
うるさいな……
「あー……ちと待って」
僕も混乱してるのさ……はい。落ち着いた。
「はは…スキルって便利…」
砂部分浅いので埋まってるのは少しだけ。
両足の足裏の少しと指が砂に埋まってる感じでーす。
そんで、あー。なんか、足裏、チクチクしまーす。……んー?砂ん中、なんか…白いのが混ざってるな。これは…爪かー。そしてこれは…歯だね。
はあーー。ホント嫌んなるリアルさだなこのゲーム。
…ていうか、たまたま踏んだ場所に見つけちゃうんだからこの“白い色々”、地面に万遍なく埋もれてる感じなのかな?
「どれどれ……」と足裏で砂地をまさぐってみる。
…痛ツ……ってなんか刺さっ…あー、このゲームってさ。
耐性スキル生やさなきゃ問答無用で痛覚そのまんまってゆー鬼畜仕様でさ。
しかもちょっとスキル育てたぐらいじゃ無痛にはほど遠いってゆーホント厄介な……てまた話逸れた。
…一体なにが刺さったんだ?これ…………これ骨っぽい。いやこれ骨だ。多分。どの部位の骨なのか
「……いあいあ、考えまい……っ」
つかこの時点でお察しだねっ。プンプン薫るは死の匂い。その死の匂いは地面以外からも薫ります。
僕が立つ円形の砂地。
その周囲は壁がそびえ立ってて逃げ場無し。その壁の向こう側には観客席。上からこちらを見下ろせるようにと壁沿いにすり鉢状になった観客席。その観客席を埋め尽くす人々はと言えば民度、最底辺。どの顔も
「エグい。」
思ってることを隠そうともしない。残酷なショーに期待する顔。血みどろの戦いに胸踊らす顔。忌避感を覚えつつも怖いもの見たさに軍配が上がった顔。どれも一律に残酷な顔だ。
どの顔も、安全圏から凄惨な死を覗く魅力に取り憑かれてる。どの顔も、僕の死を望んでいるように見える。
被害妄想?……いやいや、こんなとこに立ったら誰だって人間不信になるだろ。
【全く…一体いつまでウダウダと……って…あっ!】
?なんだどうし……イテッ頭痛……?
【あー……ゴメン忘れてたわw『強制インストール』今、終了。情報の補完、今、完了。……えっと……どう?…目、覚めた?状況確認…出来る?ジン。】
……おいおいお前な〜…インストールすんの忘れてたんだろ…って…あー〜…うん。分かった……ここがどこなんだかも。
ここは闘技場です。いわゆるコロシアム的な建物の中。「どーりで…」と、僕は足元の『白達』をもう一度見るのであった。
ドーム地下ではない。屋根はない。青空のもと繰り広げられるのは死闘。ここはそれを見て、賭けて、楽しむ場所だ。
勿論僕が今立ってるこの砂地は観客席のような安全地帯ではない。ここは試合場?いやここは死合場。
「とにかく、死地の方だね♪」
【……さっきから誰に実況してるの?僕に……じゃないみたいだけど。】
うるさいな。そこはツッこんじゃダメなトコだから。それより、
「…なあ“バッド”……僕はこれから戦うわけかい?」
【……そうだけど?つかこの状況ね。インストール無しでも見りゃわかる系でしょどう見ても】
だからうるさいよ。つか、さっきの怠慢無かったことにしてないか?ならないからな。
「それに、“バッド”はイチイチ一言多いんだよ…」
ホントうるさい。…ってうるさいと言えば周りもうるさいなっ
この巨大な闘技場を震わせる歓声に紛れてしまってよく聞こえないけど熱っぽいアナウンスが叫ばれてる。
《今、極限の戦いがどーの!こーの!》と……
…うん。やっぱり僕戦うのね…つか殺し合いをするらしい。
今から。
【……さっきからほんとに……もういい加減戻ってきなよ。……じゃなきゃ本当に死ぬよ?】
くっコイツ…やっぱり無かったことにしてやがる。 いや、落ち着け僕。…とりあえず“バッド”は無視しとこう。
…まあ、こんな急展開も?ゲームならあって当然だと思ってみたり。『コレ所詮のゲームだからー。』とか……なるべく深く考えすぎないように……してきたけど……
ぬああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーもう!
【うっわ!……何々!?急に一体どうしたの?】
めっちゃ縮み上がるって!くそうっ!
