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「小唄くんには選択肢があります」と睡蓮さんは言った。
「このまま私についていくのか、それともこの世界に残るかの選択肢です。それを今から、小唄くんに決めてもらわなくてはなりません」
「僕が、自分で決めていいんですか?」と小唄は言った。「もちろんです。これは小唄くん自身の人生の選択なのですから」と睡蓮さんは言った。
……小唄は悩んだ。『こんなことは生まれてはじめて』だった。小唄が悩んでいる間、睡蓮さんはじっと小唄のことを見ていた。小唄の答えを待っているのだ。小唄は焦った。そしてしばらくして、小唄は怒られることを覚悟して、「すみません。すぐには……、決められません」と正直な気持ちを睡蓮さんに言った。でも、睡蓮さんは怒らなかった。それどころか優しい顔をして微笑んでいた。小唄はそのことにまず驚きを覚えた。どうして睡蓮さんは優柔不断な僕のことを怒らないのだろうと不思議に思った。
「ええ。これは大切な選択ですからね。そうでしょう」と睡蓮さんは言った。
「では、小唄くんが選択を決める手助けになるかどうかはわかりませんが、少しだけ私にお話をさせてください」と睡蓮さんは言った。「お話?」と小唄は言った。「ええ。お話です」と睡蓮さんは言った。「本当はこういうことはあまり良くないことなのですけれど、私は個人的に小唄くんに興味があるのです。だから私の秘密を小唄くんだけに教えてあげます」
「僕にだけ、ですか?」「そうあなただけに、です」と言って睡蓮さんは優しく微笑んだ。
天井の明かりがちかちかと点滅した。
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