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「迷子はどこにでもいけるし、なんにだってなれるわ。自分を拘束するものがなにもないからね。それは自由と表現できる状態でもある。でも特定の目的を持たないせいで、その逆に、どこにもいけないし、なんにもなれないっていう風に表現することもできるわね」と睡蓮さんは言った。小唄は黙って睡蓮さんの話を聞いていた。
「小唄くんの夢はなんですか?」と睡蓮さんは小唄に質問をした。「優しい人になることです」と小唄はすぐに睡蓮さんに答えた。睡蓮さんは瞳を閉じて数秒間、頭の中でなにかを思案してから瞳を開けて、「うん。それは立派な夢ですね」と笑いながら小唄に言った。
がたんごとん、と列車の走る音が聞こえた。
「猫は、好きですか?」と睡蓮さんは小唄に質問を続けた。「嫌いです」と小唄は答えた。すると睡蓮さんはなぜかくすっと笑った。小唄は笑っている睡蓮さんの顔を見ながら、なぜ自分の答えを聞いて睡蓮さんが笑っているのか、その理由を考えてみたのだけど、答えを見つけることはできなかった。
「ごめんなさい」と睡蓮さんは言った。
それから睡蓮さんはこほんとわざとらしい咳払いをして、真剣な表情になって小唄を見た。
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