【??……縮み上がる?何が?】
“ナニ”がだよっ!
【………?……“ナニ”?……ああ。】
…縮み上がり具合までこう、リアルに再現されててコレ……
「いやホントにコレ……」
とフンドシの上から“ナニ”の位置を直しとく。あくまでさり気なくだ。
「……………………………本当に。」
本当に、ゲームなのかなコレ?
【……それ、根本的今更。………ねぇ……どうなのジン?もう限界?言っとくけど今の状況打開しなきゃスキップももう出来ないよ?つまり逃避は不可。…というか、もしかしてリセット…つまり、死にたくなったり、してる?】
僕はこの、いわゆるヴァーチャルリアリティなゲームに潜ってから今までを振り返る。体感にして数年間(笑)……の間に起こった全てをだ。
【あれ?ホントに無視しちゃうんだ?】
(本編じゃなかったんだよなーアレ。……チュートリアルだったんだよなーアレ。)
振り返る程、混乱は増す。その『今まで』に起こった色々があまりに鮮烈過ぎた。リアル過ぎた。その鮮烈なるリアリティにどうにも抗えず、今や感情移入しまくってる自分がいる。
『現実世界の自分の方が、実は非現実であったのでは?』と思わず勘繰ってしまいそうになる。そんなレベルだ。
さっきも言ったけど。
勿論『これはゲームなんだから』と自分を言い聞かせてきたよ!何度も!だけど結局、無理!怖いもんは怖い!
【たかがゲームでしょ?怖いと想うから怖いんだよ】
…とか言う奴が今現れたら……うん。間違いなしでそいつに抱けるね。殺意。
【う。ゴメン。】
闘技場なんて場にいきなり放り込まれて、『さあ戦え』とか。そんな身勝手言われて実際立ってみたら解るって!逃げ場無し感、物凄いから!
知らないままでいたかったよこの高純度恐怖…それに拍車掛けるのは無尽に湧き上がる不安と不信…それら極度の動揺が原因で視界はグラグラ定まらない。
その定まらないままの視線を、這わしていく。自分の右肩から先へ。そして………………………………アレアレ?ハイ途切れてる。終了〜。…え?右腕?……無いですけど、何か?
………………
……ハイ不遇上乗せ。ボク 隻腕。ナニこの不遇MAX(爆)
あれか?『ハードエルフ』なんて種族選んだのがそもそもの間違いだったのか?だからチュートリアルからこんなにも『ハードモード』なのか?ナニその不出来な駄洒落っ(号)
普通チュートリアルの過程で右腕欠損とか無いでしょ!?これVRゲームだよ?しかも痛覚フルオンな鬼畜仕様だからめっっちゃくちゃ痛かったよ!?僕未成年者だよ!?倫理的に法的にそれってアリなの?ナシでしょっ!非道いや!!訴えてやるからな! 運営!!
「 ちくしょうっ!!! 」
【……しょうがないよ。諦めな。君は僕と……出会ってしまった。】
……。………はあ(ため息)…それでもまだ序の口な気がする待った無しで。
【え!?……今のセリフも無視されちゃうわけ!?凄い恥ずかしんですけど!?】
だってもっかいゆーけど!まだ始まってないんだものこのゲーム!これってまだチュートリアルだよチュートリアル!じゃあ本編はどうなんだって話っ!
先行き不安は天元突破だよ!理不尽さ無限大!!ウガー!
…ハイそんな予感は即効で当たる。今、僕はこの円形闘技死合場の中で、端の方に立っているわけだ。ここは入場口から放り出されてすぐの場所。
【……完全に無視??うう。……分かった。……少し静かにしてるよ……】
その入場口の幅の広さと天井の高さに大いに違和感を感じたものだが、次の瞬間、その違和感は無くなった。
反対側の端。もう一つの巨大入場口。僕の対戦相手が出てくるだろう入場口。こちらの入場口と大きさを同じくする入場口。それを塞いでいた鉄格子が───上がった。
ガラガラと、不吉な音を立てて。その開いた入場口からは、
大勢の、やたら屈強そうな…………
大男達。
……に
引かれて来ました。やたら太い鉄の格子で覆われた巨大な…
…箱型の檻が。ナニあれ。
「おいおいおいおいおいおい………」
ナニがいるんだあの檻の中。
「うーーん……」軽く目眩。
「駄目だコリゃ!悪い予感しかしないよもうっ!」
まさかの後半に続く!
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