君が記憶になっても
@aqly
第1話 出会う
僕は大学生になった。
高校の時、友達が出来ずにいた僕は大学デビューというものがとても魅力的に感じていた。
『これから、友達を沢山作ってやる! 』なんてことを考えながら電車に揺られていた。
無表情なままスマホをいじる人、突然泣きわめく子供、死んだ顔のサラリーマン。田舎で育った僕には見慣れない景色だ。都会のカオスな電車内に耐えられなくなり、ヘッドホンを着ける。大好きなアニメソングを聴きながら電車に揺れる。最寄り駅に着くと人が溢れかえっている。僕は楽しみと緊張を抱えながら大きなキャンパスに向かっていった。入学式だ。
入学式が行われるホールに着くとそこには赤やら青やら紫などの派手な髪の同級生がたくさんいた。この時点で大学デビューを諦める。『 大人しくしていよう』そんなことを考えていた。ただ、友達に憧れが強かった僕は真ん中くらいの席に座って話しかけられるのを期待した。そしたら、『よろしくね! 』と声をかけてきた女の子がいた。
だが、『よ、よよよよよよよろしく 』とか細い声でしか返せない。もちろん会話が弾む訳もなく別の人の方へ行ってしまった。無理だ。
僕の周りにはもう既にいくつかグループが出来ている。みんな楽しそうに笑っていた。取り残された。大学デビュー失敗だ。
学長の話が始まり、終わり、新入生代表の言葉が始まる。
とても美人な人で、こういう人が友達を沢山作れるんだろうと思った。透き通った声で、まさに完璧。代表ということは頭もいいのだろう。自分の小ささを実感した。
入学式が終わり、学生証の受け取りが始まった。周りはガヤガヤしながら出身地やら、サークルの話で盛り上がっている。賑やかな周りの人とは対照的に、僕の足取りは重たかった。話しかけようにももう既にグループが出来ていて入っていけない。僕は最後尾あたりに並ぶ。誰とも話すことは無いので、スマホをいじりながら並んでいた。その時、『ねぇ、君もひとり?』と声をかけてくれた人がいた。
新入生代表の美人な人だ。どうやら大学の教授との会話があり、最後尾にいたらしい。いやいや、俺なんかに話しかける必要ないだろ。と思った。
『実は私も1人なんだー、ねね、どこ出身なの?』『えっと、東京だよ。』と緊張しながら答える。その後も質問攻めにあった、無視する訳にもいかない上にこんな美人と話せる機会なんてそうそうない。僕は必死に答えた。
僕は答えるだけだったが楽しかった。彼女も笑っていた。
それが彼女『飯田千冬』との出会いだった。
君が記憶になっても @aqly
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。君が記憶になってもの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます